じゅしふぉん

書いて作って撮って歌って踊ります

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記事一覧

ひとつ

「ひとつ、ちょうだい」 あなたはいつも気軽に言う。 その"ひとつ"は、私の血で、肉で、心。 少しずつ、少しずつ、私から奪ってゆく。 「ひとつ、ちょうだい」 わたしも、…

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書く習慣 Day1

『今抱いている目標や夢』について 《目標》 今週末の舞台で踊る2曲を楽しく踊ること。練習とお稽古を重ねても理想には程遠い。明日の昼のお稽古は遠慮せずにがっつり練…

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La Vie en Rose

私は庭に出て、お気に入りの椅子に腰掛けた。 「今年も綺麗に咲いたよ」 目の前には手入れの行き届いた白いバラが咲いている。 「一緒に手入れをしていた時よりも、綺麗だ…

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jour de muguet(ジュール ドゥ ミュゲ)

私は一軒の屋台でスズランのミニブーケを購入した。爽やかな香りのする、小さなベルの様な形をした花がかわいらしい。 ✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••…

時の栖

1時間の砂時計 一見すると、そこはバーの様だった。奥行きの余り無い店で、最奥に4メートル程あるだろうか、無彩色の杉の一枚板のカウンターが印象的だ。照明は程よく暗…

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満月の夜

それはばあちゃんの口癖だった。夕方になると、ばあちゃんは必ず三面鏡を閉じる。いたずら心から鏡を開けようとすると、いつもすごい勢いで怒られた。 「なんで?」と聞い…

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ひとつ

「ひとつ、ちょうだい」 あなたはいつも気軽に言う。 その"ひとつ"は、私の血で、肉で、心。 少しずつ、少しずつ、私から奪ってゆく。 「ひとつ、ちょうだい」 わたしも、あなたから奪ってゆく。 いつか、あなたとわたしの血が、肉が、心が、混じり合ってひとつになるかな。

書く習慣 Day1

『今抱いている目標や夢』について 《目標》 今週末の舞台で踊る2曲を楽しく踊ること。練習とお稽古を重ねても理想には程遠い。明日の昼のお稽古は遠慮せずにがっつり練習しよう。 約2ヶ月後の周年行事を成功させること。準備・雑用も練習もお稽古も楽しみたい。 2つを無事に終わらせて、仕事に関する資格を年内に取ること。苦手なレクリエーションを楽しく担当出来るように勉強したい。 《夢》 BookHotelに泊まって読書三昧。 #書く習慣

La Vie en Rose

私は庭に出て、お気に入りの椅子に腰掛けた。 「今年も綺麗に咲いたよ」 目の前には手入れの行き届いた白いバラが咲いている。 「一緒に手入れをしていた時よりも、綺麗だろう?」 私は空を見上げて微笑む。 優しい眼差し──その瞳は誰を見つめる? 美しい微笑み──その唇は誰のもの? 伸ばされた腕──その腕は誰を包む?  その愛は、本物だった? ✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼ 広いホールには楽士が奏でる静かな音楽と、着飾った男女の談笑が流れている。私は

jour de muguet(ジュール ドゥ ミュゲ)

私は一軒の屋台でスズランのミニブーケを購入した。爽やかな香りのする、小さなベルの様な形をした花がかわいらしい。 ✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼ 「かわいいお花でしょ。5月の誕生花のスズランには素敵なエピソードがあるのよ」 小さなガラスの花瓶にスズランを生けながら君は言った。窓から差し込む光を浴びて、花と花瓶が輝いて見える。 「スズランは16世紀のフランス国王だったシャルル9世に、国の発展と王の幸せを願って贈られたお花なの。王はとっても喜んで、次

時の栖

1時間の砂時計 一見すると、そこはバーの様だった。奥行きの余り無い店で、最奥に4メートル程あるだろうか、無彩色の杉の一枚板のカウンターが印象的だ。照明は程よく暗いが、足元に埋め込まれた案内灯があるので歩くのには困らない。 カウンター前にはスツールが1つだけ。カウンターの中には若年とも老齢ともとれる不思議な雰囲気を纏ったマスターが立っていた。私はスツールにゆっくり腰をあずける。 「今日も1時間を」 マスターは表情を動かさずに頷くと、コースターと水の入ったゴブレットを私の前に置

満月の夜

それはばあちゃんの口癖だった。夕方になると、ばあちゃんは必ず三面鏡を閉じる。いたずら心から鏡を開けようとすると、いつもすごい勢いで怒られた。 「なんで?」と聞いても、幼い僕にはわからないと思ったのか「ダメなものはダメだ」と言うだけだった。いつもニコニコして穏やかなばあちゃんの、ただひとつ知っている恐い顔だった。 「じゃあ、行ってくるね」 濃い目の化粧を終えたかあちゃんが慌ただしく仕事に行き、家に静寂が満ちる。ばあちゃんと二人で留守番だけど、ばあちゃんは一年前に大腿部を骨折し