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【二次創作】進撃のデリカテッセン:0125

 にじさんじギャングスター二次創作、かつジョー・力一さんお誕生日にちなんで書きました。頭を空っぽにしてお楽しみください。

(4000字/読了時間5分)


 お総菜コーナー。スーパーマーケットの中でひときわ香ばしい香りが立ち込め、誰もが足を止める場所。
 黄金色のコロッケ、大人の拳大ほどもあるからあげ、宝石のように照り輝くミートボール。
 しかし、今はその場所に立ち止まる客はいなかった。
 チュイン、チュイン!
 品物棚の隙間から時折弾丸が放たれ、床を穿つ。

「ふぃ〜。やっぱりおいしい話は、そううまくはいかないねぇ…おっ、うまい」
 ジョー・力一は、バリケード代わりの棚の裏でウズラの玉子串をつまんでいた。
「力ちゃんさぁ、呑気に食ってる場合かよ」
 この状況見てみ?と舞元啓介が銃口を振って指し示した先、庶民の憩いのスーパーマーケットは銃弾飛び交う戦場と化している。


「『派手に暴れたい人募集』なんてメール来て、なんだと思って足運んだら、スーパーマーケットでドンパチやってるのなんざお前くらいだよ」
「いや、今日はおれの誕生日じゃないですか。店長にデリカテッセンの貸し切り頼んだら、交換条件として特売の日に営業妨害してくるチンピラ共を捕まえてくれ…って言われてさ」


 力一は顎をポリポリかきながら言う。庶民の為のお得で美味しい商品を売るマーケット。ただし、ここはスラム街のど真ん中に居を構えている悪党御用達のスーパーマーケットだ。まともな客なんぞ来るわけがない。
 力一は何度も通ううちに店長と仲良くなり、自分の誕生日に、彼が夢見ていたデリカテッセンの貸し切りを頼んだ。どこの店でも出禁になりかねない、お総菜コーナーの貸し切りなんてものを快く引き受けてくれたことに力一はすっかり舞い上がってしまった。ろくに話も聞かずに当日来てみたらこれである。

  店長からポイッと拳銃を渡されたかと思った瞬間、店の入り口からチンピラどもが雪崩れ込話できた。
 力一はこの界隈で有名なギャングスター。チンピラ相手ならば鼻歌混じりに拳銃をぶっ放していたものの、どんどん湧き出る集団に追いつかず、デリカテッセンに籠城して仲間を呼んだ次第であった。


「チンピラ4、5人捕まえるくらいかなって思ってたら、住民総出で来るとは流石に思いませんでしたよ」
「営業妨害どころか、店ごと潰す勢いだよな」
「いいじゃない。あたし、こういうパーティだ~い好き、ご飯もチンピラ共も好き放題つまんじゃっていいんでしょ?」
 会話の間に入ってきた花畑チャイカは、ローストビーフのパックを開けると一枚つまんで口に放り込んだ。

 メールで収集をかけたら来てくれた2人目だ。後の二人は合理主義者にチームの重鎮だ。流石に来ないだろう。


「さっきさ。入口にいたチンピラとやりあってたら聞いたんだけど、これ毎月住民と店でドンパチやってるみたいよ。店を制圧したら、品物全部奪っていいってルールなんだって」
「なんだそりゃ、大食いチャレンジならぬ強盗チャレンジじゃねえか。力ちゃん、これ騙されてたんだよ」
「くそー!ただ働きなんてしてやんねーぞ!店長、揚げ物追加で!」
「食うのかよ!!」
 力一が店の裏手に声をかけると、全身黒ずくめに『うきうきマート』というロゴのついたエプロンを来た店員が音もなく揚げ物のコーナーに店員が走り寄り、揚げたてのコロッケと海老フライ、ウズラの玉子串を並べていった。


