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【選挙ウォッチャー】 羽曳野市長選2020・分析レポート。

7月5日告示、7月12日投開票で、羽曳野市長選と大阪府議補選が行われました。羽曳野市は大阪南部の闇の深いエリアであることから「ディープサウス」と表現されることもあるのですが、今回の羽曳野市長選はまさに「ディープサウス」そのもの。久しぶりに闇の深い選挙を見ることになり、選挙ウォッチャーという仕事の必要性を改めて感じました。今回の羽曳野市長選は、今年で77歳を迎える現職に、4人の新人が挑んだ選挙です。すべての選挙事務所を訪れることができたのですが、この中でまともな対応をしたのは2人だけ。残りの3人の対応はクソで、中にはぶっ飛ばしてやろうかというレベルの対応をした所もありました。今回はすべてを包み隠さずに書きましょう。

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北川 嗣雄 77 現 無所属
松村 尚子 50 新 無所属
嶋田 丘  72 新 日本共産党
山入端 創 39 新 大阪維新の会
田仲 基一 55 新 無所属

皆さんもご存知の通り、大阪では今、かつてないほどの維新旋風が吹き荒れています。新型コロナウイルスを政治パフォーマンスに利用している吉村洋文知事と橋下徹さんが、連日、大阪のテレビ番組に出演。この日、僕が宿泊した奈良のホテルでは、朝起きてテレビ番組をつけると、ちょうど「政府の新型コロナウイルスの専門家会議が廃止され、経済の専門家や知事も参加する分科会が行われることになった」というニュースを流していて、参加する知事が鳥取県の平井伸治知事だったのですが、「鳥取県知事が参加するぐらいだったら、リーダーシップをしっかり発揮している吉村洋文知事の方がいい」なんていうクソみたいなコメントをしていました。まるで吉村洋文知事がものすごく頑張っているかのように感じている大阪人が多いのですが、外から見ていると、全国の中でも最低レベルの動きをしているのが吉村洋文知事です。


■ 山入端創候補の主張

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新型コロナウイルス対策はろくすっぽできていないのに、連日、メディアに出演しまくる戦略で、大阪で絶大な力を誇っている大阪維新の会。この羽曳野市長選でも、地元選出の39歳の府議が立候補してきました。山入端創さんは、大阪府議や衆議院議員の秘書を経て、2011年に大阪府議選に初当選。以後、3期連続で当選を果たしている生え抜きの維新メンバーです。大阪維新の会ができたのが2010年なので、かなりの初期から大阪維新の会に所属している人だと言えましょう。

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この羽曳野市は、長いこと現職の北川嗣雄さんが市長の椅子を守り続けてきたため、今日まで維新に奪われることはなかったのですが、とうとう羽曳野市も維新の手に落ちました。普通、これだけ新型コロナウイルス対策がうまく行っていなかったら大阪府民の皆さんも「何かがおかしいぞ!」と思っても不思議ではないのですが、ディープサウス羽曳野は、この期に及んで維新旋風が吹き荒れており、松井一郎代表、吉村洋文代表代行の「誠実で信頼できる男です!」の太鼓判に、「二人が言うなら間違いないわな!」のテンションで投票しています。維新が勢力を伸ばしているわけではない地域の人たちから見ると、実に不思議な現象なのですが、テレビを見ていると維新が頑張っているように見えてしまうようです。

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日本維新の会は、取材には積極的に応じてくれる印象がありますが、ディープサウス羽曳野は、実に閉鎖的でした。そもそも日本維新の会に限らず、どの陣営も閉鎖的だったのですが、選挙事務所でこの日のスケジュールを聞いたところ、上司らしき人に話を聞きに行き、「今日は一日、選挙カーに乗っているので、街頭演説の予定はない」と言われたのです。僕はサムネイルの写真を当選した人にしている関係で、山入端創さんは当選の確率が高いと見ていたので、ぜひとも写真を撮りたかったのですが、選挙カーでグルグルしているだけだと、限られた時間の中で遭遇する確率は低いので、その時は諦めることにしました。しかし、僕は選挙の取材においては神がかり的に運が良いのです。もはや選挙の神様がいつも見守ってくれているのではないかと思うぐらいに、常にラッキーなのです。なんと、古市駅前を通りかかった時にたまたま大阪維新の会が駅前で街宣しているところに出くわしました。

