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光をばらす (三瓶玲奈「色を編む」他)

 2020年6月27日〜7月12日、東京の西武渋谷8階で開催されていたグループ展「燦三と照りつける太陽で、あつさ加わり体調を崩しがちな季節ですが、規則正しく健やか奈日々をお過ごしください。展」を観てきた。以下その感想を記す。(写真は自分の記録用だったのでやや傾いていますが何卒ご容赦を)

1 展示名

 この長い展示名は、「各作家の名前を一文字ずつ取って」名付けられたとのこと。参加の各作家とは、小林正人、三瓶玲奈、やましたあつこ、鬼頭健吾、岡田佑里奈、新宅加奈子である。

 誤字から叙情を引き出せないかと、短歌や詩で個人的に試行錯誤していたところなのでこの展示名には、やられた、と思った。

2 展示作品

 全て取り上げたいところではあるが、まだ美術を批評する言葉を十分に持たないこともあり、見た順に、一部の方の作品だけをとりあげる。

(1)「色を編む」(三瓶玲奈)

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 例えば桜が目の前に咲いていたら、「桜色だ」と思う。しかし、実際には光の加減で、花びらそれぞれに明るい白色や濃い朱鷺色があり、そしてその一枚一枚にも細かな陰影があって、脳がそれらを総合して「桜色」と認識している。

 目に見える現実世界の色は無数の点の集まりかもしれない、という認識は、仏の点描画だったり、ビザンツのモザイク画だったりを見て、それなりに持っていた。

 しかし、この三瓶の「色を編む」は、色が光の糸の束かもしれないという認識を与えてくれた。色が無数の点へ解体されている絵は、概ね中立的・機械的・職人的に認識へ色を運んで来てくれる。一方で、「色を編む」では、色が一度解体されて、濡れた光の糸のようになっており、詩的な情感を混ぜ込みながら認識へ色を運んでくる。

(2)cartwheel galaxy(鬼頭健吾)

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 この絵には少なくとも3つの回転が存在する。

 1つめは、モチーフとしての車輪の回転。黄色、緑色、桃色など混沌の奥に、紫色の大きな車輪のようなものの回転の軌跡が見える。

 2つめは、絵の表面の物理的な凹凸で作られる回転の軌跡。写真だとわかりにくいが、絵の具の表面に枯山水の砂のような、方向の揃った凹凸がつけられている。

 3つめはこれらの回転感が生み出す、この絵を観る者の意識の回転である。

(3)pray(やましたあつこ)

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 絵の中の2人の人物はお互いへ手を伸ばしあっている。心を交わしたいという祈りが読み取れる。しかし、空虚な祈りかもしれない、とも感じさせる。2人は目を合わせず、表情も暗く、口も閉じている。最前面の白い花・葉・茎には何の絵の具も載せられていない。空虚なだけでなく、切迫した、悲しい祈りかもしれない。


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