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海外の学校で日本語のTAをするあなたへ

海外に留学すると、大学や語学学校で「日本語の授業でTA(ティーチングアシスタント)をしませんか?」ということ、あると思います。TAをするときに気を付けてほしいこと、日本語教師の視点からまとめます。

あくまで「アシスタント」

まず、一番念頭に置いてほしいのは「アシスタントはあくまでアシスタントである」ということです。これ、忘れがち。
私はどう教えよう、学生とどう関わろう、どうやって日本語を教えればいいかな…と思う前に、アシスタントだから絶対担当の先生(メイン教師)がいるはずなので、その先生を念頭におかなければなりません。その先生がいなければ、日本語の授業をは成立しないので。

担当の先生(メイン教師)の意向に従う

ということで、担当の先生が「TAに何をしてほしいか」ということを行うことが一番大事だと思います。先生によって、TAにしてほしいことって色々で、例えば
・発音のモデルや、発音練習をしてほしい(先生がノンネイティブの先生の場合に多い)
・学生の活動(ペア活動やグループ活動)がスムーズに行えるよう支援をしてほしい
・宿題のチェックをしてほしい
・授業外で会話クラブをしてほしい
・文化紹介をやってほしい
・プレゼンテーションの見本をやってほしい

など、先生がしてほしいことは多岐にわたります。そして、態度としても
・先生として、学生には平等に接してほしい
・同じ大学生として、仲良くなってほしい
など、さまざまな要望があると思います。最初に全部聞くのは無理でも、少しずつ求められることを確認しながら活動をするのが良いと思います。

担当の先生との関係性重視

上にも書きましたが、その日本語コースの運営にはメイン教師がいなければならないので、メイン教師を飛び越えて色々やってしまうとトラブルに発展する可能性もあります。
メイン教師はコース全体のことや、学生のカリキュラム全体を見ています。2年後、3年後にどうなっているかも想像しながら指導することもあります。だから、その場だけ見て「こうしたらいい」とはいかないこともあります。
TAとして学生と良い関係を築くのも大事ですが、まずは先生との関係を築いて、「このTAなら安心してお願いできる」という信頼関係が活動の幅を広げていくと思います。

私だったら困るな…の行動

私も授業に日本人の大学生に入ってもらったことがあります。あまり困ったことはありませんが、こうだったら困るな、ということを考えてみました。
イメージは、海外の大学の日本語専攻(1クラス15人とかそのぐらいの、集合授業)です。

・勉強していない文法を教えてしまい、クラス中が混乱
ペアで会話の練習中、「先生(TA)、これは何と言いますか?」と聞かれて答えたら、「何それ、知らない」となり、周りの生徒を巻き込んで議論に発展。会話練習の時間が終わっても収拾がつかず、メイン教師が説明することに…
混乱を落ち着けるために時間が必要、そして説明も必要。用意していた授業内容が終わらず、次の授業に持ち越しになってしまった。
TAだと、日本語教育にあまり詳しくない人も多いはず。ある場面における適切な表現を教えるのは悪いことじゃないと思うんですが、それが脱線して授業時間をはみ出してしまったり、学生の理解の妨げになるのは良くないかな、と思います。個人レッスンならいいんですが、大学の授業には時間制限があるので、それも気にしなければなりません。

・説明中、クラスを歩き回って指示を出す
メイン教師が説明している時にクラス中を歩き回り、別途説明をしたり指示をしたりするのもちょっと困ります。困っている学生を助けてくれる気持ちはありがたいけど、先生の話は聞いてほしいな…

・活動の説明がメイン教師と違う
日本語の授業ではペアワークやグループワークで活動をしますが、その時にあるグループから「活動の仕方がわからない」と言われて説明したところ、説明がメイン教師と違っていて学生が混乱してしまいました。他のグループにもその説明が伝わってしまったため、2グループはメイン教師の説明通り、他の2グループはTAの説明の通り発表を準備。
これで困るのが、例えば発表は評価の対象にしていた場合。準備が違ったため同じスケールで評価できなくなってしまうこともあるかもしれません。評価に関わることもあるので、必ずメイン教師に確認したいところ。

・一部の学生とだけ仲良くする
一部の学生だけがTAの先生と仲良くしたいと思っているならいいんですが、みんなTAと話したいのに、TAが学生を選り好みして一部の学生としか話さないのは問題だな、と思います。他の学生から不満が出て、授業運営が難しくなることも。
授業中に一部の学生とおしゃべりしちゃうとか、そういうのも困りますね…授業中にTAを注意するって、悲しいです。

アシスタントとしての役割を全うする

TAはあくまで「アシスタント」。授業中、学生に質問されたらメイン教師につなげる、わからないことは必ずメイン教師に確認。これがすごく大事だと思います。
メインの教師の仕事を増やさず(減らすことはできなくても)、学生に日本語をもっと学びたいと思ってもらう、これが私の考えるアシスタントの役割です。
私もアシスタント教師をやっていたことがありますが、こんなにうまくできていたかはわかりません。でも、自分がメインで教えるようになって、TAのありがたさと授業に入ってもらう難しさがわかりました。
日本語の先生は万年人不足なので、とにかく人がいてくれるのはうれしいです。そして、上のことを気をつけて動いてくれたら(私だったら)もっとうれしいなと思います。


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