如月新一『あくまでも探偵は もう助手はいない』(4/16読了)

シリーズ第二弾。こうも心を搔き乱されるとは。
秘密裡に事件を調査・解決する平と森巣。ネット経由で依頼が舞い込む一方、たびたび事件を通報する二人を不審がる刑事も。やがて森巣が疑われる事態が発生し……。

森巣の隣にいることを強く意識する、平の姿が印象的でした。自分は探偵の器でないと自覚し、だからこそ高い能力を持つ森巣が活躍できるよう、助手であろうとする。そこに潜む強い願望は、平を動かす力にも、視野を狭める一因にもなって。
二人を呑みこむ展開に、やるせなさと苦しさが募った。

でも。自らの未熟さを痛感し、後悔に苛まれ、自己嫌悪や憐憫に浸かりながらも。それでも人を信じることしかできないと、優しい人間になりたいと願う平に、惹きつけられたんです。変わろうとする人間を見守る彼自身が、変わろうとする人間で。

はじめて一人で事件を調査し、森巣の、探偵の立場を追うことで体感し、知ったこと。その先に平が見出した本当の立ち位置。込み上げるものがあった。
高校の卒業を控え、未来を思い描く。高校を卒業し、過去を思い返す。大人へ移ろう時期に彼が経験したことが、いかに大きな意味を持つのか……思わずにはいられない巻でした。


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