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最近おもしろかった本4選|詩集・詩集・小説・その他

2024年1月〜3月の四半期に読んだ本で、好きだったものを載せていきます!(を今さら載せます。)
読んですぐ「おもしろ…」となって、ちょっと経ってからも「いや、すごかったな、あれ」となったものを、熱量高めに紹介します。

1)詩集

『太陽帆船』中村森

大好きな中村森さんの、初詩集です…!

Amazonで予約して、ソワソワしながら待っていました。実物を手に取った時の感動といったら。アイドルのCDだとかDVDを予約する人たちはきっとこんな気持ちなんだろうな、と思いました。

収録されている、好きなうたをいくつか書きます。

帆をあげる 会いたい人に 会いに行く
それはほとんど 生きる決意だ

中村森さん

→こちらは、タイトルの『太陽帆船』のもとになったうたです。出会った時は、ちょっと呼吸が止まったよなぁ。声に出して読むと「ふー、生きるか」って気持ちになる、ちょっとだけ体が動くような気がします。

百年後、朝の海辺で待ってます。
この約束を 愛と呼びたい

中村森さん

→ちなみにこれが一番好きなうたです。なんかもう言葉選びが…(失神)。透き通る海と、眩しくてどこか優しい朝日が見えて、爽やかな波の音が聞こえるような気がする。

中村森さんのうたには、というか中村森さんから生み出されるものには、キラキラ感と透明感と、儚さと危うさみたいなのが共存していて、もう本当に、尊い。突然語彙力を失って恐縮です。

「忘れて」と 「覚えていて」の 後悔を
海に置いたら どちらが沈む

中村森さん

これも好きぃ!!
ちなみに、Instagramで中村森さんがメンションした人のストーリーを引用して載せていて「こ、これは、認知のチャンス…!」と、ちょっと古参ぶったストーリーをあげました。(無事載せてもらい、歓喜しました。)

『荻窪メリーゴーランド』木下龍也・鈴木晴香

1頁目を開くと「鈴木晴香」という名前が明朝体で、「木下龍也」という名前がゴシック体で書かれている。本編を見ていくと、明朝体で書かれたうたと、ゴシック体で書かれた恋のうたが、だいたい交互に登場する。なるほど、贈答歌みたいにして進んでいくんだな。

第1章、第2章はキラキラとした、ひたすら素敵なうたが並ぶ。うわぁ、いいなぁと思ったものをいくつか載せます。

「いつか海辺に住みたい」に「ね」を添えて
ふたりの夢をひとつ増やした

木下龍也

会ってすぐ次に会う約束をして
それでも足りないような気がした

鈴木晴香

3章からちょっと雲行きが怪しくなっていく。

「ついたよ」も「どこ?」も未読でたくさんの
恋に埋もれてうつむいている

木下龍也

このへんから、妙に噛み合っていないというか、「ん…?」となるうたが増える。なんか変だな、どういうことだろ、と思いながら読み進めて、7章で「ええーーーっ」って叫びました。ここで、その「ん…?」となったうたを読み返して、ちょっと鳥肌が立った。

これは衝撃だったなぁ…!収録されているうたが素晴らしいのはもちろんのこと、構成に、短歌の可能性を感じました。短歌はじめての人にもオススメ、普通にこれは小説だった。

2)小説

『たけくらべ』樋口一葉(川上未映子訳)

これは衝撃だったー!!!

「樋口一葉」の名前は、当たり前のように知っていたし、「たけくらべ」という作品名も知っていた。なんとなく、遊郭で生まれ育つ子どもたちのお話だってことも知っていた。

図書館でふと手に取って読み始めた。まーーーじで衝撃だった。とにかく瑞々しい。若さゆえのエネルギーとやり切れなさみたいなものが、ありありと描かれている。なんなん、あの、水分量多めな、感情の瑞々しさ。みどりをはじめとする登場人物に、ひたすら好感を持ってしまう。

なんかねぇ、遊郭での生活を描いた話だから、もっと嫌な感じというか、暗い雰囲気なのかなって思ったら、全然そうじゃなくて、「そっか、外野は色々言うだろうけど、中で見るとこんな感じなんだ」って思った。そして、子どもたちが恥ずかしいとか嬉しいとか悲しいとか思う瞬間にひたすら共感して、時代と環境が違くても、同じなんだな〜と思った。

あとは、流れるようなテンポ。一文がすごく長かったりするのだけど、童歌とか手毬唄みたいな感じで不思議と読みやすいです。川上未映子さんの訳が超素敵だってのは多分あるのだろう…!

