読書:張國立『炒飯狙撃手』(4/25読了)

これは面白かった!
イタリアで台湾の高官を射殺したスナイパー・小艾と、台湾で複数の殺人事件を追う定年間近の刑事・老伍。各々の視点で綴られる物語はやがて絡まり、巨大な陰謀を描き出すんです。

https://www.harpercollins.co.jp/hc/books/detail/15416

まず暗殺が実行されるまでの描写に、とても引き込まれた。
そして襲われ、追われる身となった小艾がヨーロッパを脱出する様にも。
一方で、老伍は退職まで12日の身。それなのに厄介な案件を抱え、減っていく残り日数に焦らされる思いがする。

事件の裏や黒幕が何なのか、もちろん知りたい。でも等しく関心を引くのが、彼らそのもの。

小艾は一流スナイパーであると同時に、炒飯の名手でもある。彼の炒飯には食欲をそそられるし、襲撃した家で炒飯とスープを作り残してゆく場面もあって。最初は冷徹に任務をこなす印象を抱いたけれど、次第に表れる人となりが、嚙むほど深い味わいのようだった。

そして老伍は、家では父として、夫として、息子として、板挟みの厄介な立場にあるんです。事件と家庭とで慌ただしく立ち回り、様々な人物の相手をする彼に湧いてくるのは強い親しみで。

小艾と老伍、二人が交わった先にあったものに、どうしようもなく惹かれたんです。
続編があるそうで、ぜひ日本でも刊行されてほしいですね。

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