映画『ワース 命の値段』(2/24鑑賞)
難題が放つ数々の問いに、考えを巡らさずにはいられなかった。
9.11テロ被害者たちに、補償金を分配する――その任を負う弁護士が用意したのは、収入や扶養家族から算出する計算式。反発も多く申請が増えぬ中、当事者とどう向き合うのか。
訴訟による航空会社の破綻ならびに経済への影響を避け、被害者や遺族への救済を急ぐ面もあるこのプロジェクト。でも何が“公平さ”なのか、どう“命の値段”を算出するのか……本当にむずかしい。
何より、遺族にとって喪った命は、値段のつけようもない大切なものなんです。
彼らの苦悩や悲しみに触れ、一律に計算式で捌くことへの疑問が、弁護士たちに湧いてくる。そして徹底的に被害者たちと面談し、向き合い、できる限りのことをしていく。
それでも、どこかで線引きはされてしまう。州法の違いが、似た案件の結果を分けてしまうことも。夫に他の遺族が……つまり隠し子が発覚したケースもあった。
たびたび登場するのが、“前に進む”という言葉。算出されるのは喪われた人生の価値ではなく、遺された/生き残った人々が歩んでいくための資金なのだろう。弁護士との面談を通じ、深く傷を負った胸の内をさらけ出すこともまた、進むために大切だったのではないか。
様々な想いが胸に渦巻く作品。
『ワース 命の値段』本予告