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ものづくりの知見を活かして請負仕事から脱却 製品力で顧客から選ばれるメーカーへ

メーカーが直接製品を販売するD2Cに注目が集まり、オンラインショップの運営が加速しています。販売チャネルの拡大や利益率改善に留まらず、お客様との繋がりに焦点をあて「メーカーブランド」を確立させた企業があります。

良質なモノが溢れ、機能・性能だけで選ばれるのが難しい時代。代々受け継いだ技術を、お客様にどう届けるのか。「ものづくり」に回帰し、製品力で選ばれるメーカへ。老舗メーカーの変革ストーリーをご紹介します。

メーカーブランドの確立に向けて

京都で寝具の製造販売業を営む大東寝具工業株式会社様。まもなく創業100年を迎える老舗メーカーです。生活様式の変化や安価な競合製品の台頭によってマーケットは年々縮小。自社製品の価値を伝え、ものづくりの技術を次世代に継承するため、脱請負・販路開拓に挑戦。事業領域を小売まで拡大、寝具以外にもインテリア商品を展開されています。

業態変更を進める過程で、事業・商品の幅を広げるだけでは不十分。製品を通して何を提供するのか。顧客への提供価値を変えなければならないと、提供価値をモノ(製品)からコト(睡眠)に再定義。「快適な眠りを提供する企業」と新たな指針を定めて、全社員が睡眠に関する専門知識を習得。寝具づくり+技術と眠りの専門知識で「睡眠の悩みを解決するメーカー」としてブランド確立を目指しておられました。

プロジェクトのきっかけは、Webサイトを作り直したいというご相談から。表面的なリニューアルではなく、業態変更の集大成となる大仕事です。大東寝具ブランドを確立するためには、Webサイトで表現する企業情報や製品が「快適な眠りを提供する企業」を体現していなくてはなりません。そこで、これまでの業態変更の変遷や今後の展望を丁寧にヒアリング。ブランドの顔となる直販事業を中心に、事業戦略に沿った商品の見せ方・顧客との関わり方を再設計しました。


コーポレートサイトとオンラインショップの二刀流

リニューアルにあたって、制作するWebサイトは2つ。コーポレートとオンラインショップです。コーポレートサイトは、大東寝具ブランドを発信する役割を担い、潜在顧客の書くときやファン育成を目的に運用します。オンラインショップは、製品を売ることに特化。商品購入に繋がるプランを提案しました。

・コーポレートサイト
コーポレートサイトで注力したのは、サービス認知をつくること。寝具製造の技術と眠りの専門知識を活かした記事ページを作成。睡眠に悩みを抱え、検索する潜在顧客と接点をつくります。
さらにサイト内に「眠りの相談窓口」というコンテンツを設置。「こんなサービスもあるんだ」と発見してもらうことで眠りの専門家という印象を残す狙いです。専門性の高いコンテンツと独自のサービスで、ブランドを深く理解したファンを育てます。

・オンラインショップ
販売に特化したオンラインショップで注力したのは、買いやすさと運用のしやすさです。買いやすさとは、目当ての商品を見つけやすくする工夫と顧客のニーズを満たす情報の掲載。海外向けの販売に積極的な大東寝具様は、動画を活用した商品紹介にも力を入れました。
運用のしやすさとは、最新情報を手軽に公開できる仕組みの導入。店舗スタッフだからわかる顧客ニーズをタイムリーに反映。人気商品や季節のおすすめ商品、新商品など鮮度の高い情報で顧客の興味を誘います。幅広い商品ブランドを展開されている大東寝具様には、商品ページを量産できる雛形を用意して、特別な知識がなくても社内で運用できる環境を整えました。

コーポレートサイトの記事で製品を認知したユーザが、オンラインショップで商品を購入。オンラインショップを利用したユーザが、コーポレートサイトでブランドを知る。コーポレートサイトとオンラインショップの相互を行き来することで、ブランドと顧客の接点を強化。製品と眠りをサポートするサービスを通してブランドを発信。ファンを育てていくのです。


商品に合わせて販売チャネルを選定

寝具製造の技術を活かして、上質な素材を使用したベビー用品やクッション類のインテリア雑貨を多数展開されています。ブランドを発信、確立していくにあたって、商品の見せ方も精査。Webサイトと同様に、各商品にも役割を持たせることにしました。

大東寝具を象徴する看板商品に選んだのは「京和晒綿紗(KYO WAZARASHI MENSYA)」という商品ブランド。伝統製法で作られたガーゼ素材で、心地良い肌ざわりが特長です。この生地を用いてシーツやベビー用品を展開されています。看板商品は、催事やメディア取材で積極的に露出し、広報に活用。コーポレートサイト・オンラインショップでもブランドを詳しく紹介しています。

集客商品は、ブランド価値を手軽に体験してもらえるように設計。日本のソファというキャッチコピーのビーズクッション「tetra(テトラ)」や、亜麻布素材の寝具カバー「睡楽上布(すいらじょうふ)」、身体に合わせてオーダーできる枕などネットでも購入しやすい、低価格帯の商品を揃えました。これらの商品はオンラインショップで積極的に紹介。「一度、買ってみよう!」と興味を掻き立てることで、購入・ブランド体験を促します。

大東寝具様の本業である寝具一式は、本命商品。創業以来受け継がれた技術力が凝縮された商品です。寝具は購入頻度は低く高単価なため、「じっくり選んで購入を決めたい」という顧客ニーズがあります。ネットで完結ではなく店舗で接客して販売する商品です。

オンラインショップ × 実店舗で顧客と繋がる

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本命である寝具を安心して購入いただくためには、京都本店に来店いただくことが一番。購入検討時に想起され、選択肢に入れていただけるように。「大東寝具の布団に触れてみたい」と指名される存在になっていなくてはいけません。

そのためには一度きりの接点では不十分。あらゆる機会に、様々なアプローチで、潜在顧客と接点を持ち続けることが大切です。例えば、インテリア商品をネットショップで購入、百貨店の催事で上質素材のリネンに触れる、Webサイトで眠りの悩みに応えオーダー枕に興味を持つなど。

オンライン上だけでなく実生活のなかでも接点を持ち、大東寝具を認知してもらう施策が欠かせません。こうした小さな接点が積み重なって、大東寝具ブランドの認知をつくっていくのです。本命商品である寝具の買い替えタイミングで、指名買いや来店してもらえる関係づくりは、購入機会のずっと以前から仕掛けられているのです。


まとめ

業態変更後の戦略に沿ってWebサイトをリニューアル。企業としての「新しい方針」を、社内外に浸透させる良い機会になったと嬉しいお声をいただきました。

大東寝具ブランドを確立し、製品力で顧客から選ばれる存在になるために。原点となったのは「製品を通して、何を提供するのか」という問い。製品と顧客の関係を見直し、提供価値を再定義。快適な眠りを提供する寝具メーカーとして、さらなる価値を創造。時代に合った業態に変化させながらも、技術を磨きより良い製品を追求する姿勢を貫かれています。

大東寝具様の業態変更は地元でも注目を集め、地域に根差した100年企業として力強く事業成長を続けておられます。「睡眠の悩みから相談できる寝具メーカー」として築いたブランドは、次世代に事業を繋ぐための大きな資産になっています。