見出し画像

【選挙ウォッチャー】 古河市長選2020・分析レポート。

11月22日告示、11月29日投開票で、茨城県の古河市長選が行われました。この選挙は「自民・公明推薦の現職vs維新推薦の元職」という、とても珍しい構図で、お互いに相手のことをディスり合う壮絶な選挙となりました。地元選出の衆議院議員が中村喜四郎さんで、今は立憲民主党の議員になったとはいえ、もともとは自民党だった重鎮であり、ここもまた圧倒的な保守地盤です。自民・公明が推薦している時点で強く、茨城で日本維新の会はそれほど勢力を拡大しているわけではありません。

画像1

針谷 力   59 現 自民・公明推薦
菅谷 憲一郎 68 元 無所属(維新推薦)

古河市は、宇都宮線が上野だけでなく、東京や品川、池袋や新宿などに延伸するようになってから交通の便が良くなり、さらには高速道路もあることから、東京の新たなベッドタウンとして注目されるようになっています。それでも駅前は寂れており、注目されていることは注目されているけど、いまいち盛り上がりきれていない状況です。少子高齢化が進む中で、駅前再開発にゴリゴリにお金をかけていくのか、それとも、このまま緩やかに衰退していくのかが問われています。


■ 飛び交ったとされる怪文書の正体

古河市長選は、現職がかなり有利だろうと見られる中、対抗馬が「元職」であることや日本維新の会がバックについていることから、隙を見せたら負けてしまうという危機感があったのか、とにかく現職が元職をディスりまくるというダーティーな選挙となりました。こうなってしまった一因に、元職の菅谷憲一郎さんの陣営が撒いているチラシの存在があったのですが、現職の針谷力さんはこれを「怪文書」と呼んでいました。僕は実際に、その「怪文書」と呼ばれているものを入手することに成功したのですが、中身を読んでみると、これを「怪文書」と呼ぶのは適切ではありませんでした。

画像18

画像19

例えば、市民オンブズマンと一緒に針谷力さんの公約を検証しているチラシがあるのですが、針谷市政に対する評価がすべて「C」「D」になっていて、「A」「B」が1個もない非常に厳しい内容でした。しかし、これを「怪文書」と呼べるのかと言ったら、僕は「怪文書」とは呼べないのではないかと思います。もう少し甘い評価をしてあげても良いのではないかと思いますが、市民オンブズマンの方々がちっとも納得してくれないことに文句をつけてもしょうがありません。かつては市長をリコールで引きずり下ろしたことのある厳しい市民たちなのですから、どれだけ厳しい評価を下されたとしても、それはそれです。

画像20

画像21

これも菅谷憲一郎さんを市長にするため、市政のダメなところをコツコツとまとめたのだと思いますが、針谷力さんはこうした批判に耳を傾けてこそ良い政治ができるという話なので、一つ一つどうなっているのかを説明するぐらいでなければ「仕事ができる」とは言えません。市政の問題点を指摘されて「怪文書」だと言って、まるですべてがデマであるかのような扱いにするのは、いかがなものかと思うのです。

画像22

画像23

このチラシに書かれていることはすべて「市政」について。市長のプライベートな部分を誹謗中傷するようなものではありません。一般に「怪文書」というのは、真偽の判断がつかないような怪しい情報が載っているもので、例えば、「市長が不倫をしている」とか「市長がセクハラをした」とか、証拠もなく、真実を確かめようと思っても曖昧なものだと思うのです。政策や行政運営の手腕を問うものを「怪文書」と呼ぶのは適切ではありません。市長にも市長なりの言い分があると思いますし、一部は誤解や事実誤認なのかもしれませんが、やはり「怪文書」と呼べるものではありません。こういうチラシを撒かれるのは現職にとっては痛いのかもしれませんが、このような政策論争は絶対的に大切なので、「デマ」とか「怪文書」ということで片付けてしまう文化は非常に危険だと思います。針谷力市長には、次の4年間で市民オンブズマンから高い評価をしてもらえるぐらいの活躍を期待したいところです。


ここから先は

6,550字 / 19画像

¥ 340

いつもサポートをいただき、ありがとうございます。サポートいただいたお金は、衆院選の取材の赤字分の補填に使わせていただきます。