歌峰由子『陰陽師と天狗眼ー潮騒の呼び声ー』(6/6読了)

シリーズ第三弾。
怜路が過去と対面する中で、その悲哀以上に、彼を守り繋ぎ止めてきた者たちと、彼自身が積み重ねてきた諸々の先にある今を強く実感したエピソードでした。

背を越して。年齢も越して。それだけの月日を越えて。
失われたものは戻らないけれど、今ならばできることもある。様々なものが変わった状況で、一歩を踏み出し、新たに築いていく感覚がありました。
怜路が、同じく弟の立場である人物を、その兄を、思い浮かべ自らに問う場面が忘れられない。
美郷のことを紹介する場面は胸が詰まる思いだった。

その美郷が、失いたくないものを守るために、躊躇を見せない姿も好きなんです。他人の身勝手による理不尽を、身を持って体験したからこその姿勢。
その鋭さに、情けない顔も見せる普段との差に、痺れる心地……。

大切な存在を守り、一緒にいようとして、対照的な道を選ぶ女性たちも印象的だった。
呪術者としての才を持ちながら、普通の人たちの隣に居ることを望んだ者。 呪術者としての力は小さくとも、人外のモノと共にあることを望んでいる者。
迷い、悩みながらも、行動していく彼女たちにとても惹かれた。

白太さんの活躍っぷりと可愛らしさもたまらなかったな。読み応えある一冊でした。


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