平野威馬雄『レミは生きている』(6/9読了)

幾度も胸を突き刺され、じっくり噛みしめんとしてしまう作品だった。
まだ明治の1900年、アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれた著者の自伝小説。
“あいのこ”と呼ばれ、数々の差別や偏見を受けた彼の苦悩、葛藤が詰まっている。

日本で生まれ育ったのに、日本人とは扱われない。「異人の子」「毛唐」等の言葉に色濃くにじむ意識が、刺々しくて。必死に努力した語学も「外国人の子だから当然だ」と言われ、こんな理不尽は一度や二度ではない。

悪戯っ子としてのエピソードには、差別に対する反抗が現れた側面もあったりする。
混血児であることには劣等意識を抱き、特徴的な鼻を隠すくせが。父には複雑な感情を抱きもした。

そして、ふたつの国をルーツに持つがゆえの苦悩。「日本帝国バンザイ!」の中で湧いた疑問や、父の国と日本とが戦争を始めてしまったときの気持ち……。
心臓をぎゅっと握り締められる心地がした。

“日本の少年少女に、ほんとうのことをわかってもらいたいと思って、この本をかきました。”とのまえがきから始まる本書。
ひらがなの、まるく、やわらかな印象が特徴的な文章なのに、ぶすり、ぶすりと突き刺さって抜けないものが、沢山あるんです。
大人であっても、おすすめしたい一冊。


書籍情報

この記事が参加している募集