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【選挙ウォッチャー】 釜石市議選2023・分析レポート。

 8月27日告示、9月3日投票で、岩手県の釜石市議選が行われました。
 定数18に対し、21人が立候補する選挙となったのですが、この選挙の一番の注目は、何と言っても、蓮舫さんの元夫である村田信之さんが立候補したことだと思います。早稲田大学の教員として働き、政治ジャーナリストとしても活躍してきた人が、なぜ釜石市なのか。
 釜石市は、陸前高田市や大槌町などに比べると、まだ被害がマシだったと思いますが、それでも大きな被害を受けていることには変わりがなく、今も復興半ばです。

 人間のつながりというのは、なかなか面白いもので、東日本大震災をキッカケに、こうした被災地と交流を持ち続けている人も少なくありません。
 僕も被災地で何度もボランティアをしたことがありましたが、僕は津波の被災地よりも「放射能の被災地」に関わりを持つことが多く、釜石市に行ったことはありますが、地元の方々との交流はあまり生まれませんでした。ただ、村田信之さんのように移住する人たちもいて、12年経って、ほっこりするエピソードも生まれつつあります。


■ 釜石市議選・選挙ボード紹介


■ 汚染水問題解決のために考えるべきこと

 福島第一原発の後処理を、どうするべきなのか。
 実は、その答えはもう出ています。なぜ僕たちは汚染水の海に放出しなければならないのかと言えば、デブリを冷却するためにかけた水や、デブリをかすめて出てくる水が汚染されているからです。僕たちは今、汚染水をどう処理するかで悩んでいますが、そもそも汚染水が出なければ、こうした悩みからは少し解消されます。
 現在、東京電力は「凍土遮水壁」なるものを使い、地下水の流入を防いでいるとされていますが、現状は防ぎきれているとは言えません。そこで取るべき対策は、チェルノブイリと同様に「石棺」です。
 僕たちは新技術を確立し、いつかデブリを取り出す構想を練っています。しかし、仮にデブリを取り出すことに成功したとして、そのデブリをどこに処分するのかということは決められておらず、その処分場をめぐって、また賛成する人と反対する人で分断が起こることは火を見るより明らかです。今の日本が右肩上がりの国で、「街の発展のために、デブリを受け入れて巨額の原子力マネーを手に入れるんや!」という昔のようなことは、もうできません。仮に巨額の原子力マネーを手に入れて、綺麗な公園ができたところで核のゴミ箱に手を挙げるような自治体に人が移住するはずもなく、誰も遊ばない公園ができるだけです。

 例えば、青森県の六ヶ所村は、たくさんの原子力関連施設で溢れていますが、それで六ヶ所村が最高の住みやすい町になっているかと言えば、まったくそんなことはありません。原子力以外の基幹産業は「農業」で、村民の多くは、けっして高い所得を得られているとは言い難く、村にはコンビニが数軒ある程度で、立派な公園がありますが、遊んでいる子どもを見たことはありません。
 そもそも日本全国でデブリを受け入れるような自治体が存在するはずもないし、それ以前に「デブリを取り出す」ということ自体が、現段階ではほぼ不可能であるということです。新技術を開発して、それが可能になることはあるかもしれませんが、「いつまで待てばいいのか」は不明で、その間はずっと汚染水を垂れ流し続けなければなりません。処理をして放出しても、また新しい汚染水が生まれ、また処理をして放出するを繰り返す。まったくもって「終わり」が見えてきません。いつになるのかが分からないデブリを取り出すまで、ずっと「処理水」と名付けた水を海に流し続けなければなりません。考えて見たら、けっこうバカらしい話だと思うのです。
 確かに、机上では理想的な話かもしれません。デブリを取り出し、しっかりと管理できる最終処分場に埋め、福島第一原発の周辺を完全に安全な状態に戻し、もう一度、人が住めるようにする。できることなら、そうでありたいという気持ちは理解できます。しかし、これを進めるためには、絶対的な大前提があります。それは「人口が増えていること」です。
 人口が増えていれば、人々は住む場所を求め、家賃の高い東京や大阪といった都市部を離れ、郊外で暮らすという需要も生まれます。人口が増えていれば、人の集まるところに商売が生まれ、やがて産業が生まれます。ところが、人口が減っている状態では、街の発展性が見込めません。そこにお店を出したところで、買い物に来てくれる人が限られているので、商売が成り立たないからです。今、頑張ってくれている地元のスーパーが赤字に転落した時には、その町から買い物できる場所がなくなり、新たに人が住むことはあり得ません。
 めちゃくちゃ悲しい現実を突き詰めれば、人口が増えている状態なら、わざわざ双葉町や大熊町に移住するような人がいたかもしれませんが、人口が減っている状態では、あえて双葉町や大熊町で暮らす人たちは、そう滅多にいるものではありません。廃炉作業のために来る人はいるかもしれませんけど、ちょっと森に行けば高線量な地域に、わざわざ子どもと一緒に移住する人がいるのかという話です。
 現実的なところを考えた時に、過酷な原発事故が起こり、デブリを取り出して、デブリを埋める場所を見つけたとして、果たして、双葉町や大熊町に人が戻り、さらには、原発事故以前の賑わいを取り戻すことができるのかという話になってこようかと思います。「諦めろ」というのは、かなり乱暴で残酷な言い方ですが、もう少し現実的な視点で物事を考えなければ、無駄にお金を使い、海洋汚染を広げ、将来的な水産価値を下げるだけになってしまうのではないでしょうか。日本の資産はどんどん損なわれています。


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