【選挙ウォッチャー】 フジテレビ「タイキョの瞬間」が炎上している件。
10月6日にフジテレビで放送された「タイキョの瞬間!密着24時」が炎上しています。この番組は、よくある警察の密着モノで、改編時期の特番としては定番中の定番なのですが、ただの「警察24時」ではマンネリ化していて見てもらえなくなるので、切り口を「退去の瞬間」ということで、入国警備官に密着し、不法滞在者や不法占拠などの摘発の瞬間を見せようという番組でした。僕も番宣を見て「なるほど、こういう切り口で来たか」と思ったのですが、その中身が不法滞在や不法入国の外国人が摘発される様子を映すだけで、日本社会が抱える闇にまったく触れないものだったため、単なるエンターテイメントとして切り取ってしまったフジテレビに抗議が殺到しているというわけです。
■ フジテレビとしてはヒット企画を狙ったはず
人の野次馬好奇心を刺激する「警察24時」は定番中の定番と言えるような特番で、とりあえず警察密着モノを放送しておけば、ある程度の数字を見込めることは言うまでもないのですが、あまりにド定番すぎるので、少し変化を加えることで、さらに視聴者に興味を持ってもらおうと狙ったのが入国警備官に密着する「タイキョの瞬間」だったと思います。この番組を放送するにあたって、絶対的な協力が必要なのは入国管理局です。まさかたくさん協力してもらっておいて、その協力者に「ここがダメだよ、入国管理局!」なんてことをやり出した日には、せっかくヒットしても二度と番組を作らせてもらえなくなるので、この企画を放送する時点で入国管理局の闇に迫ることはできない。つまり、こんなふうに炎上することは避けられないものでした。それでもテレビ局としてはチャレンジをしないわけにはいかないので、不法に入国していたり滞在していたりする外国人が悪いことは事実なのだから、逮捕される瞬間をお届けする番組を作り、放送することになったのだろうと思います。
■ 入国管理局の人権を無視した扱いについて
不法滞在する外国人の問題は、日本の企業が外国人労働者を奴隷のように扱い、逃げ出す人が続出していることを見ても、外国人だけが一方的に悪いわけではないという理解が広がっています。さらに、入国管理局における収容された外国人たちの非人道的な扱いが明るみになり、人々が「最低限の人権を守るように」と働きかけるようになりました。入国管理局がどれだけ非人道的な扱いをしているかについては、ハーバービジネスオンラインでも複数の記事が上がっていますし、僕の記事もありますので、ぜひ一度読んでみていただきたいと思います。
■ この番組に出演した鈴木正人埼玉県議会議員
この「タイキョの瞬間!密着24時」に出演したのが埼玉県議会議員の鈴木正人さんです。ドロップアウトした外国人たちの問題は、日本の政治の問題でもあります。なので、確かに不法滞在している外国人も悪いのですが、不法滞在になってしまう環境を整えてしまっている政治の責任が問われる話なので、外国人だけを悪者にするというのは自らの責任を放棄することになりかねません。だから、普通はこういう番組に政治家が協力するということはあり得ないのですが、なんと、埼玉県議会議員の鈴木正人さんは番組に出演し、「あそこに不法滞在者がいるからやっつけてくれ!」と言わんばかりの協力を見せたのです。
政治家のくせに、外国人に対する非人道的な酷い扱いを鑑みず、一方的に「不法外国人が悪いんだ!」と言い張ってしまう鈴木正人県議とは、一体、どんな人物なのか。さっそくたくさんの人が興味を持って調べてしまい、それまでまったく注目されることもない、そこらへんの県議のオッサンだったのに、とんでもない「ネトウヨ議員」だったことが発覚し、過去の発言などがほじくり返されることになってしまったのでした。
「ネトウヨ議員」とは、単なる「保守系議員」を指すのではなく、戦前・戦中回帰を目指し、大日本帝国に対する憧れを持ってしまうようなカルト性を持った議員のこと。今回で言えば、外国人の言い分なんて微塵も聞くつもりはなく、「悪いことをしているなら悪い」という一方的な価値観で弱者を切り捨て、なぜそのようなことになっているのかを考えられないタイプのオジサンやオバサンです。
