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「統一感を出すデザインリニューアル」から始めるブランディングの一歩

今回は2017年に、私たちが初めてブランディングを手掛けたお客様をご紹介したいと思います。

お客様は、鳥取県で海洋資源の研究をされている有限会社ルウ研究所様。元々高校で理科教師をされていた先代が設立された企業です。当時はご子息が引き継がれ、2代目社長として長期的な成長戦略をお考えの時期でした。

事業テーマは、廃棄される天然資源の利活用の研究。「自然との調和」をコーポレートメッセージに掲げ、魚のウロコからコラーゲンを抽出する独自技術をお持ちです。研究成果をもとに美容・化粧品や健康食品を開発。小ロットで素早く商品化できる強みを活かして、幅広い商品を販売されていました。一方で、商品ごとに販売戦略が異なり、デザインにも統一感がないため営業には苦戦。高品質な商品にもかかわらず、売上は伸び悩んでいました。

売り方の課題を解決し、長期的な事業成長を目指したい

ブランディングのきっかけは、新商品の発売計画。売れ筋の歯磨き粉の「プレミアム版」を開発し、自社商品として販売するというお話でした。

既存商品よりさらに高品質な、プレミアム歯磨き。ターゲットはどのような人か、既存商品との違いをどう表現するのか。具体的な売り方を検討するなかで、市場で差別化できる強みを確立したい、事業の指針を定めて計画的に商品開発をすすめたい、商品の見栄えを統一したいというご相談に発展しました。

差別化ポイントを定義し、事業の指針を定める

差別化とは、他との違いを伝えて選んでもらうこと。そのためには、他社との違いをわかりやすく顧客に伝えなくてはいけません。戦略の再構築にあたって見直したのは、ルウ研究所様ならではの強みは何かという点。

今市場で評価されている特長は、高品質な商品を素早く小ロットで開発できること。この特長を掘り下げると、長年の研究によって培われたノウハウがありました。高品質な商品を次々にカタチにする力は、研究開発力に支えられていたのです。

そこで従来の商品開発力から、研究開発力に強みを転換。天然素材を用いた商品展開に特化することに。創業時から続く、天然資源の利活用という研究テーマに直結した戦略です。高い品質を求める顧客が、ルウ研究所のターゲット。また「研究による裏付け」「天然由来」といった共通の特長で、「ルウ研究所ブランド」の認知をつくることができます。

「研究に裏付けされた天然素材の製品開発」と商品展開の軸を定めることによって、共通のターゲットに同じ特長の商品を売れるように。商品の売り方を統一することができました。創業時からのブランドストーリーに基づいた、新しい差別化の戦略が完成しました。

デザインでブランドストーリーを体現

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差別化をすすめるうえで重要なのは、他との違いを消費者に認識してもらうこと。デザインは、言葉だけでは伝えきれない情報を視覚的にわかりやすく届けるのに有効な手段です。ロゴやネーミング、Webサイトやパッケージのデザインを通して、ブランドのメッセージを発信し続けます。それによって消費者に違いを伝え、より深い理解を促すことで信頼を築き、ファンを育てる効果があります。

ブランドを象徴するロゴデザインには、他との違いを直感的に伝え、ブランドの世界観を体現する役割があります。ルウ研究所様には、構造式をモチーフにした六角形のロゴデザインをご提案。知的でアカデミックな第一印象で、差別化の軸となる「研究開発力」を訴求する狙いです。またブランドカラーでは、創業時からの研究テーマである「廃棄される未利用資源の利活用」とコーポレートメッセージの「自然との調和」を表現しています。

ブランドデザインが決まれば、それに沿ってパッケージやWebサイトのデザインを統一。ブランドの世界観を構築します。特に認知から購入の全てがオンラインで完結するネット販売の場合、Webサイトとパッケージは重要な要素。Webサイトは購入までの接点としてパッケージは購入後毎日触れる接点として、顧客とブランドを繋ぐ最も身近な存在です。

ルウ研究所様では、リニューアルに合わせて既存商品の資材もオリジナルパッケージに刷新。多少コストをかけてでも “ ルウ研究所品質 ” に価値を感じて、リピート購入いただくことを優先されています。リピート購入の比率を高めることによって、広告費を削減、事業の収益性を高めることができます。

ブランド戦略に沿ってマーケテイング戦略を策定

さらに差別化を強化するため、医薬部外品の開発に注力。公的機関のお墨付きを得ることで、一般流通している競合商品よりもワンランク上の高品質を訴求します。「研究に裏付けされた天然素材の製品」と「医薬部外品の開発」という2つの指針に沿って既存商品を精査。デンタルケア・バス用品・美容化粧品の3つに商品ラインナップを絞りました。

次にブランド戦略に沿って販売チャネルを整えます。目指すのは一般消費者向けの小売販売と、卸・OEMなどB2Bの取引の両立です。そのために、まずは小売に注力。オンライン販売で実績をつくりながらブランド力を高め、B2Bの販路開拓につなげていく狙いです。

小売で注力したのは、多くの会員を保有するECモール。ブランド戦略に沿って差別化を図り、売上最大化を狙います。一方、自社のオンラインショップは、ルウ研究所ブランドを深く理解してもらう目的で活用。ブランドの発信拠点として商品やブランドストーリーを詳しく掲載。OEMを検討している企業や卸先のバイヤーからの問い合わせの受け皿としても機能します。このようにECモールと自社サイトを使い分けて売上アップとブランド力向上を実現しました。

まとめ

ブランディングを通して既存事業の売り方の課題を解決され、事業成長の指針を確立されたルウ研究所様。強みの分析を経たうえでの差別化戦略で、経営判断にも軸ができたそうです。例えば、自社で賄いきれないECの運用ノウハウは外部に頼り、強みである研究開発に集中。戦略に沿った選択と集中は、リソースに限りがある中小企業が事業成長するうえで大事なポイントです。

また差別化戦略に沿ったデザインで強みを訴求し、ルウ研究所ブランドの世界観を確立。ブランドを核として事業成長の土台を固めて、事業は毎年120%のペースで成長。5年目には200%を達成する見通しです。