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【復職支援】勇気を出して戻ってきた仲間を支える関わりについて振り返る

少しお久しぶりになってしまいました。
前回は新年度のストレスについて取り上げて記事を書いたのですが、やはり私自身も新年度疲れを経験しました。(記事はこちら

でもこれは避けないといけない、というよりかはきちんと対処すれば怖いものではありませんのでね。
恐れない、恐れない。
ストレスを受け入れて、川へそっと流してあげればいいんです。

さて今回は、昨年の経験談をもとに一つお話ししようと思い書いております。
私は昨年1年間、メンタルヘルス不調で約2年休職し復帰した後輩のサポートをしていました。

当時は心理学の勉強もまだしていなかったので、本当に「偶然」「師長に任命されて」サポートすることに。
新人看護師のプリセプターをするのとはまた違った緊張感と責任感を感じました。

再度休職することのないように大切に育ててあげたい。
看護師としての自分を少しでも認められるようにしてあげたい。
漠然とそんな気持ちを胸に抱いていました。

そこから彼との関わりが始まり…
1年間、休職せずに頑張りきることができました。
そこまでには山あり谷あり、谷あり、谷あり、くらいに色々あったのですが。
その場その場でさまざまな学びもあって、私自身も成長のきっかけになったと思います。

あなたは、休職明けのスタッフへどんな言葉をかけるかイメージできますか?
自分の言動一つで傷つけてしまうのではないかと、関わること自体にネガティブになりますか?
それとも復帰したのだから、と他のスタッフと変わらない関わりをしますか?

復職はゴールではなくスタート。
スタート地点から走り出すためには環境が非常に重要です。
職場というコミュニティがどのような雰囲気であるか、スタッフの印象はどうか。
1年間非常に悩まされたことでもあります。
そんな悩みと、そこからの学びや実践についてお伝えできればと思います。

復職スタッフの心理に思いを馳せる

現場に戻ることの葛藤

うつや適応障害などの精神疾患に対して行われる治療は薬物療法のイメージが強いと思いますが、それ以上に基盤として重要なのが十分な休息です。

とにかく休む。一日寝ててもいい。外に出て散歩できたら万々歳。
体調の悪い時期はそういうレベルです。
復職に近づくにつれ、活動性をあげて復職プログラム(リワーク)に通ったりするうちに、だんだんと元の職場のことを考えることになります。

休職前のつらかった出来事を思い出したり、
かけられた言葉が聞こえて心に刺さってくる。

復職時の周りからの目線を想像したり、
どんな扱いを受けるのだろうと不安になる。

過去のネガティブな記憶や感情にとらわれ、未来への漠然とした不安が襲ってくる時期が訪れます。
体調がいいのは家にいる今だからであって、職場に行ったらどうなるかわからないという病状への不安も同時に生じるでしょう。
かといってこのまま働かないでいる自分のことも肯定できず、金銭面を考えれば働きたい。

本当に様々な感情が波のように寄せてくるのが復職時期の葛藤です。
それをなんとか押し留めて復帰してくるのですから、なんと脆く繊細なことか。

周りの評価が気になる

長期間休職していたのですから、本人はある程度自分が腫れ物扱いされることを自覚していました。
敏感に周りの視線や会話を感じ取り、自分のことを言っているのかどうか、何かミスや間違いをしたのか気にし、言いたくても言えないのを知っていました。

それ故に周りと打ち解けるのに苦慮していました。
悩み事は?と聞くと、
「他の人みたいに、先輩とうまく話せない」
「どんな話をしていいかわからない」
業務を覚えることよりもそういったことにフォーカスする時間が多かったです。

周りは気を遣って言わなかっただけ。
言ったら傷つけるんじゃないか。
自分の一言で、また休職するようなことがあっては困る。
それもごもっともです。

お互いの思いによって、どんどんその間の壁が分厚くなるような感覚が日に日に増していきました。


関わりで心掛けたこと

復職スタッフに対しての心掛け

私が1年間一環して続けていたことがあります。

  • 自分が安全な人であるという意思表示

  • 「今日は体調何点?」という質問

  • ネガティブな出来事は場面や会話を明らかにして振り返る

これを続けた理由は、
再度休職せずに仕事に心と体を慣らしていくためには、多少依存されることを許容して関わり続けることが必要だと考えたから。
先輩の一人として、関係性を構築する練習台になりました。

