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【選挙ウォッチャー】 NHKから国民を守る党・動向チェック(#250)。

 選挙は連敗、裁判も連敗、不正競争防止法違反や威力業務妨害、脅迫罪で起訴をされ、刑事裁判を待つ身であるばかりか、5億円以上の巨額の借金を抱えている男、「NHKから国民を守る党」党首・立花孝志。
 実情を知れば、およそ支持できるような存在ではなさそうに見えるが、彼には多くの熱狂的な支持者がいる。今なお、立花孝志が何かをやってくれるのではないかと期待しているのだ。
 なぜ、そこまで立花孝志を信用できるのか。
 それは、立花孝志がNHK時代、高卒入社ながら、あまりに能力が高すぎるがゆえ、記者、経理、会長秘書などを歴任し、あの空前の大ブームを巻き起こした「冬のソナタ」を買い付け、ある時は当選確実の速報を打つためのシステムを開発し、ある時は会長の指示で巨額の裏金作りを任せられていたという「スーパーサラリーマン伝説」があるからだ。
 しかし、その話をよく聞いてみると、何をもって「冬のソナタ」を買い付けてきたことになっているのかが全然わからない。

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 立花孝志は、10月27日にアップした「【取材申込】選挙ウォッチャーちだいに直接取材申込、その結果は?」という動画で、『冬のソナタ』を買い付けてきたことについて、以下のように語っている。

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「で、彼が今日も彼のツイキャスをちょっと5分ぐらい聞いてたら、例えば俺がその『冬のソナタ』を買ってきたっていうことについて、なんかそのいわゆる韓国、韓国っていうのかハングルっていうのか、それをわからないとか。いや、もう、いかに彼が調べていないかっていうのがよくわかるんだけど、あの、べつに俺は、『冬のソナタ』を買ってこいと言ったわけじゃなくて、何かソフトを買ってきてくれと。もっと明確に言うと、NHKの委託会社の、委託会社、関連会社のMICO(マイコ)っていう国際メディアコーポレーションという会社に、カワムラヒロシさんっていう人を出向させる。転籍だね。で、この人に2000万円ほどの人件費がかかるから、そのMICO(マイコ)というNHKの関連会社に2000万円を儲けさせなきゃいけない。そのために、じゃあ何かソフトを買ってきてくれと。それはアメリカでも韓国でもいいよと。それ1億円で買ってきてくれたら、20%の管理費、いわゆるMICO(マイコ)の利益を乗せて払うから、1本でも10本でも何もでいいから、その、外国でも国内でもいいから何かソフトを買ってきてくれとお願いして、1億円分のものを1億2000万円で買うと。その2000万円をカワムラさんの人件費に充ててくれと。このことを『冬のソナタ』を買ったのは俺だと言っているわけ。現に『冬のソナタ』がバーンとヒットしたから、MICO(マイコ)の担当者から、あの、六本木の焼肉をオゴってもらったりとか、赤坂でキャバクラ紹介してもらったりとか、そういうことをしているっていうだけの話」

 実に衝撃的な話である。
 普通、「『冬のソナタ』を買い付けてきた」と言ったら、韓国のテレビ局と交渉をして、巨額のお金を動かし、放映権を手に入れることである。あるいは、韓国で放送されているテレビドラマを隅々までチェックし、「これはヒットの可能性がある」と目利きした作品を、然るべき担当部署に紹介する仕事を意味するだろう。
 しかし、立花孝志が言うところの「『冬のソナタ』を買い付けてきた」というのは、NHKの職員がMICOに転籍することになり、その人件費を捻出するために、「何でもいいからコンテンツを買ってきてくれ」と指示を出した(もしかしたら上司の命令でメールのやり取りをしたぐらいなのかもしれない)のが立花孝志であり、結果としてMICOが『冬のソナタ』を買い付けてきて、それが空前の大ヒットになったので、「『冬のソナタ』を買ったのは俺だ」という話になっている。
 これは「冬のソナタを買い付けてきた人」になるのだろうか。
 例えるなら、自分は昔から日本ハムファイターズのファンで、何度もスタジアムに足を運び、日ハムにはお金を落としている。そんな日ハムがドラフトで大谷翔平という選手を引っ張ってきて、今ではすっかりメジャーリーガーとして大活躍するようなスター選手になった。「大谷翔平を育てたのは俺だ」である。
 しかし、NHKから国民を守る党を熱狂的に支持する「N国信者」たちのリアクションは、そのスーパーサラリーマン伝説を称えるものばかりだ。

