見出し画像

「また、どこかで。」



「お隣は空いていますか?」

白髪のご老人にお声をかけると、にっこり微笑んでこうおっしゃいました。

「どうぞ」

===

♪人は何故 戯れに
叶わぬ恋に身悶えて
せつなさと虚しさに
心を乱すのでしょう?

逢いたくて 恋しくて
あなたと共に添い遂げて
もし夢が叶うなら
生まれ変われますように

引用元:ほととぎす[杜鵑草]
作詞作曲:桑田佳祐

===

午前中の仕事を終えた私は、急いでお洋服を着替え、思いついたかのようにお店を出ました。足早に向かったのは神宮球場。到着した頃には、すでに開始30分経過していました。

人気の早慶戦であり、今季の六大学野球の決勝戦。チケットが内野席だったこともあり、席は8割型埋まっていました。

キョロキョロあたりを見渡しながら空席を探すと、一ついい場所が。

そう、その空席のお隣にいらっしゃったのが、白髪のご老人です。

===

♪川は流れ 水面(みなも) 煌(きら)めいて
木立そよぐ 緑麗しい
夏の日が蘇る
星の瞬きより儚い人生(いのち)と
君と出会って覚えた
砂の粒より小さな運命(さだめ)忍んで
見つめ合った日は帰らず

引用元:ほととぎす[杜鵑草]
作詞作曲:桑田佳祐

===

六大学野球の歴史は遡ること明治36年(1903)11月5日、早稲田大学野球部から慶應義塾野球部に挑戦状が届いたことがキッカケだそうです。

ここからはHP:から引用します。

===

「幣部依然として不振、従ふて選手皆幼稚を免れず候に就いては近日の中、御教示にあづかり以って大に学ぶ所あらば素志此上も無く候」との早稲田からの挑戦に応じ、11月21日に初めて早稲田大学との野球戦が三田綱町グラウンドにて行われたのが、あらゆる競技における「早慶戦」の最初です(結果は11対9で慶應の勝利)。

===

”挑戦状”だなんて、なんだかとても素敵ですよね。

そうやって早大対慶大の対抗戦、よく聞く”早慶戦”が始まったそうです。 その後、大正3年に明治大学、大正6年に法政大学、大正10年に立教大学、そして14年(1925年)に東京大学が加わって、現在のような六大学によるリーグ戦に。その歴史は、今年で98年目を迎えるのだとか。

98年目。

実は私、ルールや詳細もいまいち分かっておりません。

でも、スポーツという勝負事はもちろん、なんだかこうやって”歴史”の香りを感じながら観ることのできる六大学野球が、とても好きです。

とか言っていますが、私も知ったのは去年(だったかな?)

名前くらいは聞いてことがありましたけどね。
でもほら私、どこでやっているのかも、どうやったら見れるのかも分からないから。

それでも、誘っていただいたり、連れてってもらったり、なんならチケットとか分からないし、教えていただいて、

今の私があります。感謝ですね…

いや冗談抜きでこれってありがたいと思っていて、
だって、自分の見たことのない世界っていっぱいあって、

そんな新しい世界を見れるって、世界観も広がるし、感性も高まるし、何より楽しい。

やっぱり、感謝ですね…

===

♪時は過ぎ 人は去(ゆ)き
すべてが思い出に変わり
幸せの意味さえも
サヨナラのあとで知る

長い旅の途中の車窓には
冬の風に吹かれてなびく
面影が揺れている

引用元:ほととぎす[杜鵑草]
作詞作曲:桑田佳祐

===

不思議ですよね。

98年前の方々も、きっと同じ景色を見て、同じ想いに耽ったのだと思います。

そう、100年近い年月が過ぎているのに、表層は変われど、バット1本とボール一つを追いかけ、どちらかが勝ち、どちらかが負けるというシンプルな戦いであるこの競技は何も変わっていないんです。

何より、”その闘う姿”は、観ている人をも感化し、勇気づけ、背中を押してくれるエネルギーを持っている。

歴史を刻み、多くの人たちを介して受け継がれてきたものの大きさを感じますし、

私自身、自分がその歴史の一部であることを感じたいのもあって、そこへ向かわせているような気すらなります。

試合観戦中、お隣の白髪のご老人が何度か話しかけてくださいました。

「早慶戦ってね、ここ5年は慶應が勝っていてね。だから今回は早稲田もいけるかなって思って観ていたんですけどね。慶應は強いですね。」

「あの審判ね、彼が主審をするときは、いつも試合が長引くんですよ。何か癖でもあるんですかね。」

「広瀬くん、この前のホームランは、大会800本目のホームランだったから、ボールにサインしたそうですよ。」

私の知らないことをたくさん教えてくださいました。

正直、事実確認はしていません。あの場での雑談であり、盛り上がりの中で出てきた言葉。別に思い違いや間違いなんてあったのなら、それはそれでいい、くらいに思って読んでください。

===

♪寂しがり屋の誰かを励ますように
こぼさぬように 涙を
あなたがいつも笑顔でありますように
たった一言の「お元気で」

星の瞬きより儚い人生(いのち)と
君と出会って覚えた
砂の粒より小さな運命(さだめ)忍んで
繋ぎ合った手を離して
振り向かないで 未来へ
見つめ合った日は帰らず

引用元:ほととぎす[杜鵑草]
作詞作曲:桑田佳祐

===

「歴史の香りを感じる。昔の人も、同じ景色を見ていると思うと素敵ですね。」

先日、星を見てそんなことをおっしゃっていた方がいます。

新しいものも、それはそれでの素敵さはあります。

それでも、

六大学(スポーツ)や星や月やホトトギスや…

昔の人も見ていただろうそれらの景色を通して、歴史に触れる感性を、私も磨いていきたいなって思います。

慶應大学の皆様の優勝をお祝いするとともに、関わる皆様の素晴らしい勇姿に、心から敬意と感謝を申し上げます。

8回の表の慶應の攻撃が終わると、おもむろに立ち上がった白髪のご老人は私の方をそっと見て、にっこり微笑んだかと思うと、こうおっしゃいました。

『また、どこかで。』

そして、ゆっくりと去って行かれました。

もしかしたら、あの白髪の老人は、幻だったのかも知れません。

本日は、「とりあえず織田信長の時代からホトトギスはいたわけですよね?あれ?違う?音楽も、もしかしたら歴史を越えるのかもしれません。ちなみに、秋になるとこの曲は聴きたくなります。素敵ですよね。好き。」ってお話でした。

学び:(ただし、ホトトギスは夏の鳥)

おしまいー

chihiro

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?