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映画『高野豆腐店の春』(8/19鑑賞)

とても味わい深く染み入る、素敵な物語でした。
尾道で豆腐店を営む父と娘。陽も昇らぬうちから丁寧に豆腐を仕込む二人は師匠と弟子でもある。
心臓の具合が悪くない父は、今は独り身の娘を気に掛け奔走。一方で、自身にも出会いがあり……。

父娘も、二人を取り巻く面々も、なんだかいいなあ、愛おしいなあと思ったんです。彼等といると、ふっと笑顔が湧いてくる。気持ちが明るくなる。
人々が重ねてきた時間や、築いてきた関係や、培ってきた絆を感じずにはいられない。

父がぽつぽつ昔話を語る場面があります。そこで知れるのは、彼がキノコ雲を目撃した世代であり、人々と手を取り合って生き抜いてきたこと。娘との関係についてや、あの爆弾が娘の人生にさえ影響を及ぼしたこと。
そうした出来事を背負いながらも、しあわせを見出しながら生きてきて。
豆腐をつくる真摯な姿や掌が思い起こされて、彼の豆腐を味わいたくなった。

作中では父と娘それぞれに出会いがあり、親子も新たな局面を迎えます。どきりとする展開も、ほろりとする場面もあった。そして続いていく二人の豆腐づくり。でも、冒頭と終盤とでは少し違いもあって……変わらぬ風景の中に訪れた変化に、二人のこれからを思った。
濃密で満たされる作品だったな。


映画『高野豆腐店の春』本予告(60秒)


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