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兵庫県選出の参議院議員である清水貴之さんも応援に駆け付けているのですから、このスケジュールはもともとあったはずです。つまり、山入端創さんの陣営は僕に「嘘を教えた」ことになります。スケジュールを教えられないと答えるわけでもなく、「嘘をつく」という行為に出たわけです。こんな不誠実なことがあるでしょうか。さて、そんな山入端創さんの選挙公約は、本当にそんなことをやってくれるのかどうかはわかりませんが、いろいろと魅力的に見えることが書かれています。まずは、維新の代名詞である「身を切る改革」。市長退職金の廃止、総事業費5%削減、市長給与50%削減。削減した給与の50%はコロナ対策として本年度予算に反映するそうです。子ども医療費助成を18歳まで拡充、0~2歳の保育を無償化、オンライン授業の整備、中学校給食の導入、外国語教育の強化、老老介護や独居高齢者のサポート事業強化、健康寿命を延ばす、谷町線延伸、子育て世帯や新婚世帯の空き家利用に補助金制度、芸術文化振興への支援など。これまで行政でやるべきインフラを民間に売り渡しまくってきた大阪維新の会が、さまざまな政策を口にしているのですが、本当にやってくれるのかどうかを見極めた方がいいでしょう。なにしろ芸術文化振興なんて、橋下徹さんの時代からボッコボコに潰してきているわけですから、今さら何を言っているんだという感じです。

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僕はかねてから日本維新の会の理論は、人を不幸にする考え方であると思っています。この日も維新の応援弁士のジジィが「商店が新型コロナウイルスでこれだけ困っている時に公務員は高い給料をもらっている」と主張。しかし、公務員というのはそういう仕事であり、民間企業のようにバクバクに儲かって一攫千金できない代わりに、そこそこの給料で安定的に生きていけるものです。特別に裕福なわけでもなければ、特別に貧乏なわけでもない中の中の暮らしができる。今は世の中が不景気なので「中の上」みたいな暮らしになっているかもしれないけれど、そこには「儲ける喜び」みたいなものはありません。また、警察官にしても消防隊員にしてもそうですが、こんなふうに新型コロナウイルスが蔓延している状況でも仕事をしないわけにはいきません。迷惑系YouTuber・へずまりゅうに関連して警察関係者の方々が新型コロナウイルスに罹ってしまうという出来事がありましたが、そういうリスクを背負って給料をもらっているのです。その給料を「高いから削減するんだ!」と叫んでしまうのは、頭が悪いにも程があります。公務員の給料を下げることは一瞬でできるのかもしれないけれど、それ以前に民間企業が儲かるための仕組みを作ること。うまく地域経済を回すためにどうしたらいいのかを考えるべきです。そもそも民間企業が儲かっていれば、公務員がそこそこの給料をもらっていても気になりません。「俺がこんなに不幸なんだからオマエも不幸になれ」という理屈は、不幸の連鎖を作るだけです。

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先日の尊厳死の問題もありましたが、簡単に人を切り捨てるような思想を持った政党が、大阪を中心にものすごい勢いで支持者を獲得しているのですから、どうしてこんなに認知が歪んでしまったのかを検証しなければなりません。退職金をカットされても、その分を給料に上乗せされたら同じことですし、総事業費を削減しても必要な行政サービスがカットされたら市民の生活は成り立ちません。市長の給料を50%削減するより、カットする市長の給料分の税収が入ってくる方が、それだけ地元の企業が潤っているということになるのですから。大阪の人たちはいつまで「維新」を支持し続けて、自分たちの命を危険に晒すのでしょうか。答えは既に新型コロナウイルス対策で出ているはずなのですが・・・。


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