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バレンタインの思い出/中学3年生のとき

少し前に、こんなうたを書きました。

自由律俳句とかだと思って書いている。

今日は、このうたについて、思い出す景色を書いていこうかと思います。

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2014年2月14日、今からちょうど10年前。
調べてみたら、その日は金曜日だったらしい。

私は当時、中学3年生で、好きだった、というか腐れ縁みたいな男の子がいた。

小学4年生の頃から好きだなんだが始まり、(多分思春期にありがちだと思うのだけど)何十回というレベルで付き合ったり別れたりをして、途中お互いに別の人と付き合ったりもしたけど、結局大学1年生の夏頃までその茶番を繰り返すことになった。

10年も茶番してたのか。書いていて、改めて驚いてる。
彼について、そして、付き合っていた時のことについて、今の私目線でどうこう言うのはかっこ悪いのでやめとくけど、当時の私にとっては特別だったんです。
なんか分かんないけど、好きだったんです。

10年前のバレンタインの日は、付き合っていなかった期間で、たしか「高校生になって離れ離れになっちゃうから」とかいうくだらない理由で、お互いに傷つけ合い、傷つくことを望んで、別れていた。付き合っていなかった。
きっとすごく暇で、傷を付け合って生を実感したかったんだろうな、なんて今なら思ってしまうけど、当時はほんとうに大真面目だった。

たしか、チョコケーキかクッキーか、そのあたりのお菓子を作った。
彼の分は、ちょっと特別なラッピングをして、表面がツルツルした紙袋に入れたりなんかした。

その日のクラスは、やっぱり、バレンタイン特有の空気に包まれていた。欲望や期待や失望が濃いめに渦巻いていて、でも気にしてないふりをしたりで、すごく特殊な空気が流れていた。

昼休みになった。
いつ渡そうとずっとソワソワしていて、なんとなく億劫になっちゃっていた。まさか「要らない」なんて言われないと思うけど、どこか不安もあって、だってなんて言って渡したら良いんだよ?とかとにかく、頭がグルグルしていた。

そしたら、当時仲の良かった友達が、走って私のところに来て、「〇〇ちゃんも、彼にバレンタインをあげるらしい」という話をした。
私はなんだかすごくショックを受けた。それから焦りを感じた。
この時の私の気持ちを正確に描写すると、「さすがに彼は私を選ぶだろうけど、でも〇〇ちゃんが、私が渡すより前に告白をして、彼が勢いでOKしちゃったらどうしよう」である。(完成度がひどい、かなしい。)

それで、えらく焦って、今すぐ渡すしかないと思った。それで、急いで彼のクラスに行ったら、彼はいなかった。彼と仲のいい連中がごっそり全員いない。どこにいるんだろうと、彼がいそうな場所を手当たり次第探した。

この時の心臓の音と、喉のあたりの苦しさと、後ろに流れていく廊下の景色は、なんとなくずっと覚えている。

探し回って、見つけられずにいたら、友達が「理科室にいたよ!」教えてくれた。
それで、友達と一緒に、急いで理科室に向かった。

呼吸を整える。焦って探し回っていたことは、悟られたくない。

理科室を覗くと、そのあたりの連中がたむろしていた。彼もいた。彼らの雰囲気がいつもと違うというか、いつもより楽しくないように見えた。
なんとなく、クールな感じで群れることによって、バレンタイン特有の高揚感を無理やり押さえつけてるのかな、なんて思った。

それで、理科室にちょっと入って、彼の名前を呼んだ。
難しそうな顔をしながら、彼が私のほうに歩いてきた。期待と喜びを噛み締めている表情だということは、すぐに分かった。
いざ対面したら、私は何を言ったらいいか分からなくなっていた。あんなに探していたのに。言いたいことはたくさんあったはずなのに。

「これ」と、ひとことだけ発して、ツルツルした紙袋を、彼の学ランの、胸のあたりに押しつけた。

彼は難しい顔をして「ありがとう」と言った。

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後日談ですが、バレンタインの翌日か翌々日くらいに彼からまた告白されて、私の軽率な承認欲求はしっかり満たされ、たしか再び茶番が始まりました、なんなのでしょうね本当に。

彼と付き合っていた時期の記憶は曖昧になってしまいましたが、「バレンタイン」と聞いてまず思い出すのは、10年前のこの日の出来事なのです。不思議ですが。

今年は誰にもあげる予定がないので、1人でプラネタリウムでも見に行こうかなぁなどと思っているところです。

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