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「立花孝志氏がNHK職員時代に『冬のソナタ』のBS2放送を勧めたことで日本の韓国ドラマブームが始まったんですか。そっちの話の方を知りたい。#オプエド」

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「冬のソナタの仕入れ人が立花孝志だって! 先見の明があるんかな? とりあえず面白い人だ」

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「この立花議員が元NHK幹部で韓国ドラマの冬のソナタを輸入したり、日本の放映権を守る為に電通と競い合ってた海老沢会長を引責辞任に追い込んだ張本人です。NHKの巨大な裏金作りなので週刊誌をにぎわしたコトを憶えていませんか? あの時に雑誌社に内情をリークして現在の電通傘下のNHKの引金を引いた人」

 元の話は、とても「『冬のソナタ』を買い付けてきた人」とは言えないようなエピソードにもかかわらず、なぜか「N国信者」と呼ばれるNHKから国民を守る党の熱狂的な支持者たちが語れば、壮大なスケールの話に早変わりしてしまう。
 「高校生の頃、広瀬すずちゃんが好きだった」という話が、「広瀬すずちゃんはもちろん、吉岡里帆ちゃんから白石麻衣ちゃんまで、全員、俺の元カノだ」に変わるぐらいの変化である。
 なお、立花孝志の自伝ムック本「立花孝志かく闘えり」によれば、立花孝志は1998年7月に「NHK本部報道局スポーツ報道センター(企画・制作)」に異動となり、2004年7月に「本部編成局(経理)」に異動したことになっている。
 日本に一大韓流ブームを巻き起こした「冬のソナタ」が韓国のテレビ局で放送されたのが2002年、NHK-BSで放送されたのが2003年、地上波のNHKで放送されたのが2004年4月。その頃、立花孝志が在籍していた部署は「スポーツ報道センター」ということになる。
 実際、立花孝志は2002年のソルトレークシティ五輪で裏金を作ったと告白しているのだが、スポーツ畑の人間がMICOに対し、「ドラマのコンテンツを買ってこい」という指示を出したというストーリーは、にわかに信じがたい。というのも、海外ドラマの購入などを担当している部署は「編成局展開戦略推進部」であり、「報道局スポーツ報道センター」ではない。まったく異なる部署の人間が、なぜ指示を出すのだろうか。


■ 立花孝志は「記者」でもあり「秘書」でもある!?

 立花孝志は、高卒採用で和歌山放送局の庶務部に入局した後、経理や編成などを経て、2005年に週刊文春に内部告発をして退職したことになっている。なんと、立花孝志の自伝的ムック本を見ても、NHK時代の年表から記者や秘書だったことを示す所属先は見当たらない。
 しかし、10月19日の動画では、記者や秘書だったという自身の経歴について、自信満々にこう述べている。

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(04:54~)
「だからその、NHKの、立花がNHKに入ったことについては、彼はそこは否定さすがにできへんからしてないんだけど、そこで記者職をしてたとか会長秘書をやってたとかっていうことについては、彼はそれがもう、妄想、立花の嘘だと思い込んでるわけよね。いや、でも、それだったら俺、NHKに訴えられるじゃん。そんな、そんなやってもないことをさ、もうバンバン、俺、だってNHKの内部で麻雀、賭け麻雀してたり、セックスしてたり、そのね、飲酒してたりって堂々と言ってるわけで。そんなのが嘘だったら、俺、とっくにNHKから名誉毀損で訴えられるわけよ。俺、そのへんに関しては何一つそりゃ嘘を言ってないからね」