埼玉県議会議員 無所属県民会議代表 保守系無所属議員 故郷志木市、埼玉や日本国が大好きです! 戦後教育の優等生で、GHQの占領政策通りに自分の祖国を貶めたい方とのやり取りはご遠慮させていただきます。
埼玉県志木市。このあたりは日本有数の「政治の闇」を抱えているエリアで、「このハゲー!」や「ちーがーうーだーろー!」などの珍フレーズで話題になった、あの豊田真由子先生の選挙区。埼玉県朝霞市といい、志木市といい、このあたりはヤバい議員の巣窟と化しています。だいたいプロフィールにわざわざ「GHQの占領政策通りに自分の祖国を貶めたい方」とか書いている時点で、ものすごくネトウヨカルト臭が漂ってきて、そもそもの思想がズレが見え隠れします。
先日の沖縄県知事選では、定番の「小沢一郎別荘デマ」を流し、辺野古基地が移設されて土地が高騰するのを見据えて豪華な別荘を建てたと言っています。どこぞのデマを信じた素人がツイートしてしまうのは仕方がないかもしれませんが、埼玉県議会議員にもなってリテラシーがないなんて、埼玉県はこんな人が議員をやっていて大丈夫なのでしょうか。辺野古基地が移設されたとしても、辺野古基地からずいぶん離れた10kmも離れた宜野座村の別荘の値段が上がるなんて、ギャグにも程があります。これは品川と田町の間に新駅ができるので、錦糸町や亀戸の土地が上がると言っているくらいチンプンカンプンな話です。ましてや新しい駅のように便利になるものならともかく、辺野古基地という騒音や墜落リスクだらけの場所に近いなんて、土地の値段が下がることはあっても上がることは考えにくいです。こうしたデマを平気で流す県議会議員は、この他にも、我那覇真子さんをリツイートしたり、チャンネル桜に出演したことを報告したり、DHCがスポンサーの「ニュース女子」には真の言論の自由のために闘っていただきたいと言ってみたり、左で言うなら中核派の話を積極的にツイートしているようなものですが、そんなことには気付かず、すっかりアチラ側の方になっていらっしゃったのです。そして、この鈴木正人さんがどんな人物かを示す6年前の動画が次々と掘り起こされました。
まずは「支那の侵略から尖閣・沖縄を守れ!」というイベントで講演した時の動画です。この講演会では、沖縄の平和教育はおかしく、「日本軍に命令されて集団自決したことなどない」と歴史修正発言をしていて、沖縄タイムスの記者によって自分が悪者に仕立て上げられたという話をしています。鈴木正人さんは「新しい教科書を作る会」のメンバーでいらっしゃり、中国のことを「支那」と呼び、沖縄の言論空間はおかしいと訴えていらっしゃいます。
埼玉県議会では、朝日新聞が従軍慰安婦問題について誤報を流していたという話から始まり、従軍慰安婦がいかに嘘だったのかを訴える鈴木正人議員。同じ日本人として従軍慰安婦なんて存在しなかったと言いたい気持ちは分かりますし、僕もそんなことはなかったと信じたいですが、世界中が第二次世界大戦をはじめ、さまざまな戦争で起こった従軍慰安婦的な問題(従軍させなくとも戦地の原住民の女性が兵隊に襲われる問題など)を改善していこうという取り組みの中で、唯一、日本だけが世界の潮流に逆行し、「従軍慰安婦など存在しなかった」と言い張り、世界中から白い目で見られています。大阪市に至っては市長がネトウヨ化しているため、長年にわたるサンフランシスコ市との友好関係を解消する国際問題にまで発展しており、政治家たちの間で、こうした思想が蔓延しているのです。
