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笑い過ぎて頬が痛い

「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 好色一代男/訳:島田雅彦」

お聖さん「古今盛衰抄」吉田修一先生「横道世之介」を経て読むに至る。

8歳世之介の従姉妹宛の恋文を手習の坊さんがしたためその坊さんに妙な噂が立ち迷惑被ったこと、10歳で男を口説き(しかも鴨長明を引き合いにしている)14歳の時小法師を使った機転の効いたやりとりにませすぎていて吹き出した。この時点で笑っているのだからこの先どうなるのやらとわくわくした。

するととある人妻を寝取ろうとしたら返り討ちにされていた。痛快でその人妻に「天晴れ!」と声をかけた。人妻を寝取ろうとしたのが16歳で「それ16歳がやることじゃない」と思う寸前で「そもそも好色一代男だった」と思い直してまた笑う。
最低極まりない色魔だけでなく人情ある面も垣間見れたことがなんとも憎めない。そう感じるのは浮世草子であり「なんだこのバカ男」と楽しめているからであろう。
よくいえば「キャパが広い」控えめに言って「節操がない」悪く言えば「クズ」衆合地獄逝きであろうか。世之介の人心掌握の術は天性なのか生まれ育った環境なのか。男女を狂わす世之介もだが世之介に狂う男女も男女な気がする。双方は寂しいだけなのかいわゆる巣の「パリピ」なのか。

「好きなように遣え」と渡された500億の遺産を湯水の如く遊郭に注ぐ世之介に唖然とする反面呆れ返って笑うしかない。
解説にて「もっと大切に遣えよ」と仰る島田雅彦先生に同感だった。井原西鶴の帳簿の付けぶり、世之介の晩年の孤独についての解説は感慨深い。

「横道世之介の目録はオマージュなのかな」と考えたりお聖さんの「古今盛衰抄」を回想しながらも楽しめ、解説の「我らがアンチヒーロー」という一文に元祖日本のアンチヒーローが世之介なのだろうかと考えた。

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