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【選挙ウォッチャー】 大阪維新の会ファクトチェックチェック(#01)。

 先日、大阪府の吉村洋文知事が、あまりに「維新憎し」のデマが出回り過ぎているとして、大阪維新の会が党をあげて「ファクトチェック」に乗り出すことを発表し、良くも悪くも、多くの人をワクワクさせていました。というのも、吉村洋文知事は「イソジンがコロナに効く!」と言い出し、今でもその主張を引っ込めていないことから、「イソジン吉村」と呼ばれ、日本で一番ファクトチェックしてもらった方が良い知事だと思われているから。
 しかも、このファクトチェックは「大阪維新の会」について書き込まれたものを、第三者ではなく、当事者である「大阪維新の会」がやるというのです。これは「クラスのマドンナのA子さんのリコーダーがなくなった時、教室には僕しかいなかったので、僕がしっかりと検証します」と言っているようなもの。こんな奴に「持ち物検査をしますので、皆さんのカバンを見せてください」と言われても、「まずはオマエのカバンを見せろ!」なのです。
 当事者がお届けする、まさかのファクトチェック。その記念すべき第1弾が2月28日に公表されたのですが、その内容があまりにも衝撃的だったので、お伝えしないわけにはいきません。


■ ファクトチェックチェック(#01)

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 今回、大阪維新の会が「ファクトチェック」したのは、濃厚接触者となってしまい、自宅で隔離されることになった大阪市民のツイート。この大阪市民の方いわく、PCR検査の結果を教えてもらう連絡以外に、食料支援の話も、手続きの話も、体調を確認するような連絡さえもなく、まさに「放置状態」だったといいます。
 しかし、まず大前提として、これは「大阪維新の会」に対する誹謗中傷ではありません。吉村洋文知事が言うような「維新憎し」でツイートしているものではなく、あくまで大阪市の現状を嘆いているものに過ぎません。なのに、このツイートを「デマ」として扱い、ファクトチェックするというのです。脳味噌は大丈夫でしょうか。改めて、大阪維新の会がデマとして扱っているツイートを見てみましょう。

今日で濃厚接触者の私は自宅隔離が終了します。この間、PCR検査結果を知らせてくれた時の検査調整センターからの連絡(2/3)のみ。市からの食料支援やその他の手続き情報も無し。大阪市の保健所からはついに一度も連絡無し。正に放置状態。大阪市終わってる。

 大阪維新の会のファクトチェックでは、まず「自宅隔離」という言葉にアンダーラインが引かれ、次のように解説しています。

【POINT①】
・大阪市では濃厚接触者の皆様にはPCR検査を受けて頂き、陽性の場合は療養、陰性の場合でも14日間の自宅での健康観察を要請している。
・健康観察の期間は不要不急の外出を控えて頂くとともに、やむを得ず外出する際は公共交通機関の利用を控えること等を求めている。

 それを「自宅隔離」と言うのとちゃうんかい! どうやら大阪維新の会は、あくまで「健康観察」であって、これは「自宅隔離ではない」と言いたいようです。しかし、言い方なんてどうでもいいです。実際のところ、濃厚接触者に「2週間は自宅に居てください」と言っていて、これはさらなる感染を防ぐための「隔離」が目的なのですから、言っていることは何も間違っていません。「自宅隔離」と表現した人をデマ扱いするなんて、一体、どういう神経をしているのでしょうか。
 続いて、PCR検査の結果を知らせただけで、それからまったく連絡がなかったとツイートしていることには、このように述べています。

【POINT②】
・大阪市では濃厚接触者への健康観察について新型コロナウイルス感染症の流行当初は保健所等から毎日電話連絡にて健康状態の聞き取りを行っていた。
・しかしながら感染者数の爆発的増加に伴い、保健所等の業務量が膨大化し、業務の優先順位を検討した結果、保健所等が濃厚接触者に対して積極的に健康状態を聞き取る方式から、ご本人が異変を感じた際に保健所等に申し出て頂く受動型に切り替える判断を、大阪府において12月15日に行っている。
・その後1月8日に厚生労働省からも濃厚接触者の健康観察について保健所等と対象者が連絡を取り合う作業の効率化や自動化を行い、業務負担の軽減を図るよう各自治体宛に通達されている。

