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映画『ミッシング』(5/18鑑賞)

あまりに心を抉られる。
6歳の少女が失踪した。捜し続ける両親へは誹謗中傷や悪戯が相次ぎ、叔父は疑いの目や嘲笑に晒され、取材を続ける記者はテレビ局の方針や報道のあり方に苦悩を滲ませる。映し出される彼らの感触、凄まじさが胸を刺す。

まず、石原さとみさんが凄いんですよ。母親役の。
娘の所在が分からぬ不安や喪失感はもちろん大きい。加えて、娘を預け出掛けた己や最後に一緒にいた自分の弟を責め、平静に見える夫を詰り、苛立つのに誹謗中傷を無視できない。手を尽くさねばと焦り、僅かな希望に縋っては振り回されることもある。

激しく揺らぎ強く放たれる感情が、痛いほど突き刺してくるんです。

取材を続ける記者は彼女たちに寄り添いたいと考えている。でも少女の無事より犯人のスクープを、視聴率を求める局には抵抗が。“どんな画や結果を撮りたいか”なんて話を同僚がすることも。でも記者自身、両親の想いが伝わる画を撮ろうと提案することもあった。

寄り添いすぎるほど当事者に配慮を見せる彼は、面白がらず事実を伝えようとしている。でも「その事実が面白いんだ」と指摘される場面があって、忘れがたいものだった。

娘の失踪を機に崩壊してしまった日常と心。
それでも時間は経ち、立ち止まらせてはくれない。 深い傷を抱えたまま重ねてゆく日々、続いていく人生。各々がその傷と付き合いながら生きていく中で、訪れる変化が、踏み出す一歩が、結ばれる繋がりがある。
あの日以前には戻れなくとも、これからをほんの少し照らしてくれるかもしれない。

これは今年推したい映画の一本です。観て良かった。

映画『ミッシング』本予告


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