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映画『カムイのうた』(1/28鑑賞)

心臓に爪を立てられる思いがした。
およそ100年前、アイヌ民族が口承で継いできた叙事詩「ユーカラ」を文字に起こし、日本語へ翻訳した知里幸惠さんをモデルにした物語です。
(映画では幸惠→テル、金田一京助→兼田という役名になっている)

どんなに学びたいと願っても、どれほど優秀であろうと、アイヌというだけで差別される。迫害によりテルには、アイヌである己を恥じる感覚すら生じてしまう。
けれども、兼田教授は言う。誇りに思ってほしいと。宝なのだと。

テルが一心にユーカラをローマ字でしたため、読む人に伝わるようにと言葉をくりかえし選び、日本語へ翻訳してゆく姿に惹きつけられたし、執筆に臨むその心を思わずにはいられなかった。

それに、兼田教授が別の学者に食ってかかる場面が印象的だった。「人類の起源を探る学術研究」に「滅びゆくアイヌ」が重要と言う学者は、墓を暴かせ骨や埋葬品を得ていたんです。
自らテルの伯母を訪ね、ユーカラを熱心に聞き、失わせまいとテルに記録を勧めた兼田教授とは対照的で。

差別された、奪われたとアイヌの人々が話すたび、わたしには「差別した」「奪った」と響き、息が吸えなくなった。
過酷な境遇にあって偉大な功績を残したと、テルを讃えて終わりにはできない。
そもそも彼女をそんな境遇に追い込んだものがある。日本語に翻訳できたのも、幼い頃から文字通り叩き込まれたから。
それらから目を背け、ただテルを称賛するわけには。

テルの伯母を演じた島田歌穂さんの歌声がまた聞き惚れる素晴らしさでした。
第1弾予告のこの部分から聴けます↓


「カムイのうた」本予告映像

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