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100%民間で実施する空き家活用事例:山形県小国町 × NIPPON TABERU TIMES

「地域おこしの事例はたくさんあるけど、分かりやすくまとめている場所はないよね......」
そんな声から生まれた、地域リノベーションラボによる事例調査企画。地方創生に興味がある人、地域おこしに取り組みたいけど何から始めたらいいか分からない人のための事例集の作成を目指す。

山形県小国町には空き家をリノベーションして作られた「Tabetai House Omiya」がある。

現在3人が居住、週末は訪問客で賑わうシェアハウス兼ゲストハウスだが、驚くことにこの建物は2年前まで空き家であった。

この記事では、設立や運営を手がけるNIPPON TABERU TIMES(TABETAI/食べタイ)代表や地域住民へのインタビューをもとに、空き家リノベーションの方法や地域おこしへの役割を紹介する。

お話をうかがった人:

田丸さくら(たまる・さくら)さん
合同会社NIPPON TABERU TIMES代表 

高橋泰弘(たかはし・やすひろ)さん
小国町国際交流団体 「青い星と白い森」代表。小国町でメガネ屋を営むが、留学の経験を活かして英語を教えていたり、地域おこしイベントを企画したりする一面も持つ。ゲストハウスでのBBQや観光ガイド講習に参加したことがある。教育にも力を入れていて今年の夏は小国町の自然環境を生かしたサマーキャンプを企画している。

柴田英知(しばた・ひでとも)さん
地域リノベーションラボ 局長。著者と共に小国町を訪問。今回は2回目の訪問であったが、ゲストハウスに初めて宿泊。夜は地元の方とたまたま小国町を訪問していて北海道大学の学生を交えてBBQを楽しむ。今回はシェアハウスを訪れての印象をうかがった。

吉田悠斗(よしだ・ゆうと)さん
Tabetai House Omiya 管理人。小国町で地域おこし協力隊をしていた経験を活かし、ゲストハウスを地元に受け入れられる存在に育てる。おぐにマルチワーク協同組合の代表も務め、小国町への移住者促進事業にも携わる。

目的:なぜシェアハウスを作ったのか?

田丸さん:関係人口から移住者に繋げるための受け皿を作りたかったから。

2018年から小国町のPR活動に携わってきたが、住む場所や働き先がないと「小国町に住みたい」「この農家さんと働きたい」と思えても移住に踏み切ることは難しいと分かった。そこでツアーやイベント開催だけでなく、食べタイとして家や仕事を提供する事業も小国町で始めようと思い始めた。

もう一つの目的としては、私が小国町で活動していく上での拠点にするため。

シェアハウス以前は、小国町に住む知り合いや農家さんの家に泊めてもらったり、旅館を利用したりしたが、毎回お世話になるのは申し訳ないという気持ちがあったり、長期滞在にかかるコストが負担になったりしていた。小国町で事業を進めていく上で、気兼ねなく長期滞在できる家ができたことは大きかった。

手段:どのように空き家を見つけた?

田丸さん:空き家バンクとかではなく、口コミや紹介。地域の不動産屋にも行ったが、状態がいい空き家というのは中々見つからなかった。

そこで、町で人に会うたびに「家探してます!」と言いまくり、畜産農家さんから状態やサイズ感が良い物件を紹介してもらった。

課題:空き家改修にかかるお金は?

田丸さん:どんな空き家でもやはり住めるレベルにするには多少の初期投資が必要。このシェアハウスは、床の張り替えやマットレスなどの処分などで30万円程度かかった。

しかし、その初期投資を負担することで家賃を無料にしてもらった。リノベーションは大変な面も大きいが、言ってみればそれだけやれば長期間住めるということなので、投資の回収はそこまで難しくないと思う。地域おこし協力隊の方や友人に手伝ってもらいリノベーションを進めた。

現在は入居者から月3万円の家賃、ゲストからは一泊3000円もらっていて、固定資産税分ということで月1万円を家主さんに払っている。管理人に報酬を支払っても会社の収入が0やマイナスになることはほとんど無いし、地域との繋がりを深める拠点となり、数週間の滞在が容易になったことを踏まえると成功した事例と言えると思う。
ゲストを受け入れるために、民泊の免許を管理人の吉田が取得しています。今は名前だけ「TABETAI」の屋号を引き継いでいるだけで、吉田の家を活用している扱いになっている。

