ため息から怪獣でてきた

怪獣はなりたいものを山ほど掲げた。ぜーんぶりおちゃんの、と私の怪獣はすくすく育ってきたみたい。3才のときからの口癖。妹のミルクもおとうとのミルクも両手に持って飲んでいたのはちゃっかりわたし。大変ふくよかな怪獣ですね。幸せメーターの針は空まわりを始めてた。

山の足もとにはたくさんのミルクが提供されている。ミルクは次第に、金銀宝石へかわっていく様ではないですか。ダンジョンですから、敵のミニブタなんかを倒しながら進んでいく。山を上へ上へ登っていく。寒々とした寛大な景色が広がり、足もとは竦む。震える足はわくわくの未知を表現していた。しかしながら、頂上は私一人分の踏み場しかなかったようです。そこでふうっと無のなかに宙に足を滑らせました。私が山から離れると、山は消え去りました。がつがつと登ってきた山はすと金銀宝石とともに消え去りました。勿体無いですね。

無の空間のなかには、まるで手ブラーシカのような動物がぶらぶら〜っと浮かんでいる。手ぶらだから手ブラーシカ。山を離れると手ブラーシカたちの幸せ王国が無音の空間のなかにゆったりと拓けていた。スローに動く動物たち。といっても彼ら、非常に矛盾を抱えた幸せ者たちであり、非常に解明を要する生物であった。わたしは手ブラーシカの集団に染まり、のんびりと食って寝た。美しい静寂の王国であった。

体の中に山が存在することに気がついた頃には、
少し手遅れだった。環境に馴染みたい体に、
がつがつ山はきしきしと胸を刺した。
山を売る時がきたのだ。

わたしはこれまで共に育ってきた怪獣を見た。
彼は欲だった。

ため息とともにふっと怪獣は揺らぎながら姿を消した。

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