「なに言ってんの舞元さん。この店の名物“ウズラのゴールデン玉子串”を知らずに帰しませんよ!
ウズラの卵から改良して全部の卵が黄身二つ!ボリュームもさることながら衣と卵の揚げ加減も絶妙!ほら、食べてたべて!」
「お、それなら一口…」
 力一がヒョイと串を投げる。舞元が受け取ろうと手を伸ばした瞬間、玉子が弾丸に射抜かれ四散した。
 ウズラの玉子の残骸を頬に付けた舞元は、こめかみに怒りの皺を刻みつける。


「おいテメェらぁ!!何食い物に弾丸当ててんだよ馬鹿野郎!米一粒に神様が宿ってるっての、親に習わなかったのかオイ?!スピアータックル!」
 舞元が怒鳴りながら立ち上がる。格好の的になるところだが、怒りに満ちた男は一瞬でチンピラが壁にしていた洗濯洗剤の棚に突っ込んだ。
 倒れる棚。舞い上がる粉洗剤。チンピラの悲鳴、舞元の怒声をバックに、店内が束の間やさしい香りに包まれる。


「あ〜〜、いい。相変わらずあいつ、いい度胸してる。今日オフだし…後ろから狙ってもいいかしら?」
「なるべく同士討ちはなぁ…。あ、チャイちゃん。あれなんてどう?」
 力一が指差した通路の奥から、巨大な影がこちらに歩み寄っていた。
 青い髪に金縁の眼鏡をかけたたくましい青年。童顔だが、片手には象の肉でも叩くのか、と思うほど巨大な肉叩きが握られている。
「あら、見たことあるような…いや、会ったことないんだけどよく知ってるような…妙に親近感抱くヤツね。あいつとしっぽりヤリあってからにするわ」
「楽しんでね〜」
 立ち去るチャイカの背中に手を振り、力一は舞元に目を戻した。

「あれ?意外に手こずってるねぇ」
 洗剤の煙幕はすでに晴れ、ところどころ白い粉と赤い返り血でまだらになった舞元がチンピラを追い詰める…が、あと一歩のところで棚の横から別のチンピラに商品を投げられ、あるいは棚を倒され間合いが空く。舞元に加勢しようと、力一も通路に駆け込んだ。
「くっそあいつら、チマチマ動きやがって!やりにくいな!」
「そうだね。チンピラにしては統率が取れてるし…おっと」
 しかし力一が加勢することを見越していたのか、通路に入った瞬間両端をバリケードで塞がれる。
 上からお手玉のように降ってきたのは、黒光りしたパイナップル、レモン、アップル…ならぬ手榴弾。
「そこまでやるかよ!」
「強盗慣れにもほどがあるって!」
 棚に足をかけ梯子のように登り、隣の通路に降りようと目を向ける。
「!!!」
「やっべ…」
 通路には既にチンピラが5人、銃を構えて見上げていた。二人は目を見開く。


 バリン!
 銃声…ではなく、天井の明かり窓が割られる音が響いた。 
 一機のドローンが急降下して店に侵入、舞元力一とチンピラの間に割り込んだ。
 搭載されているのはカメラでも宅配用荷物でもなく…マシンガン。
 ダダダダダダダダ、ダダダダダダダダ!!
 瞬く間に、チンピラ5人は倒れ伏した。
『全く…。なにこの程度の罠にひっかかってるんですか?チンピラだと甘く見てると、痛い目見ますよ』
 ドローンから冷ややかな声が聞こえてくる。ノイズがかかっているが、聞き知った声に二人は目を丸くした。


「え、社さん?」
「お前ってこんなところ来るやつだっけ?」
 戦闘用ドローンfeat.社築が参戦した。
『もちろん、そんなくだらないことにわざわざ時間を割きませんよ。…普通ならね』
「おれの誕生日をお祝いしに来てくれたの?」
『んなわけあるか。部下がミスって7連勤、先月だけで残業100時間超えてるんですよ。あぁイライラする…。
息抜きですよ、息抜き。発注した戦闘用ドローンがどれくらい使えるか、こんな時じゃないと試せないじゃないですか…』
 ククク…と、ドローンからどす黒いオーラが見えてきそうなほど煮詰まった男の声に、歴戦のギャングスター二人も背筋が震えた。
『それでは…目につく人間は片っ端から撃ちまくりますんで。射線に入ったら容赦しませんよ?』
「お、おう!上は任せたぜ!」
「焼き鳥の詰め合わせとビール包んでおくから!帰りに持って行ってね!」
 スゥーーッと上がっていくドローンに二人は手を振った。
 