居住者を集める難しさ

田丸さん:まずSNSやホームページを作ったが、居住希望者はなかなか集まらなかった。

最初はここも口コミや紹介で、小国町で研究を行う予定の大学生が役場職員の方の紹介で住むことになったり、地元企業の社長さんが社員の住むアパートが見つからないということで連れてきてくれたり、食べタイのOGがリモートワークの拠点としていたりした。

地方は空き家が多いとよく言うが、住める状態の空き家は少ない。永住するわけでもないのに30万円の初期投資をすることは大変なので、家を見つけることが大変な現状がある。シェアハウスはそのような地方の課題解決に繋がっている。

ゲストハウスとしての利用者はどのくらい?
田丸さん:ゲストハウスとしては、忙しい時期は平均したら毎日1人いるような感じ。私が人と集まるのが好きだったり、管理人である吉田悠斗さんが小国町で地域おこし協力隊であったこともあって、地元の若者との繋がりが深かったりすることもあり、頻繁にご飯会や飲み会を開催している。

またハウスの裏にはシェア畑もあって、畑やりたいけど自分一人では大変と思う若者が、水やりなどで交互に訪れてくれていた。そのおかげか、地域内外からの若者の交流拠点や地元の人との飲み会の場にもなっていて、いい感じのゲストハウスになっていると思う。

効果:シェアハウスのメリット

居住や宿泊目的で気軽に利用できることはもちろんだが、地域の交流拠点となれるということが一番大きい。

地方には自由に借りられる会議場やフリースペースがないことが多い。シェアハウスの2階部分や駐車場スペースを利用して、地域おこしイベントの研修の場として利用したり、打ち上げ、BBQに使っている。時間に縛られず、騒いでも大丈夫な貸しスペースの存在は大きいのではないか。

地元住民の声

交流拠点としてのゲストハウス
高橋さん:tabetai house omiyaはゲストハウス以上の役割を果たしてくれていると思う。

ゲストハウスがなかった頃は、知り合いの家で2、3人で飲むか、町内のお店で集まっていたが、それではお金がかかるし、交流も広まらない。ゲストハウスは立地もよく、地域おこし協力隊の居場所や、町外からの若者と地元の人の交流の拠点になっていると感じる。

また、食べタイの子たちがシェアハウスでパジャマでリモートワークをしている姿を見ると、外から来てもこういう暮らし方ができるのという気づきや、この場所がこう活きるのかという自信をもらえる。シェアハウスを通じて、新しい価値観、暮らし方を得ているのかもしれない。

訪問客の声

柴田さん:今時の若者が住むようになるためには「ちょっとおしゃれ」であることが大切。

このシェアハウスは、地元の人にとっては少しだけスタイリッシュで自由な空間に、外からの若者にとっては「田舎ライフを満喫しつつ便利な暮らしもできる場所に映っているのではないか。運営者と世代が近いこともあり、利用するハードルが低いことも良い。どこでもできる簡単なことではないと思う。

今後の展開

田丸さん:Tabetai House Omiyaはたくさんの交流を生み出していて、一人暮らしよりも楽しんでもらえる需要があり、とてもいい空間になっていると感じている。

しかし、居住者が男性が多数を占めている一面もあるため、もう一軒小国町内で女性をターゲットにしたシェアハウス兼ゲストハウスを作りたいと思っている。また、このシェアハウスは100%民間でリノベーションされて運営されている空き家活用の成功事例だと思うので、このノウハウを活かして、他の地域にもこのような空間を作っていけたらと考えている。


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地域リノベーションラボとは?
合同会社NIPPON TABERU TIMESの前身である団体が2015年に開設され、2018年より小国町と連携しイベント運営や生産者さんへの取材、地域おこしに取り組んできた。
地域PR事業をメインにスタートしたが、PRの前には町の受け入れ体制が必要! と、現在ではシェアハウス運営や移住者への仕事紹介など、まちづくりにも貢献する。
そのノウハウが全国の地域おこしのプレイヤーたちの役に立てば……。そんな思いから立ち上げられたのが「地域リノベーションラボ」です。