ハッピーバースデー、トゥー、

１が４つ並ぶ今日、世間にとってはポッキーの日かもしれない。あるいはプリッツだったり、人によってはトッポの日だったりする。

高校生の時、１１月１１日の１１時１１分に授業を中断して、みんなでポッキーを１本ずつ食べたことを思い出した。担任が英語の先生で、ちょうどその時間が英語の授業だったからこそできた、幸せな思い出。

今でもポッキーを見ると、ときどきその日のことを思い出しては、随分と遠いところまで来てしまったな、なんて寂しくも思う。

１１月１１日の今日、私の周りには誕生日を迎えた人が３人いる。いや、正確には２人と１匹。

大学時代、部活に所属していたのだけれど、人数が極端に少ないせいもあって、私が部長を努めることになった。誰かの後ろに隠れて楽しんでくらいがちょうどいい私の性格に、部長は少し荷が重く、何度も心が折れた。

おまけに私は「他人に頼る」という甘え方を知らずに育ったせいで、いつも一人で突っ走ってしまう。勝手に暴走して、勝手に自滅していくタイプだ。

そんな私を支えてくれたのが、今日、お誕生日を迎えた友人。

彼女へのメッセージに「初めて出会った日のことを覚えていますか？私は覚えていません」などと書いたけれど、嘘だ。はっきり覚えている。

私と彼女は同じ講義を受けていた。その日、たまたま隣の席に座った。彼女の持ち物に、私が好きなバンドのロゴを見た。

あ、と思うが早いか、気づけば声をかけていて、意気投合した（と思っているのは私だけかもしれないけど）その勢いで部活に引き摺り込み、後に部長となった私をいつも支えてくれた。

はらぺこの私に、まさに食べている最中のカレーパンを分けてくれたり、私によこしまな思いが走れば、やんわりと引き止めてくれた。

涙が出るほど笑い合った日々も多いし、疲れて一言も話せなくても、気まずくならなかった（あれ？私だけ？）

今思えば、とても迷惑をかけてしまったなあと思う。けれど嫌な顔ひとつせず、いつだって助けてくれて、一緒に笑ってくれた。

あとなぜか、服装がよく被った。白いブラウスの上に、シロクマがプリントされたトレーナーを着て、ロングスカートを合わせるなんて、そうそう被るもんじゃない。

ちなみに彼女の好きなところはたくさんあるけれど、いちばん思い出深いのは「おジャ魔女どれみ」の映画を観に行った時、始まる前からハンカチで目頭を押さえていたところ。

お誕生日、おめでとう。

もうひとりは、これまた大学時代の繋がり。だけどどちらかと言うと、大学を出た後の方が、お互いにいい距離感を掴めていると思う（こう感じているのも、やっぱり私だけかもしれないけど）。

根っからの文系である私から見れば、彼は絵に描いたような理系だ。何か不便なことがあれば現代の、もっと言うなら未来の技術を用いて解決してしまう。

思想しか表せない文系の言語に比べて、あらゆる問題を解決する理系の言語は、魔法みたいで面白いなあといつも感心する。

その技術で救われた人、これから救われる人がたくさんいると思うと、これからも彼にはどんどん羽ばたいて行ってほしい。

文学を愛する人間はどちらかと言うと、過去を見つめることで前に進める。頼れるものが過去にしかないと、どこかで思っているのかもしれない。

技術を愛する人間は、未来を見て前に進む。好奇心と知識と、過去から持ってきたもの全てを注ぎ込む姿はとてもかっこいいし、頼りになる。

私たちは向いている時間が違うのに、生きている時代が同じだと思うと、なんだか不思議な気持ち。理系の皆さん、日本の、世界の将来を頼みます。

お誕生日、おめでとう。

そして残る１枠は、我が家の愛猫。

７年前の大寒波の日に、バイト先で保護した。雪が降る中、何日もひとりでじっと座っていたらしい。見かけた店長が「このままでは、寒さで死んでしまうのでは」と案じて保護した。

いろいろ話し合った結果、我が家でお迎えすることになった。

私はときどき、あのまま放っておいたら、どうなっていたんだろうと考える。

もしかしたら、お母さんが迎えに来たかもしれない。あの日、あの場所で待ち合わせの約束があったのかもしれない。

あるいはやっぱりそのまま、凍てつく寒さの中で力尽きてしまったのかもしれない。

考えてもわからないことだけど、たった２ヶ月の子猫から母親を奪ってしまったことを申し訳なく思う。

野良猫の寿命は４年と聞いた。今頃、天命を全うしているだろう。おそらく、お母さん猫も。

私にできることは、なるべく居心地のいい環境で、ストレスなく、穏やかに暮らしてもらうこと。

「７年はあっという間だ」と思いながら、ちょっと高級な缶詰を空けると、目を輝かせて走ってきた。元気な様子を見せてくれると、私も嬉しい。

お誕生日、おめでとう。長生きしてね。

帰りにポッキーを買おうと思ったのに、すっかり忘れていた。１１月だと言うのに、１２月みたいな寒さが通り抜ける。

素敵な１年に、なりますように。

2021.11.11　匙