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第11回 ドイツの土壌から見る食文化

2015.06.19
川西あゆみ
地域連携センター 学術研究員

概要
修士課程2年目にドイツに渡り、Hohenheim大学農学部植物栄養学科で博士号を取得。植物に重金属を吸収させて土壌を浄化する研究をはじめ、13年間をドイツで過ごした川西さん。
ドイツの土壌と食に関する講演のほか、ドイツの大学や農業インターンシップ事情を紹介くださいます。

第10回目は
地域連携センター学術研究員の川西あゆみさんです。

現在ドイツでは肥満が社会問題となっており
特に子供・青少年の47%が太りすぎもしくは肥満症のため
将来的な医療制度への負担が懸念されています。

そこでこれまでにはなかった
栄養、食料、調理に関する知識を小学校の授業に取り入れたり
各家庭でも
健康的な食事の1日あたりの種類と量の目安を記したポスターを貼るなど
食育に取り組み始めました

国策として有機農業にも力を入れ
オーガニックショップも増加しています。

また、ベジタリアンも
1983年では人口の0.6%でしたが2010年には8.0%と急増しています。

この時期はホワイトアスパラガスが旬で
解禁期間が毎年2ヶ月と決められており
農家レストランが期間限定でオープンするなど
だれもが愛してやまない食材となっています。

穀物や野菜は一般に肥沃な土壌を必要としますが
ぶどうは大抵の土壌で育つため
古くから、腐植土から成るオーガニック成分の豊かな肥沃な土地は
食物が優先的に栽培され
ワイン用ぶどうは、それ以外の「痩せた」土地で栽培されてきました

痩せた土地とは
オーガニック成分がほとんどなく水分の乏しい土壌のことであり
ぶどうが水分を求めて根を伸ばし、到達した深いところで
上層部とは異なるミネラル分を得ます。

ただし
土壌の組成や成分と出来上がるワインの品質や成分との関連性については
まだ解明されていないことが多くなっています

ドイツには13のワイン生産地域がある。そのうち3つを紹介。

モーゼル(Mosel)
 デボン紀の粘土などの海底堆積物の変成岩。
 石英・雲母・緑泥石といった鉱物から成り、鉄分・カリウム・マグネシウ
 ムを豊富に含む。
 灰分は含有せず、土壌は水はけがよく保水力がない。
 この地方でできるワインは、酸味とミネラル感が強い爽やかなワイン。

ラインガウ
(Rheingau)
 レスと呼ばれる氷河期の砂塵が風などによって運ばれ堆積した土壌。
 粒子が細かく、石灰分を多く含む。
 この地方でできるワインは、滑らかで優雅、方向性もよくマイルドで
 酸味をもつワイン。

フランケン
(Franken)
 約2億5000年前に形成された雑食砂岩。
 風化により小石の多い土壌となる。
 砂岩は水はけがよく水分を蓄積しないため、通気性に優れ、
 熱を蓄えることができる。石灰分やミネラル分は少ない。
 この地方でできるワインは、まろやかで酸味がしっかりし、
 アロマが強く膨らみのあるワイン。


川西さんにご持参いただいたドイツソーセージを食べながら
ドイツのインターンシップについてなど、学生との対話を楽しみました。

ドイツの農業労働者は外国人が多く
インターンシップで農家に入っても
ほとんど言葉が通じないそうです。

食事もソーセージとジャガイモだけといった
ボリュームだけはしっかりあるという場合が多く
前年に実際インターンシップに参加した学生は
1ヶ月で10kg太って帰ってきましたと報告してくれました。

川西さんは
7月よりつくばの国立環境研究所へ移られ
マングローブの研究に取り組まれるそうです。


豊嶋

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