決してメンタルが弱いから仕方ないとか、辞めちゃっても仕方ないとは思いませんでした。
彼が看護師を続けることを自分で選択したならば、それを叶えてあげたかった。

まずは信頼関係の構築が必要と考えて、とにかく接触と会話の機会を短くてもいいからたくさんとるようにしました。

挨拶は必ず私から。
顔色や表情から体調のチェックをして、今日の体調が何点か尋ねるのがルーティン。
体調が悪いことも気兼ねなく言えるようになってもらいたかった。

良かったことや助かったことはその場でフィードバックするようにし、指摘したいことは事実だけを伝え改善点の共通認識を持つように意識しました。
その日の体調によって業務効率が大きく変わるので、抱えている仕事量が妥当であるかどうかも時々気にしたり。

月1回個人面談も組んで話をすることも欠かさずにやりました。
一時期私が休職していた時でもカフェで話したり、関わりを絶やさぬように。

これは面談の時にやっていたのですが、
ネガティブな出来事は場面や会話を明らかにして振り返る
というのは、正しく事実を認知し感情を言語化する練習をしたかったんです。

人の感情は物事が起きた時にそれをどのように認知するかによって全く変わってしまうといわれています。
認知のもとになっているのは、その人の価値観・信念。

価値観・信念が望ましくないもの=非合理的な信念(イラショナル・ビリーフ)であった場合、物事の認知が歪んでしまい抑うつや不安、無力感を生んでしまうので、合理的なものに変容させていこうというのが論理療法や認知療法的な考え方です。

残念なことに当時は心理療法の手法までは理解が及んでいなかったので、あくまでそれを感覚的に実践していたに過ぎないのですが…
簡単に言うと、状況や会話の解釈を1と10しか見ないせいで早とちりして必要のないマイナスダメージを受けてしまうことがあるので、1から10まできちんとさらってあげるということです。

精神的に疲れている時ほど、脳は早とちりするようです。
そのほうが負担が少ないからだそうです。


同僚に対しての心掛け

私が彼の担当であることは周知の事実でしたので、病棟の同僚からは日々様々な話が舞い込んできます。
出来ていたこと、ミスしたこと、体調が悪くて休んだこと。
世間話くらいのトーンのこともあれば、露骨な不満を受け取ることも多かったです。

その時、どう対応してくださったんですか?と尋ねてみると、
「代わりにやって終わったよ。だって言うのもさ。」
こういう返しが体感8割。

いやいや、諦めないで。
関わることをもう辞めてるじゃない。
そういう態度、伝わってるから。

そんな気持ちをグッと堪えては、あなたの言いたいことは理不尽でも間違ってもないことだから事実を次からは伝えてみてもらえませんか?と告げる。
もしそれで気持ちが落ち込んだり、不信に繋がる時、彼は私のところにやってきますから。と。

それでもどうしても言えないなら、私にまた教えてください。
あなたにスッキリしてもらえるなら、それはそれで良いので。
そう添えたりして。

周りの言動で気分が沈むことは必ずあります。
いつまでも棘のない世界にはいられません。
だから本人も、周りもそれを恐れることをやめて欲しいと思っていました。

棘が必ず刺さるなら、抜き方を覚えればいいだけ。
棘を避ける術を身につければいいだけ。
棘もちょっと柔らかくなるならしてみるのもいいでしょうね。

自分が彼の立場だったらどう感じるでしょうか?
きっと何か言いたいことがありそうなのに言われることもなく、後日まとめて第三者から聞かされる。
指導もしてもらえないなんて、切なくないですか?

一度、私に積もり積もったものをできるだけ小さくサイジングして伝えたことがありました。
案の定落ちこみましたし、元々あった人の目が気になるという特性が一時的に強く現れてしまいました。

その時に私との距離感も僅かに変化したように感じられたのです。
小さな素振りの変化をみて、やっぱりやらなきゃ良かったかという気持ちにもさせられました。
相談者である私がそのような発言をすることは、相談者を奪うことに繋がりかねないと察したわけです。


理解を得ることの難しさを知る

関わりを避けているうちは理解できない

先に述べたように、同僚たちは彼との関係性を構築することに後ろ向きでした。
業務上必要な最低限のの会話をするに留まっていました。

だからお互いのことはあまり深く知ることがなかったし、病状についてきちんと理解している人は少ない印象でした。

体調を崩してフロアを離れていても、
「またいないよ」「本当に具合悪いの?」と訝しむ人もいました。
そんな雰囲気を本人も明確にわからなくても感じ取っているようでした。

それに対してフォローに回ってみても、見えないものの話をしているのであまり腑に落ちないようで。(本人からの話ではないから、というのもあるかも)
実際、フロアの人数は-1だし、代わりに業務を肩代わりしてくれるスタッフがいるのも事実。

「フォローしてくれているスタッフへのフォローはないの?」
そんな話にも何回もなりました。本当にその通りで…
こういうジレンマも相まって素直にサポートできない現状もありました。


