見出し画像

そして何者にもなれなかった

ミルボン×note主催「#美しい髪」コンテストへ応募していた。
結果、なんの賞を獲得することなく終了してしまった。

文字を書く仕事をしていたわけではなかったが、わたしのSNSへの投稿には定評があった。
昔から本や少女漫画がだいすきで、それ以外することもなかったので家にこもり読書ばかりしていたことが功を奏し(?)恋愛妄想ストーリーをつくるのが得意になりつつあった。
「感動した」「おもしろい」「本書ける」
SNSのコメント欄は、知人らからの好評価で埋まり、投稿するたび承認欲求が満たされた。

これといって目指すものもなく、「将来の夢」なんてものを持ってこなかったわたしだが、そこではじめて「あれ?わたし、書く仕事とか向いているんじゃない?」とうぬぼれ半分で思い始めた。

「書く」ことにおいて、いま一番注目していたのが、SNSの王子カツセマサヒコさんだ。カツセさんが審査員をしていると告知しているのを見かけて、一度腕試しだとコンテスト応募へ至った。

うーんうーんと、一晩あたまを悩ませて書いた。
書いた後、仕上げに客観視して評価してみよう、と読み直してみたり、自分の中では「作り上げた」気になったエッセイが出来上がった。

結果発表まで、一か月ちかくもある。
わたし、いいの書いたんじゃないか?もしかして、いけちゃう?
最低でも、入選はするんじゃないか。
これを機に、エッセイ連載の仕事が舞い込んできたりして。

振り返ると恥ずかしいほどに自己陶酔にひたったまま日が流れた。

そして今日、ふとTwitterをひらいてみると、当コンテストで審査員賞をもらったと喜ぶひとのツイートが目に入った。ああ、今日発表だったのか。
半分、あたまの隅にほっぽって忘れ気味だったので、はっとした。
結果のページをひらき、自分の名前と応募作品のタイトルを探した。

しかし、上から下までしっかり2往復しても、わたしの名前はなかった。

その瞬間、気持ちが切り替わるかのように
「やっぱそうだよね~、獲れっこないよねぇ」と謙虚モード作動。
あんなにのびのびとうぬぼれを披露していたのに、「はじめからダメだと思っていたよ?」なんて自分を守り固めていた。

それでもまだ、胸の隅っこのほうでは、がくんと首をうなだれる自分がいた。
あんなに何度も読み返して、これでいいと思えたのに、そもそも感覚にセンスがないってことじゃないか。

地元で一番かわいかったあの子が、普通の主婦になっているように
地元で一番足の速かったあの子が、ただのサラリーマンになっているように
身内で好評の文字を書くわたしは、なおさら何者になれるはずもなかった。

わたしの人生は、そんなことばっかりだ。
親戚にかわいいかわいいと囃し立てられ、「アナウンサーになれるよ」、歌がすきでよくうたっていたので「じょうずだねぇ。歌手になれるんじゃないか」なんて言われるたび鼻を高くしてうぬぼれた。ほんとうに、なれるんじゃないか?明日にはスカウトが来たりして?なんてことまで考えた。

当たり前だけど、待てど暮らせど、芸能界への扉はわたしの方へ開いてみせてなどくれなかった。

器用貧乏で、なんでもある程度はうまくやってのけてしまうので、何に燃えることもなく、身内間で褒められる程度でおわってしまう。

今回のコンテストで、そんな自分に気付いてしまった。
そして、このままではいけないと思った。

この悔しさと、もらったキッカケをだいじに抱えながら、書くことに夢中になってみよう。身内外のだれかに振り向いてもらえるまで、磨き続けよう。
これまでしてこなかった努力を、ここにぶつけてみよう。

灯すことから逃げていた気持ちに、ちいさく灯をつけてみた。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?