歌を口ずさむように書きたい:0088
この前、友達と紅葉狩りに行った時のことだ。
「…これ、何の音楽だっけ?」
帰り際に、どこからか柔らかい音色が聞こえた。
街頭スピーカーからの音楽かと思ったが、その割には音が近い。
並木道を歩いている老人が、おもむろにハーモニカを吹き始めていた。
石畳を歩きながら紅葉を眺めて吹いている。
ライブイベントでなく、ただ吹いているようだ。
1分ほど立ち止まって音楽を聴く。曲はおそらく童謡だろう。小学校の音楽に聞いたっきり、題名は結局思い出せない。
それでも不思議と心が満たされていった。おそらくかなり吹き慣れているのだろう、歩きながらなのに、一音一音の丁寧さが伝わってきた。
…noteでことばを伝える力を伸ばしたい。
だから毎日日記を書き始めたのだけど、書き続けるだけじゃない、なにか目標がほしいと考えていた。
推し活について体験したこと。納豆の研究。本を食べ物に例えた紹介…。興味の赴くまま雑多に書いているから、フォローしてくれた方は読みにくいだろう。
題材を絞ったほうがいいかな、なんて思っていたのだけれど、この老人との出会いで気持ちがあらたまった。
「歌を口ずさむように書きたい」
舞台に立って人にパフォーマンスする表現がある。
そちらの方が分かりやすいし、多くの人に見られる。
でも、僕はおそらく一生ことばを書き続ける。だから、自分の心に寄り添って感情を整える言葉が必要だ。
口から何気なくこぼれる言葉を丁寧にくみ取っていく。そんな表現を文章に込めたい。
そんな風に考えながらこの記事を綴っていると、ずいぶん前に、僕の文章を『レストランで隣に座った人がふいに「美味しい!」と言ったような楽しい気持ちになる』と友人が言ってくれたのを思い出した。
自分が何をやりたいかは、心の外からやって来てくれる人たちに教わるのだろう。
自由研究をしないと死んでしまう性分なので、不思議だな・面白いな、と思ったことに使わせていただきます。よろしくお願いします。