WEB記事をわざわざ本にしたのはなぜか
2022年6月にZINE「佐世保の自由研究」を制作しました。翌年12月には続刊も出しました。vol.1は各書店さんでの委託販売協力をはじめ、新聞やテレビといったメディア発信のおかげもあり、約400部と多くの方々の手に取っていただけたようです。本当にありがとうございました。
よーし次!といきたいところですが、今年に入ってから執筆が停滞気味なのと、あとは本としての課題(装丁や価格など)を見直さねばと思いまして。
ちょっと色々と周りから意見を聞いたり自分で考えてみたりしようということで、初心に返ってみたり気持ちの変化を記録しておこうと思った次第です。
ずっしり実体あるものとして愛でたかった
念のため断っておきますが、WEB記事と電子書籍、紙の本の優劣が云々…といった話ではありません。それについては言及しませんし、わたしは全部好きです。
「なんでWEBで無料で読める記事をわざわざ本にして売ってるの?」と言われることがあります。
うっ。たしかにそうだし、出版社を通してないし家計に無理ない予算でつくったので装丁もチープ、なのに妙に高い。
それでもなぜ本にしたかったのかというと、やっぱり、色んな方々の協力で形にさせてもらった記事を、物体として両手に持ってさわって、重みを感じたかったからです。超自己満足的な理由です。
そんな単純さで作っていいのかとはじめは不安でしたが、本を出して2年が経った今ではほんとうに良かったと思っています。
取材相手の方に手渡して喜ばれたとき。また、残念ながら亡くなってしまった方のご遺族の方に本をお渡しできたとき。表情や気持ちを感じられるやりとりができたことが何よりうれしかった。
また、他県の方が手に取って佐世保を訪れてくれたとき。自衛隊さんが、佐世保のことを知らない隊員さんへの情報ツールとして活用してくれたり(さすがに恐れ多い)。誰かの好奇心や興味のアンテナに届いてくれたことも、小脇でガッツポーズしてしまうほどうれしかったんです。やってよかったなぁ。
いちばんハードルの低い郷土資料でいたい
ある図書館の司書さんから「郷土資料ですね!」とコメントをいただきました。「世代を越えて読まれることはとても価値があることなんですよ」とお酒の席で言われて、あわてておしぼりで目から出た汗を拭きました。
街のことを知る貴重な資料とまで言われると肩がすくみますが、ページを開くと「もはや日記では?」と思われても仕方がないユルさです(そもそもがデイリーポータルZで書いた記事なので、ライター視点の、いわゆる役に立つのか立たないのか分からないものなのです。けど、それがあると人生は豊かだよねと強く思っています)。
「自由研究」というネーミングも、郷土史の専門家の方からツッコまれた際に「あくまで自分なりの調べ&解釈ですよ。ほら、through my glassesって書いてあるし・・・てへ♡」とニッコリ微笑むことができるよう余白を作ったつもりでした。
なので、委託販売をお願いしている書店さんから「小中学校や高校にも売れてますよ」と言われたときは血の気がサーッと引きました。
オイオイ大丈夫か? 健全な教育に支障をきたしてはいないか!? と図書担当の職員さんの身を案じましたが、あくまで、生徒さんたちの小さな興味のきっかけになれたら何よりだなと感じました。
一番ハードルは低いけど、充実はしてるから。良い【KYOUDOSIRYOU】になれれば幸いです。・・・攻めたキャッチコピーっぽくローマ字表記にしてみたけど編集会議で即却下になるやつだなこれは。
これも何かの縁なので話を聞いてください
あと顔出しも多いですよね。取材中も書くのもとても楽しいです。
「ライターは自己主張をなくすべき」といった意見もあるかもしれませんが、取材相手の方のご意向や、媒体の色に合わせれば良いんじゃないかなと思います。
が、とりあえずわたしの話を聞いてほしいのです。
わがままですが、自分がおもしろくて興味があることをお伝えしたい。喫茶店か居酒屋でたまたま隣になったなぁぐらいのテンションで聞いてほしいのです。
きっとどこにでもある営み
日本列島の西の端っこで、気になった身近なことをあれこれ聞いたり体験したりして執筆した記事。
ご当地記事ですが、これを熱い地元愛でもって全国に送り出したいわけではありません。声高に「佐世保って最高!」と叫びたいわけでもありません。
どちらかというと、苦手だった地元に不器用ながらも歩み寄っている日常の記録です。
いままでツンツンして悪かったばってん、ちょっと仲良くしてくれんですか? って感じで。
もちろん取材対象者の方々の魅力を伝えさせていただくというスタンスは変わらないのですが、わたしにとっては、出会った方々とのやりとりや、気持ちの移り変わりの記録も大事な要素です。ほらやっぱり半分日記じゃないか!
なので、「佐世保の自由研究」はどこにでもある営みの1つとして読んでほしい。
特別なんだけど、誰しもの身近にあるものです。「自分の身近にも色んな魅力があるから探してみよう」と、読む人にそう思っていただければうれしいなぁ。
ぜひ手に取ってみてください! きっと、日常が少し楽しくなると思います。
販売店舗
「佐世保の自由研究」は以下の書店さんや店舗さんにて販売中です。(順不同、敬称略)
・シカク
・BOOKSライデン
・本屋ウニとスカッシュ
・TSUTAYAさせぼ五番街店
・金明堂 大野モール店
・金明堂 日野店(9月中旬まで)
・福岡金文堂 イオン大塔店
・博文堂 花水木
・Coffee & Diner KÜCHE
・佐世保観光情報センター(佐世保駅構内)
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