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演劇:アイスキュロス作《アガメムノン》、6月12日、ミュンヘン、レジデンツテアター

6月12日、ミュンヘンのレジデンツテアターでアイスキュロス作《アガメムノン》を観ました。プレミエは昨年12月8日。『やっと』観ることができました。
これは、アテネ・エピダウルス・フェスティヴァルとの共同制作で、エピダウルス・アンティーク・テアターでのプレミエは2022年7月22日でした。

レジデンツテアターは州立オペラとレジデンツに挟まれた、上記写真では赤いネオンが見える部分です。

入口
フォワイエ
壁の写真。クリュテムネストラ役ピア・ヘントラー


プログラム。

ステージには周り舞台が設られ、その直径に長方形のステージがあります。
そこで4人の打楽器奏者(2マリンバと2コンボ)が演奏します。
登場人物は、約2時間、常に歩いています。これはラッシェの演出ではいつものことです。
静止する瞬間はありません。このテンポが音楽と共にとても難しい。思い出しながらやってみましたが、1分間歩くのだって難しい(笑)のに、約2時間続きます。

トレイラーを見つけました。

題名は《アガメムノン》ですが、主役はアガメムノンの妻クリュテムネストラ。
ここで簡単に復習しますと・・・

クリュテムネストラの夫アガメムノンはトロイ戦争の英雄。
アガメムノンは戦争へ出発する際、天候が悪かったため、2人の娘イフィゲーニエを生贄として差し出します。
この時からアガメムノンが帰還する10年間、クリュテムネストラは復讐にとり憑かれていることが、明らかです。

そもそもアガメムノンはクリュテムネストラの夫タンタロスを殺し、彼女を自分の妻としました。

そしてアガメムノンの不在中の、彼女の情夫エギストはタンタロスの弟。
これも、アガメムノンへの復讐のひとつではないでしょうか。

帰還したアガメムノンはトロイの王女カサンドラ(予知能力がある)を情婦として連れ帰ります。

家族が家族を惨殺するこの「アガメムノン家」、元凶はトロイ戦争の英雄アガメムノン。
そしてトロイ戦争の原因はパリスによるヘレネーの強奪です。

いずれの女性も男性の犠牲となる(言ってみればエレクトラもそうです)。

ヘントラーの演じるクリュテムネストラは、可憐な中に意志の強さがあり、素晴らしいものでした。

また、アガメムノンとカサンドラ(アガメムノンと一緒に斧で殺される自分の将来も予見していたはずです)を殺したクリュテムネストラは、2人の死体を載せた布(王妃の長いマントのようにも見えます)を引っ張り、全裸で現れます。
エギストも全裸で登場します。
この2人、まさしくイヴとアダムを思わせるという『オチ』がついています。

また、クリュテムネストラ以外は全員、コロスのグループから登場することにも触れておきます。

素晴らしい公演でした。

FOTO:(c)Kishi

以下はプログラムに挟まれていた絵葉書です。

(c)Birgit Hupfeld


アガメムノンとカサンドラの死体を引っ張って登場するクリュテムネストラ。
スモークは戦争で破壊された街に立ち上る硝煙を思わせました。

(c)Patronos Skafidas

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