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映画『エゴイスト』(2/18鑑賞)

葛藤に激しく揺さぶられ、それでも優しく満ち足りた境地に導かれた作品でした。
ファッション誌の編集者・浩輔は、恋人のパーソナルトレーナー・龍太に、龍太の母に惜しみなく愛情を注いでいく。でもそれは身勝手な行為かもと自問してもいて。

龍太に母への手土産を持たせ、母を支える龍太を“応援”し、龍太を励まし労わり慈しむ。浩輔が何かと与える様も、戸惑いつつ龍太が受ける姿も、とても幸福に満ちている。観ていて自然と微笑んでしまっていたほどだったんです。でも、過剰に捧げすぎではないか、尽くすことに意義を見出してないか、と感じることもあって。

とうに母を亡くした浩輔にとって、母を支える龍太を、龍太の母その人を助けることで満たされている一面があるのやも、と。
深く愛することの喜びや幸せと、そこに潜む身勝手な一面とが絶妙に織り交ざって問いかけてくる作品だったんです。

繰り返される「ごめん」も印象的。
そこには単なる謝罪でない、複雑な心情やニュアンスが含まれているように感じた。
龍太の母が浩輔に与えてくれた言葉の数々が、本当に救いに思えたんです。あるいは赦し。それがどれだけ、心を解してくれただろう。
浩輔が龍太の母と至った関係は、あたたかく満ちていて。
ああ、観て良かったなあ。

映画『エゴイスト』はドキュメンタリーを見ているような、人物たちを間近から捉えるカメラワークも印象的だったんですよね。細やかな表情の変化も、わずかな息遣いの違いも、体温や空気さえも逃さず映すような……。
だからこそ、葛藤も幸福も心情そのものを、まるで体験するようだったのかもしれない。


映画『エゴイスト』本予告


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