そして、鈴木正人さんのブログは2012年から始まっているのですが、最初に投稿された内容が実に衝撃的でした。なんと、鈴木正人さんは森友学園の「塚本幼稚園」を視察し、教育勅語を暗唱する幼稚園児たちを大絶賛。「とにかく凄い!ここまでやったら気持ちいい!塚本幼稚園というスーパー幼稚園を視察させていただきました」と、籠池理事長とのツーショット写真も交えながら興奮気味に語っており、「朝の朝礼は国歌斉唱・教育勅語・五箇条の御誓文暗唱。元気な独自?の体操。とにかくみんな大きな声で元気一杯!」とまとめています。ネトウヨ議員だとは思っていましたが、まさか最終的に森友学園につながってしまうとは思いませんでした。
当時の籠池泰典理事長は、こうしていろいろなネトウヨ議員の視察を受けては絶賛されるうちに自信を深め、やがて安倍昭恵夫人を名誉校長に据えて、「安倍晋三記念小学院」なんてものを作ろうとしたのだと思います。2012年と言えば、まだ民主党政権時代ですが、この頃からネトウヨカルト化した議員たちは積極的に動いていたということになり、実はこのネトウヨ議員問題、最近になって注目されるようになってきたけれど、人々の関心が薄かっただけで、ずっと前から根深い問題だったと言えるのではないかと思います。
■ 新たに文部科学大臣になった柴山昌彦さんは埼玉8区
第4次安倍内閣で新たに文部科学大臣に就任した埼玉8区選出の柴山昌彦さんは、日本会議国会議員懇談会、神道政治連盟国会議員懇談会、みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会、創生「日本」、国際観光産業振興議員連盟(通称・カジノ議連)に所属しており、麻雀で言えば「跳満」級の役が乗っている香ばしい議員です。東京大学法学部卒のエリートでありながら、現在は「日本会議」をはじめ、すっかり「アチラの世界」に目覚めていらっしゃる議員の一人としてご活躍中です。本当にアチラに染まってしまったのか、それとも、ただずる賢く利用しているだけなのか、いずれにしても所属しているところはゴリゴリに香ばしいです。
そんな柴山昌彦さんは、就任直後に記者から教育勅語について質問されており、「同胞を大切にする、国際的協調を重んじるといった基本的な記載内容について現代的にアレンジして教えていこうと検討する動きがあると聞いており、検討に値する」と述べています。政府は2017年3月に「憲法や教育基本法に反しないような形で教材として用いることまでは否定されない」とする答弁書を閣議決定しており、どんどん教育勅語を広めていこうと考えているようですが、まったく新しいものを1から作るのではなく、あえて戦時中に使われていた「教育勅語」にこだわる理由は何なのでしょうか。このあたりがネトウヨカルト化するニッポンの象徴的な姿と言えるかもしれませんが、国会議員から県議会議員まで、様子のおかしい議員がたくさん選出されているというのが現実なのです。
■ 選挙ウォッチャーの分析&考察
日本の政治家がどれだけ「従軍慰安婦が存在しない」と言ったところで、確かに従軍慰安婦が存在したという証拠は各地に散らばっており、石垣島には今なお「慰安婦の家」がひっそりと残されています。そこには日本兵が列を作っていたという、地元のおじい・おばあの証言もあります。しかも、石垣島では韓国や北朝鮮から連れてこられた人だけでなく、島の貧しい少女たちも身を売られ、従軍慰安婦として日本兵に尽くしていたと言われています。世界中に散らばっている物的証拠を無視し、歴史を修正しようという人たちが議員になり、新しい教科書を作り、子どもたちに教育勅語を教え、現代に大日本帝国が復活させた気になり、なんだか強く勇ましい日本を取り戻したような気になって、「どうだ!」と言いながら喜ぶジジィたち。百歩譲って、老い先短いジジィたちが勝手に喜んでいる分には自由にしたらいいですが、子どもの教育にまで影響を及ぼすようになると、子どもたちの未来、それはやがて日本の未来にも影響を及ぼすことになり、カルトが日本の常識になってしまいます。日本を自画自賛するのも良いですが、もっと世界の国々と交流を深め、自分たちのポジションを見直した方がいいのではないでしょうか。[了]
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