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「若い世代へ日本茶の魅力を伝えたい」老舗が挑んだ新商品企画

日本茶文化を後世に伝えたい――。そんな相談をくださったのは、京都で宇治茶の加工・卸をされている都茶寮様。茶葉の需要減少に危機感を抱き、若年層向けの新商品を開発されていました。

茶葉の需要減少の理由は、選択肢の多様化とライフスタイルの変化。コーヒー・紅茶が定番化し、ティーバッグ商品も充実。急須でお茶を淹れる習慣が消えようとしています。

都茶寮様が大切にされていたのは、茶葉から淹れた日本茶の美味しさを伝えること。農園を運営する専門商社ならではのこだわりです。「本物」の美味しさを伝えて、若い世代の日本茶離れを食い止めたい。

そんな思いを実現するべく、企画の柱をお茶を淹れる機会づくりに設定。時代に合ったオリジナル商品の開発をプロデュースしました。

アイデアは、顧客を起点に考える

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アイデア出しの結果、ターゲットは30代女性に。オフィスで飲むコーヒー・紅茶の代替品として、「オフィスで手軽に淹れる、本格ボトルティー」というコンセプトが完成しました。

コンセプトが決まれば、次は商品開発です。「オフィスで淹れる」利用シーンに合わせて、1パックで一日中淹れたての味が楽しめるティーバックが開発されました。1パックで3~4煎淹れられて、風味は8時間持続。何度もテストをして作り込まれた商品です。

水やお湯を注ぎ足すだけで美味しいお茶でリフレッシュできる、オフィスシーンに取り入れやすい商品に仕上げました。顧客視点の企画で、生活のなかに「茶葉から日本茶を淹れる」機会が復活しました。

コンセプトをブランドデザインで体現

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どんなに作り込んだ商品も、消費者の目に止まらなければ、手に取ってもらえません。新商品を素早く市場に定着させる手法として、ブランディングを採用。ブランディングとは、世界観を表現して「選ばれる仕組み」をつくること。特長や商品の裏側に流れるストーリーをブランドデザイン(ロゴ・ネーミング含む)として表現し、独自の世界観を創りあげます。

新商品のネーミングは、「thé to thé KYOTO(テトテ京都)」を提案。「The」はフランス語で「お茶」。都茶寮様のルーツである「茶農園から直接お客様へ、新たな日本茶の楽しみ方を提案する。」そんな意味を込めて名付けました。パッケージは、茶葉をモチーフにしたロゴが際立つ、シンプルなデザインに。フレーバー別の華やかなアクセントカラーが目を惹き、「オフィスでこだわりのアイテムを使いたい」ターゲット女性の心を掴む仕上がりです。

商品コンセプト・販売戦略と一致したデザインが、商品の「らしさ」を醸成。市場での差別化を促し、独自の価値として市場に浸透していくのです。

ストーリー性で市場浸透を後押し

商品開発の集大成として、クラウドファンディングに挑戦。目的は、作り込んだ商品やブランドの市場性を探る仮説検証です。「thé to thé KYOTO(テトテ京都)」のターゲットはトレンドに敏感な30代女性。クラウドファンディングに集まるユーザーと特徴が重なります。

プロジェクトページでは、商品コンセプトやこだわり、企画に込めた思いをブランドストーリーとして発信。結果は、目標に対して115倍の支援が集まり、大きな手応えが得られました。

最後に販路開拓です。初めてつくった自社商品。販路開拓もゼロからのスタートです。いちから小売店を開拓をするよりも、オンライン販売に特化して販売実績をつくろう。限られたリソースで事業化を目指すプロジェクトだからこそ、選択と集中が必要です。

発売前にはプレスリリースを発表。クラウドファンディングの成功実績を掲載し、話題性を意識した発信で拡散を狙いました。

オンラインショップは、卸先やメディアの受け皿として機能するよう設計。コンセプトや利用シーン、茶農家としての都茶寮様の思いを紹介。商品のストーリーを伝えるブランドサイトの役割も兼ねています。バイヤーに向けてブランド紹介ができ、販路開拓にも貢献する仕掛けです。

まとめ

2019年に発売された「thé to thé KYOTO(テトテ京都)」。発売直後から多数のメディアに取り上げられ順調なスタートを切りました。

話題づくりとブランドサイトを掛け合わせた動線設計が効果を発揮。記事をきっかけに百貨店バイヤーから「是非、取り扱いたい」と声が掛かるように。採用の決め手を伺うと「商品コンセプトとブランドが作り込まれているから」とのこと。顧客視点の商品企画・ブランディング・話題性。3要素の掛け合わせが成功の秘訣です。

商品開発から3年が経ち、オンラインショップと小売店での売上はほぼ同等に。卸先を開拓して事業を大きくしたいーー。販路開拓の営業をすることなく、スタート当初に描いた構想を実現されています。

受け継がれてきた伝統の「本質的な価値」は変えず、時代に合わせて変化させる。そして、顧客視点で価値を伝えて、新たな需要を創出。革新的なビジネス展開で、市場を牽引する存在へと躍進されています。