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【『ゆるゆると生きる』絵本】番外編:『耳をそろえて対価を払え』

1.絵本本編


あるところに
ケチな男がいた。

何かを頼もうとすると、

その男は
決まりきった口調で

必ず
こういうのだ。

『俺に何かを頼むなら、
耳をそろえて対価を払え』、

と。


たとえ
それがたいしたことではない場合でも、

たとえば
落としたペンを取ってほしい、とか

自分の代わりに宅配便を受け取ってほしい、とか、

そういうことでさえも、

男は
かならずこう言うのだ。


『耳をそろえて対価を払え』

と。


確かに
誰かの労力を何の見返りもなく
無尽蔵に使うのは

酷い仕打ちだ、
というのは分からないでもない。


ただ、
ちょっとしたことでも

男は
対価を求めてくる。


そのことに
周囲は疲れ切っていた。


だんだん
誰もその男に近寄らなくなっていき、

男は
ひとりぼっちに
なった。


けれど、

男は喜んだ。


もう
誰にも邪魔されることなく、

自分という人生の時間を
自由に有意義に使うことができるのだから。


そんなある日。


夜、
暗闇の中を男が歩いていると、

後ろで
誰かの視線を感じた。


男:『(まだ、誰が俺に頼みごとをもってきやがったのか)』


男は
ため息をつくと、

振り返りざまに
こう言ったのだ。


『俺に何かを頼みたいなら、
耳をそろえて対価を払え』


あきれ気味に振り返った男を
迎え入れたのは、

暗闇に浮かぶ
無数の目だった。




男:『……ひゃっ、な、何なんだ、お前は!』

男は
腰を抜かして、

その場にへたり込んだ。


しかし、

無数の目たちは
地面でぶるぶる震える男に向かって

こう言い放った。


無数の目たち:『すべてのことに対価が必要だとお前は言った。ならば、お前がわたしたちから奪ってきたことに対して、耳をそろえて対価を払え』

男:『俺はお前たちなんぞ、知らん! それは何の対価のことだ』

男が
脅えながら叫んだ言葉に

無数の目たちは
にやりと笑った。

無数の目たち:『その対価とは、自然の恩恵すべてのことだ』


気がつくと、
月明かりは消え、

男の周りは
無数の目が浮かぶ暗闇ばかり。

無数の目たち:『お前たちは、わたしたちが精魂込めて作り出した空気を無断で奪い、汚している。わたしたちが綺麗にした水を無断で使い、平気で穢す。太陽で地球を暖めてやるのも、月で夜を照らしてやるのも、動植物がお前たちに身体を差し出すことさえも、お前たちは当たり前だと思っている。お前たちは自分たちがこの地球の王様だとのたまい、お前たちのルールをわたしたちに押しつけた。それがどれだけの犠牲を払うことであるのか、お前たちは気づいたことがあっただろうか』

無数の目たち:『けれど、それはわたしたちからの無償の愛だ。見返りなんぞ、求めはしない』

男:『なら、何で俺にだけ、その見返りを求めようとしやがったんだ!』

男が
そう叫んだあと、

無数の目の間から
すぅっと黒い手が伸びてきた。

無数の目たち:『それは、お前が対価を求める男だからだ。お前は周囲の人々にすべての対価を求めていた。そのルールに従うならば、その対価を求める権利とやらは、わたしたちにもあるはずだ』