 立花孝志のロジックは、「記者」や「会長秘書」をやっていたというのは本当で、本当だからこそNHKから訴えられないというものだ。しかし、NHKを辞めてずいぶん経つような人間がさまざま盛った話をしているからといって、いちいちNHKが訴えるだろうか。こんなもの、数十万円やら数百万円の弁護士費用をかけてまで訂正するような話ではない。いくらたんまりお金のあるNHKだとしても、こんなにショボい裁判の弁護士費用はもったいない。つまり、「訴えられていないのだから本当だ」ということには何の説得力もないのである。
 しかし、私を詐欺罪で刑事告発しようと警察署に行ったものの、まるで相手にしてもらえず、腹いせに私の自宅を「取材」と銘打ち、このご時世にマスクもせずにアポなしで訪問したあげく、その自宅をモザイクもかけずに動画で晒すという愚行に及んだ立花孝志は、インターホンを押したまではよかったものの、家の中から刑事が出てくるサプライズを喰らい、アドレナリンが出てしまったのか、NHK時代の仕事について、こう述べている。

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(10:58~)
「僕はNHKの記者じゃないだろうって言われたから、僕は記者だとはっきり言ってます。もう、そんなん僕がNHKの記者じゃなかったら、とっくにNHK側から訴えられてる、訴えられてるじゃないですか」
(22:16~)
「例えば、僕が記者でないっていうのも、NHKに確認したんですか。NHKに1本手紙を送って、手紙で回答してもらわないと、電話だったらいくらでもNHK言いますよ。僕のことを知らないわけだから。立花がNHKで記者の仕事をしてたのかについて、正式に文書で回答もらってもらえれば、もし僕が記者じゃないとNHKが回答したら、僕はNHKを今度訴えます。僕は報道局にもいましたし、『冬のソナタ』の買い付け行ってこいって言ったのも僕です。間違いないです。会長の鞄持ちもしてましたよ」

 立花孝志は今、確かにきっぱりと、記者であり、『冬のソナタ』を買い付けてこいと指示をした人間であり、海老沢会長の鞄持ちをしていたと断言した。
 既に『冬のソナタ』については、スポーツ報道センターの立花孝志が「何でもいいからコンテンツを買ってこい」と指示を出したところ、MICOが韓国から『冬のソナタ』を見つけ出してきたという話になっていて、このエピソードをもって「『冬のソナタ』を買い付けてきた人」と言っていいのかどうかは、かなり怪しくなっているが、記者と海老沢会長の鞄持ちについては、まだ可能性は残されている。
 特に気になるのは、やはり「記者だった」という主張である。もし、立花孝志の言うことが本当だと仮定すると、職種別採用をしているはずのNHKが、立花孝志に限って、所属部署の枠を超え、記者をさせたり、経理をさせたり、秘書をさせたりと、東大卒やら京大卒やらのエリートたちを差し置いて、偏差値38の信太高校卒のオッサンを大抜擢していたことになる。N国信者たちは「能力が高いんだから当たり前だ!」と思うかもしれないが、果たして、小学1年生で習うような漢字さえ間違えてしまう立花孝志に、記者という大役を任せられるのだろうか。なにしろ、最近も安倍晋三前総理の事情聴取についてデマを流しているほどである。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

 もし立花孝志が「NHK時代に記者職であったことはない」となれば、これは大事件である。なにしろ、これまで立花孝志は葛飾区議選や堺市長選の選挙公報に「記者だった」と書いているからだ。記者でなければ、公選法第235条の虚偽事項公表罪にあたる可能性が出てくる。
 あらかじめ書いておくが、「記者」というのは「記者職」のことだ。例えば、記者はインタビューをする時にボイスレコーダーで音声を録音したりするが、それと同じことをしたからといって「記者」にはならない。これはそこらへんのオジサンが東大の赤門をくぐって「東大に入りました」と言ったところで、東大に入学したことにはならないのと同じである。
 立花孝志に期待する人たちは、時に「記者」として活躍した立花孝志だからこそ、何かやってくれるのではないかと考えているはずだ。しかし、本当は記者でも何でもなく、ただ弁当を発注するような仕事をしているオジサンだったらどうだろうか。
 いよいよ立花孝志が並べてきた「スーパーサラリーマン伝説」が音を立ててぶっ壊れる日が目の前に迫っている。メリークリスマス!

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