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【選挙ウォッチャー】 伊東市長選2021・分析レポート。

5月16日告示、5月23日投開票で、静岡県の伊東市長選が行われたのですが、これがまたなかなか香ばしい結果に終わりました。言うまでもありませんが、伊東市は温泉などがあって、東京をはじめ、一都三県で暮らす人たちにとっては、非常に馴染みのある観光地です。昔は文豪が原稿を書くために籠っていたような場所ですが、今でもコロナがなければ、家族やカップルで思い出を作るために訪れる場所です。

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小野 達也 58 現 2期目を目指すゴリゴリ市長
石島 明美 53 新 フィットネススタジオ経営

2期目を目指す小野達也さんは、長らく県議として活躍し、地元市議たちにも応援されているゴリゴリの自民党のオッサンで、一応は政治経験があるというオッサンです。一方、石島明美さんは「普通の主婦」です。政治経験があるわけではないけれど、「これではダメだ!」と立ち上がりました。ごくごく普通の庶民の目線を持ち、コロナ禍という非常事態で「伊東市をどうにかしたい」という気持ち一つで立候補したテイになっていますが、実はそこには裏があります。常識的に考えれば、組織力や地元のコネクションが豊富な現職に、そこらへんの素人の女性が勝てるわけがないというところではあるのですが、あえて挑戦したのは市議として活躍する夫の代わり。自分が出てくるべきじゃないのかという話です。


■ コロナはバカを炙り出す

菅義偉総理大臣が「7月末までに終わらせる」と言ったせいで、無理矢理にスケジュールが組まれ、高齢者のワクチン接種がかなり強引に進められているわけですが、準備期間があったわけでもなく、「よーいドン」で始められたプロジェクトであるため、あちこちで混乱が起こり、市長の能力が試されることになりました。最も多いトラブルは、ワクチンのキャンセル分をこっそり市長が打っていたというもので、市民に先駆けて市長が抜け駆け接種していたことが問題になりました。もっとも、市長は予期せぬ災害などが起こった時に陣頭指揮を取らなければならないため、新型コロナウイルスで寝込んでいる場合ではなく、エッセンシャルワーカーと同じ位置付けでワクチン接種されるべき人ではあると思いますが、「こっそり打っている」というところに批判が集まっていました。しかし、この伊東市で起こった問題は、市長が抜け駆けでワクチン接種をするよりも圧倒的に深刻で、まさかの「予約受付の裏電話番号」が存在し、こっそり裏の番号を知っている人だけが予約をできたという、前代未聞のとんでもない大問題。表向きは市の担当職員が勝手にやってしまったことだということですが、地元の伊豆新聞の調べで、この裏ダイヤルの存在を副市長も知っていたというのですから、市長にも責任が生じる問題です。皆さんに公表しているダイヤルだと回線がパンクして全然予約が取れないんだけど、知る人ぞ知る裏ダイヤルに電話をかけると予約ができる。こんなに公平性に欠けたクソ事件は滅多にあるものではありません。これは「スギ薬局」の会長夫妻が優先的にワクチン接種をしてもらうように働きかけたみたいな話が非常にかわいく見えるレベルの、極めて悪質な事件です。普通は、こんなにイカれた事件が起こった時点で、市長のクビが飛ばなければならないのですが、伊東市では現職が2期目を決めたのでした。


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