その黒い手は
目にも留まらぬ速さで
男を掴んだ。

そして、
高々と男を持ち上げたのだ。

無数の目たち:『さあ、お前がいつも言っていることだ』


無数の目たち:『耳をそろえて対価を払え』



その後、
その男を見た者は
誰もいない。

ただ、
男のが消えたその道に

男の形をした影が
何かが燃えた後のように

おぼろげに残っているだけ
だった。


ー☆-

パンさんは
ごくりとつばを飲み込んだ う~たんたちを見て、

自信満々に
こう言い放ちます。

パンさん:『いいか、お前ら。オレはいつもお前らの頼み事を善意で引き受けてやってたんや』

う~たん:『そうだね』

りりぃ:『まぁ、手刀で竹切って、くらいだけど』

ハリィ:『それ以外はずっと寝てるだろう?』

パンさん:『黙れ、黙れ! だが、今日のオレはいつもとはひと味違う。今の話の男のように、オレは労働の対価をお前たちに求めてやるんや!』

パンさんはそういうと、
びしっと指でう~たんたちを
指してきました。

その顔には
決意がにじみ出ています。

おかめさん:『えっと、今の話は”ケチンボへの戒め”でしょう? パンさんが出し惜しむ話ではないんじゃ……?』

パンさん:『おかめさん、それは違うぜ? この話は”ギブアンドテイク”は大切だぜ! というビジネスのお話しなんや』

オカメインコのおかめさんは
そのまま首を傾げてしまいました。

そういうおはなしだった
でしょうか。

物語は
いろいろな人が読みます。

なので、
受け取り方も

読み手や聞き手の自由ですが、

パンさんの解釈は
独特すぎます。


パンさん:『だから、今日という今日は、オレに対価を払わないのなら、竹を切ってという その頼み事を全力で断って決めたんや!!』

りりぃ:『どうせ、眠りたいだけでしょう?』

ハリィ:『いいじゃん、いいじゃん。ちょっとくらい』

シマリスのりりぃとハリネズミのハリィが
ぶーぶーと文句を言ったとき、

最年少の
ヒヨコのピヨのすけが

ぴょこぴょこと
前へと進み出ました。

パンさん:『ん? どうしたんや、ピヨのすけ。いくら愛らしいお前の頼みでも、今日という今日は絶対に……』

ピヨのすけ:『パンさん、すごい!!』

パンさん:『…………へ?』

ピヨのすけの言葉に
パンさんは目を丸くします。

ピヨのすけ:『いつもみんなのお願いを、”ムショーのアイ”で引き受けてる。その大きい愛にピヨのすけは感動したの!』

ピヨのすけは
きらきらした目で

パンさんを
見上げます。

ピヨのすけ:『だから、パンさん、いつもありがとう! ピヨのすけはパンさんの優しさで生きていられるの!! だから、いっぱいいっぱいありがとう! パンさん、大好きなの!

そういうと、
ピヨのすけはパンさんに
抱きつきました。

パンさんは
その状態で固まりました。

しばらく
ピヨのすけの抱擁を
受け入れた後。

ぎぎぎ、
とパンさんは首を動かしはじめ……。

パンさん:『おっしゃー! じゃあ、いっちょ、かわいいピヨのすけのために、ちゃっちゃと竹を切ってやるぜーーーー!! ついてこい、野郎ども!』

ものすごい勢いで、
背後の竹林に入り、

手刀で竹を切り倒していきます。


う~たん:『うわぁ、いつもよりすごい技の数々』

りりぃ:『頼み事を断る話はどこへいったのよ……』

ハリィ:『おぉ! これでたくさん燃やして消し炭がつくれるぞ!』

おかめさん:『つまりは、パンさんの行為を当たり前と思わずに、感謝してほしかったってことよね』


おかめさんが
ため息をつくと、

ピヨのすけが
彼女の元に戻ってきました。


ピヨのすけ:『パンさん、元気になった?』

おかめさん:『そうね。……さすがはピヨのすけ。その純粋さが欲まみれのパンさんを動かしたんでしょうね』

りりぃ:『まぁ、その欲が睡眠欲だけだから、パンさんも無欲な方なんだろうけどね』

う~たん:『でも、パンさんの手刀という秘技? に対しての”ありがとう”は足りてなかったかも』

ハリィ:『そうだな。おいらたちも、もっとパンさんだけじゃなく、お互いに感謝し合うことも大切だな!』

一同:『うん!』


そんなこんなで、

パンさんの華麗な? 手刀裁きによって、
大量の竹が入手できた一同は

周囲への感謝を
改めて再認識したのでした。



おしまい。

2.終わりに


昨日、
唐突に

『対価を払え』

という言葉が
ズドーンと頭に降りてきまして。


『なんじゃ、そりゃ』
と思ったものの、

わたしの直感から来る言葉は
いつものように説明がないので、

自分で
その謎を解いた結果の
このおはなし
です。


わたしたちの日常は

誰かや何かの『無償の愛』の連続なんだ、

とわたしは思います。


そこに

当たり前に存在する人も、
当たり前に存在するモノも、

ただの一つもなく、

それらは

奇跡の連続で
自分の側にあり続けているだけ。


普段、

『自分はついてないなぁ』
とか
『どうして自分だけ』

不満、不安、恐れ、怒りなどの感情に支配
されていると、


日常が
どれだけ恵まれれているのか
忘れてしまいます。


周囲の人から、
周囲のものから

どれだけ
『愛』をもらっているのか。

『愛』というと
ちょっと小っ恥ずかしいかもしれませんが、

自分が誰かや何かに『愛』を与えているように
誰かや何かが自分に『愛』を与えてくれています。


そのことを
思い出してね!

という意味での、

『対価を払え』

だったと

わたしは解釈した次第です 笑。
(ちゃうわ! という方は
ご自身の中での答えを大切にしてください^ ^)


ちょっと
ホラーのような出だしだったのですが。

まぁ、
普段事前は何も言いませんからね。


いいえ、

わたしたちが
メッセージを受け取れていないだけで、

自然はいろんなことを
教えてくれているのだと思います。

けれど、

その恩恵に甘えきって、
彼らを傷つけていることも
あるんだろな、

と思います。


勿論、
相互作用で、

わたしたちが
自然にプラスに働いていることもあります
よね。


森林は
手入れしていないと

生態系が固まって
勝ち残った植物以外生えなくなります。


知識が追いつかなくて
ちょっとそれ以外思いつきませんが 笑、

お互いの補助のうちに
自然と共存していっている部分も多くあるでしょう。


だからこそ、
再認識として

自然に感謝できたらなぁ

というのと、

自然以外の
身近な人への感謝も

今一度
思い出せたらいいな、

と思った次第です。


なが~い文章を
お読みくださり、

ありがとうございます。


今、
こうして

読んでくださっている方がいることへの
感謝を込めて……。

いつもありがとうございます^ ^

ではでは、
またお会いしましょう♬





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