 大阪維新のファクトチェックでは、「PCR検査調整センターから結果を知らせる連絡があっただけ」という市民の報告に対し、「こちとら業務がいっぱいで、こっちから濃厚接触者に連絡を取らないことは12月に決めとんねん。1月8日には厚生労働省も作業を効率化するように通達を出しとんねん!」と言っています。
 しかし、こんなに失礼な話はありません。そもそも大阪市では、新型コロナウイルス対策よりも「大阪都構想」が優先されていました。大阪維新の会の議員たちは、連日、大阪都構想に賛成してもらえるように動いていて、まさに不要不急の住民投票を強行していたのです。それで感染者が増え、あちこちに手が回らないほど業務が膨大化してしまったのですが、「優先順位を検討した結果」として、「濃厚接触者には本人から申し出てもらうことにした」と言っているのです。
 これは相当に頭がイカれています。「放置された」と怒っている市民に対して、「当たり前じゃん、オマエの優先順位、低いんだし!」と言っているのです。「こっちは忙しいんだから、オマエの優先順位は低い」と平気で言ってのけるのは、もはやファクトチェックではなく、「ただの失礼」。神経が疑われてしまいます。
 続いて、「市からの食料支援がない」については、以下のように回答しています。

【POINT③】
・大阪市では濃厚接触者への外出自粛を要請しているが、日常的な買い物での外出は不要不急には当たらず、健康状態も無症状であることが健康観察の前提であるため、食糧支援等は行っていない。
・他都市においても大阪市と比較的人口規模が近く感染者の多い横浜市、名古屋市、京都市、神戸市、福岡市、札幌市について濃厚接触者への支援を調査したが、いずれも14日間の健康観察とできる限りの自宅待機をお願いしているが、濃厚接触者は自宅療養者ではないため、食料支援等は行っていない旨の回答があった。

 まず、どうして濃厚接触者が隔離されることになったのかという大前提を確認していただきたいのですが、濃厚接触者は無症状でも新型コロナウイルスに感染している可能性があり、発症していなくても飛沫からウイルスを出してしまっている可能性があるから、なるべく自宅に居てもらうという話です。できることなら日常的な買い物の回数も減らしてもらい、退屈かもしれないけれど、なるべく家に居てもらうことが推奨されるはずです。「無症状なんだから、買い物に行けばいいじゃん」と言うのであれば、そもそも自宅に居てもらう必要がなくなってしまいます。だから、本来は食料を支援した方がいいに決まっています。
 また、「他の都市でやってないから自分たちもやらない」というのは無能の言い訳です。他の都市でやっていないことを大阪市がやれば、大阪市は新型コロナウイルス対策をしっかりやっている自治体なんだということになったかもしれませんが、「他の自治体もやってないんだから文句を言うな」とツイートを晒し上げて文句を言うのは、ただ何もやらないよりもタチが悪いです。
 結果として、ただ現状を嘆いただけで、政党によって勝手に晒し上げられたあげく、「他もやってないのに、大阪市だけ悪者にするな!」と恫喝されてしまうのですから、大阪維新の会が支配する大阪市は、ただ食料支援をしていないだけの他の自治体よりも、圧倒的にクソです。
 そして、極めつけは「放置状態」だったということに対する大阪維新の会のファクトチェックが、こちらです。