3)その他

『土民生活流動体 書簡集(一) バックレ可』よしのももこ

大学の後輩が「やばい本に出会っちまった」と紹介してくれたのが、こちらの『土民生活流動体 書簡集(一) バックレ可』。タイトルからは全く内容が想像できませんが、読み始めたら最後。一気に読んでしましました。ほんとに驚いた〜〜〜、こんなに面白い本があるなんて。紹介してくれた後輩は、まぢでセンスがあるんよー。彼が好きな人や面白いと言った本は、全部私にど刺さりする…。

それでは、こちらの本の素晴らしさを「文章(形式)」と「内容(実質)」の2つに分けて語っていきます。

文章(形式)

こういう文章を「感じが良い」っていうんだろうな。1通ごと(=一章ごと)一息で書いているのが伝わってくるというか、勢いがあるというか、文章に動きがあるというか…。ここまで「感じ」を極めた人は知らないかもしれない。リズムに乗っているうちに、スルスルとページがめくれていく。

それで「伝わる」言葉の選び方をする。なんていうのかな、何度も線を引いて、それで最後にピタッと輪郭をとるような言葉のはこびかた。たとえば、

……当時の配偶者の口からこの言葉が漏れ出すのを聞いたとき、硬直しかかっていたわたしの《生きている》が突然動き出した、と書けばいかにもドラマチックだけどその時点では動き出したことになんかぜんぜん気付いていなかったし、過ぎてみれば、終わってみればそう見える、という程度のことではある。それでも今いるここから大きな流れとして見ればだいたいそのへんで大きく道が分岐しているのがわかる。

『土民生活流動体 書簡集(一)』よしのももこ
「6通目 設定が違う」(60頁)より

いやあ、めっちゃ好き。それで「なにそれ?!(大喜び)」というワードチョイスが炸裂します。

内容(実質)

ああすみません、それで、どんな本なのかという説明をしておりませんでした。

「わたし」(=よしのももこさん)と「ケシャチョー」(=配偶者、イマ)と「セガレ」(=息子)+猫2の計5名が、とにかく窮屈な「首都トーキョー」を脱出して、離れ小島で《生きている》を営んでいく、というもの。
「書簡集」という形を取った、えっと、エッセイ集…?自伝的小説…?うーんわかんないので「書簡集」でいいや。

たとえば「第4通 エスカレーター」。ラッシュ時の駅のホームを舞台に、自然とできあがっていく「ルール」の窮屈さをユーモアたっぷりに表現していく。(というか、私たちは「クスッ」と笑いながら「わかる〜」と読める。)
この「エスカレーター」に代表される、首都トーキョーの、そして会社だとか学校だとか、そういう「大勢の人間が同調圧力でおかしな方向に暴走しているのに、なぜかみんな平気な顔している状況」の異常さを書いてくれて、なんというか、めっちゃ救われた。なんなら、ちょっと泣きそうになりました。

そして、ミショーさんや大杉栄の言葉を、自分の人生に構成し直していく。(ミショーさんは、アフリカ系住民差別に立ち向かって本屋さんをやっていた人。)

孫引きで恐縮ですが、とにかく心に残ったミショーさんの言葉をちらっと紹介します。

ねじ曲がった線の上を、まっすぐになんて歩けっこない。そんなことをしたら、脚が折れちまう。ねじ曲がった制度のもとで、どうやってまっすぐ歩けって言うんだ?

『土民生活流動体 書簡集(一)』(55頁)
←『ハーレムの闘う本屋 ルイス・ミショーの生涯』(16頁)

おわりに

電車や人混みですぐ具合悪くなっちゃって、「同調圧力」を感じたら即座に逃げ出しちゃう私は「そうだよね、おかしいよね、そうだよね」と永遠にうなずいていました。救いのような一冊です。

ここまで「なぜ好きなのか」を頑張って書いてみたけど、全然面白さを伝えられなくて悔しい〜〜。もう「なんか面白いんだよ、読んだら分かる!!!」と叫んで終わりにします。(二)も(三)心待ちにしています、なんなら(四)も(五)も読みたいです。

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ほんとはもっと面白かった本があるんですけど、これ以上下書きを熟成させるわけにもいかないので、このへんで載せさせていただきます。。。。。。

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