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飛行機が飛んでいく。

毎日頭上の低いところを飛行機が飛んでいる。
この街の風景である。近くに航空自衛隊の練習基地があるからだ。
輸送機や小型の旅客機、T4戦闘機が定番で、運が良いとブルーインパルスを見ることができる、が滅多にない。
 
地域に住むひとたちは飛行機に慣れっこだから上空を通っても見上げもしない。つい見てしまうぼくなどは新参者といえるだろう。
 
友人に飛行機撮影が趣味のひとがいて、関東からわざわざ伊丹空港まで撮影に出かけていったりする。なぜ羽田や成田でなく大阪の伊丹なのかといえば、頭上ぎりぎりを通過して着陸する写真が撮れるからなのだそう。写真を見せてもらったがなるほど飛行機好きなら心踊るポジションだろう。
 


そんな話を聞いたらぼくも飛行機が撮りたくなった。それで気がついたのだが、練習機は毎日飛んでいるようで飛んでいなかった。それから飛ぶ時間帯もまちまちで、いざ撮るぞと思うと飛んでこないものである。普段はうるさいほど飛んでいるのに、だ。
 


飛行機の到来は音でわかる。まず低い音がする。それから機体が姿を現す。ああ来た来た。今日はカメラを持ってないのになあと恨めしげに見送っていく。困ったものである。
 


虫の写真を撮りに出て、上から音がするので見上げてシャッターを切る。この場所からじゃないんだよなあ。あたりはアキアカネの大群が無数に飛んでいる。これだけ飛び回っていながらぼくは蚊に刺されるんだから、トンボたちは一体どこを見ているのやら。
 
同じ飛行機がぐるっと回って帰って来る。でももうぼくはカメラを向けない。だってぼくの目はトンボに釘付けだから。

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