理解する、支援する環境が整っていない

一般企業の多くは、復職支援プログラムに沿って専任の産業保健スタッフが復職者に対応し復職後の勤務部署や勤務スケジュールについてともに検討していくように仕組みが作られています。

それに対して医療機関で復職支援プログラムを導入しているのは少数です。
実際に支援をするのも現場ベースであり、看護師長や主任を筆頭としたスタッフが個人の力量で行っている場合が多いようです。

それぞれ通常業務をこなしながら、という形になるために復職者支援に関する知識に触れる時間もなく、必要性もあまり感じないのでスタッフによって対応がまちまちになります。

岐阜県内の20病院518名の看護管理者を対象とした研究結果では復職者との間で起こる問題として、
・主任、業務リーダーの配慮不足
・労働環境の改善や調整
・代務負担
・看護師長の配慮不足
・人間関係の調整
・体調不良時の対応方法
などが挙げられています。

心の健康問題で休職した看護師の現場復帰支援の現状と課題:厚生の指針2019年10月

この論文を拝読した際に、私が昨年抱えていたモヤモヤと完全に一致する!と感じました。

これは全て、現場に復職者支援を丸投げしていたからだったのか。
だから復職者も大変だし、周りのスタッフも大変だったのか。
と非常に納得しました。



看護師の復職支援、こうなって欲しい

どんな職場でも復職支援プログラムを

復職者が休職→退職とならずに済むよう、環境整備が必要。
大学病院でも、民間病院でも、企業立や公立でも、どんなところに勤めていても安心してまた働けるようになるには?

やっぱり仕組み作り、復職支援プログラムの導入とスタッフへの周知。

わたしだったら、
いきなりフルタイムはハードル高いし、長時間働き続けられるか不安になる。
夜勤は人数が少ないって分かっているから、体調崩せないプレッシャーを感じる。
休職前より知ってるスタッフが減ってたら、誰に相談しようか悩む。
休日も病院に行かなきゃいけないし、あまり休んだ気がしないかも。

実際にメンタルヘルス不調で休職中の方は、もっと多岐にわたる感情や思考を復職に際して巡らせているのだろうと思うと
それにどれほど寄り添ってくれる人がいただろうか?

雇ってるんだから、働いてもらうのが当たり前。だなんて思われたくない。
この先そんなスタンスの病院はどんどん人不足になる。
地道な復職支援が遠回りのようで、人員不足解消の近道になるはず。

きちんと本人と話をして、

  • 一日何時間なら働けそうか

  • 週何日休みがあれば安心か

  • 夜勤は何ヶ月様子をみましょうとか

  • プリセプター的存在は欲しいかどうか

それを本人の状況次第でいつでも変更できますよ。
なので月に一度はお話をしましょう。
これくらいの対話はできそうだと思いませんか?

仕組みがあれば意識はある程度変わるはずで。
就業規則に疑問を感じにくいのと同じです。
ただ、現状に疑問を感じていない人が一定数いることも事実です。


メンタルヘルスについて学ぶ機会を

看護師は医療職であるため、精神疾患やメンタルヘルス不調への一定の理解があると思われがちですが、必ずしもそうとは言えません。

一般病棟で勤務していると、精神疾患の既往を持つ患者様が入院されることもしばしばありますが、対応のしにくさを感じている場面も散見されますし、臨床心理士に対応を任せきりにしている方もいます。

精神疾患は完治することがなく、寛解と再燃の間を揺れ動くものであるために、対象が今どのあたりにいるのかを捉えることが難しいのです。
復職者への態度にもそういったことが関係していそう。

リモートでもいいから、部署内へ休職者の心理や復職支援についての講習を年に何回かやるのもいいと思うんです(個人的なつぶやき)
時間外の勉強会増えるの嫌な人がほとんどだと思うので、なんならyoutube限定公開でみてもらってもいいレベル。

仕組み作りと意識作りはどちらが欠けてもダメ。


昨年のことを色々振り返り、反省してみました。
今の自分なら、もっと違うアプローチができたなあ。と思ったりしました。

最近フリーランスがかっこいいとか、企業転職したらすごいとか、そういう風潮が流れつつあります。
それ自体は自分のやりたいことを実現・達成するための職業選択ならば超、大賛成です。
一度きりの人生なのだから、何をやってもいいはずです。

でも、だからこそ。
今現場にいる看護師は本当に大切にしなきゃいけない時代になったと思うのです。
看護師に求められる病院が生き残る時代にこれからなっていく。
奉仕という名のもとに、強いることは許されなくなります。

一人でも多くの看護師がいきいきと笑顔で生きていけることを願いながら、私は私にできることに取り組んでいこうと心に決めました。
これからも看護師のために。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

みたちえ


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