 社の参戦により、謎の連携を見せるチンピラ共は倒れ、軍勢は入口まで押し戻されていた。
 とはいえ、中々に手ごわい。いったいなぜこんなにしぶといのか。
「チャイカ、無事か?」
 舞元がどこへともなく呼びかけると同時に、通路奥からチャイカが吹っ飛ばされてきた。
「全く…生肉が好き、とか滅茶苦茶な設定つけたもんだから、とんでもなく強くなっちゃって…そそられるじゃない?」
 チャイカの頬にはギザギザの傷跡が付き、血がにじみ出ていた。滴る血をぺろりと舐めて、再び通路に戻っていく。
 ユードリ…いや、謎の青年といまだ交戦中。あのチャイカに傷をつけるほどの猛者だ。チャイカに任せていた方がいいだろう。

 閉店まであと3時間。その時だった。
「野郎ども!息災そうで何よりだな!」
 店の入り口に、黒い影が現れた。
「ベル?!」
「ベルさん!!」
「ギャングスターそろい踏みじゃない」
『やれやれ。これなら私が来る必要なかったですね。ゲームセットだ』
 四人が驚きと安堵の目を向ける。彼らのリーダー、ベルモンド・バンデラスが動いたとなっては、チンピラなど恐るるに足りない、はずだった。
「いや、もう夕方だ。お前たちも粘っているが、そろそろタイムセールの時間だろう?」
『タイムセール?』
「ここからが本番ってことだ!」
『…っ?!』
 ベルモンドの銃口がドローンに向けられる。
 咄嗟に身を翻したものの、容赦ない弾丸が撃たれ、ドローンの羽が一枚砕けた。
「悪いなぁ。このスラムの元締めとは昔からの知り合いでね。俺は今回こっち側だ」
 ベルモンドが不敵に笑う。その後ろには、無数の小悪党。武器も人員もまだまだ尽きそうにない。
「オブザーバーのつもりだったが、お前らが相手なら別だ。こうなった以上は、本気でぶつかろうぜ。ハッピーバースデー!」
 ベルモンドの声が轟き、チンピラが店になだれ込む。
 最高のリーダーが、今回ばかりは最悪の敵となって立ちはだかった。

 胆力が並みの人間なら、絶望し膝から崩れ落ちるところだろう。そう、並みの人間なら。
「それはこっちのセリフだ!一度全力でやり合いたいと思ってたんだよなぁ!ベル!!!」
「あなたが敵に回るなんて、最っ高じゃない!」
『…そうか、そうですか。クク、私の息抜きを邪魔するなら、誰であろうと許さねぇ!!』
 彼らはにじさんじギャングスター。
 逆境を楽しみ、矜持に命を懸ける。それがこの4人の在り方だった。
「アハハハ!こういう派手な誕生日も悪くないねぇ!ハッピーバースデー!」
 力一が哄笑と共に引き金を引く。


 かくてデリカテッセンを舞台に、ベルモンドが指揮するスラム街500人とギャングスター4人との戦いの火蓋が切って落とされたのだった。
 夢は思い通りには叶わない。しかし、仲間と派手に暴れられるなら、思いもしなかった夢でも悪くない。


おわり


【本家の格好いいギャングスターはこちらから】



【デリカテッセンを熱く語っている切り抜き動画(1:09くらいからお話ししています)】

 

「こんなんにはならねーぞ」と思うような小説になっちゃったので、あとはご自分でどうにかして夢をかなえてください。ハッピーバースデー!
 


 


自由研究をしないと死んでしまう性分なので、不思議だな・面白いな、と思ったことに使わせていただきます。よろしくお願いします。