澤村御影『准教授・高槻彰良の推察9』(3/23読了)

尚哉もとうとう三年生。ゼミでは他学生との関わりが必要になり、進路を考えることも増えて、卒業後がいっそう意識されるようになったなと。あの耳を慣らす訓練をする一方、普通でないと突きつけられた時の崩れ落ちる感覚はひどく苦しかった。
だから難波くんの存在に、ほんとうに救われた。尚哉からすれば〝普通の〟世界を生きる彼が、尚哉に向ける眼差しに。

高槻にも衝撃的な出来事が起こりましたね……追いやられる彼に、認めてもらえない彼に、胸がつぶれる思いがした。
その時に、一人にしない方がいいと尚哉が行動して、二人でごはんを用意する場面がお気に入りなんです。
誰かと囲む食卓のために料理を覚え、一人だとあまり作らない高槻。
この先もう誰かと暮らすことはないと、一人で生きるために料理を覚えた尚哉。
そんな彼らが、互いのために作り、食事を共にする。もう一人を待つところも好き。

高槻と食事のエピソードは他にも描かれていて、ごはんの向こうにいる人たちのあたたかな想い、今なお続く関係に、じんわり満たされるようで。

尚哉と高槻に降りかかる事態は重大さを増していくし、気懸かりも多いけれど、彼らを守る人々との繋がりも強く感じられるんですよね。次巻も楽しみ!


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