【POINT⑤】
・健康観察期間は1日2回の体温測定を行っていただくとともに、ご自身で健康観察を行って頂くことを要請している。
・発熱や咳等の症状が出現したり、症状が悪化した場合は、区の保険福祉センター又は24時間対応の専用ダイヤルに速やかにお申し出頂き、市において検査や受診調整等の対応を行うこととなっている。
・発熱等の症状以外に、新型コロナウイルス感染症に関する不安やストレスを相談できる【こころの悩み電話相談】が開設されている。
・健康観察期間中に災害等が発生した場合の避難については自宅等での安全確保を第一としつつ、それが難しい場合に各区に指定の避難所を設置している。

 大阪維新の会によれば、濃厚接触者には「1日2回の体温測定をしてくださいとお願いしているので、放置しているわけではない」としています。体温を測るのはセルフですし、それを報告する場所があるわけでもないのであれば、それを「放置」と言うのではないでしょうか。
 しかも、濃厚接触者なのですから、実は感染していて、発症してしまう可能性は十分あるわけです。このツイートをしている市民は、「発症した時にはどうすればいいんですか?」という手続きの連絡もなかったと書いているので、これを「放置」と言わずして何と言うのでしょうか。せめて「万が一の時にはどうしたらいいのか。どういう流れになるのか」を説明する電話がかかってくるのが筋だと思いますが、何もしなかったばかりか、自分たちのオペレーションのクソさ加減をチェックする以前に、「オマエの言ってることはデマだから、ファクトチェックな!」と言って、ツイートを晒して「放置なんかしていない」と言い訳をかましているのです。
 これは、毎日のようにテレビに出演してアピールしまくる吉村洋文知事を見て「頑張っている」と思ってしまうような情弱な市民に、「なんやガタガタ言われているらしいけど、本当は大阪維新の会のみんなも、頑張っとんのやろ?」と言わせるための作戦です。ファクトチェックと称して述べていることを一つずつ丁寧に見ていったら、本当は何もできていないどころか、ただただ失礼のオンパレード。
 最終的に「こういうことを不安に思っちゃうのは、心が病んでいるからなのかもしれないので、我々はしっかり『こころの悩み電話相談』を設置していますよ」と言い出す始末。大阪維新の会が繰り広げている新型コロナウイルス対策に不安を感じるのは、心が病んでいるからではありません。
 ただでも、大阪市というのは新型コロナウイルスによる「死者数」が多い自治体なのです。どうして大阪ばっかり死者が多いのか。本当に検証しなければならないのは、どこかの市民のツイートではなく、自分たちの新型コロナウイルス対策がしっかりできているのかという話です。都合の悪いことをデマのせいにするのが「大阪維新の会」のやり方です。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

 政治に対して、文句や不満を言うのは、民主主義国家においては当然のことであり、大事な権利です。しかし、実質的に国政政党である「大阪維新の会」が、一市民のツイートに、ましてや、政治に対する不満をツイートしているだけで、デマの要素が一つもないようなものに対し、「ファクトチェック」と題し、まるで悪者のように扱うというのは、いかがなものかと思います。そもそも大阪維新の会は「ファクトチェック」の意味をわかっているのでしょうか。これは「ファクトチェック」ではなく、ただの言い訳に過ぎません。しかも、検証してみた結果、間違いらしい間違いはなく、どうして放置されてしまったのかを言い訳しているだけで、自分たちがどれだけ無能なのかを難しく説明しているだけだと思います。これは、大阪市民なんてアホばっかりなんだから、濃厚接触者を放置した理由を「もっともらしく」語っておけば、みんなが騙されて「大阪維新の会はちゃんとやっている」と思ってもらえるはずだということなのでしょう。要するに、連日、吉村洋文知事がテレビ番組に出演して、ドヤで精神論を語っておけば、新型コロナウイルス対策を頑張っているように演出できると思っているのと同じです。
 現在、大阪維新の会では、ファクトチェックしてほしいものを受け付けています。この調子で第2弾、第3弾を出すつもりのようなのですが、こうなったらファクトチェックとやらが出てくるたびに「ファクトチェックチェック」を出していかざるを得ません。頑張りましょう。

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