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【選挙ウォッチャー】 緊急事態宣言を解除した先に明るい未来はあるのか。

 3月21日、菅義偉政権は感染者が再び増加傾向にある中で、「緊急事態宣言」を解除しました。一説には、打てる手を打っても下がらないので、これ以上の緊急事態宣言には意味がないということで、解除に踏み切ったと言われています。
 しかし、本当に打つ手はないのでしょうか。
 海外に目を向けてみると、感染力の高い変異株の影響で、どこも苦戦を強いられているのですが、さまざまな工夫と政策で新型コロナウイルスの封じ込めに成功している国もあって、例えば、クーデターの真っ最中であるミャンマーでは封じ込めにほぼ成功。ベトナムでも小さな山を何度か経験しながらも、今は感染者が少ない状態にあります。いずれも「経済力」という点では日本よりも劣るはずの国ですが、新型コロナウイルス対策という点では日本より圧倒的に優れています。
 ただ、海外の話をすると、「気候が違う」とか「人種が違う」とか、いろいろな言い訳を並べて「日本ではできない」と言う人がいるので、今日はあえて日本国内の新型コロナウイルス対策に目を向けたいと思います。


■ 仕事をする知事なら感染者は少ない傾向

 まず、私はこの記事を書く前に47都道府県すべての知事の仕事ぶりをチェックしました。当然、仕事をしている知事がいれば、仕事をしていない知事もいて、例えば、宮城県のように「GoToイート」キャンペーンの再開などというクソ政策をやってしまうと、一気に感染者が広がり、宮城県だけは緊急事態宣言を出さないといけなくなりました。
 しかし、知事がちゃんと仕事をしている都道府県は、相対的に新規感染者が少ない傾向にあり、こうした動きを見ていると、「打つ手はまだある」と思わされます。
 実は、新型コロナウイルス対策は、各都道府県に仕事が任せられているため、ちゃんと仕事をしている知事の所は感染者が少なく抑えられ、ちゃんと仕事をしていない知事の所は感染者が多い傾向にあるのです。
 今回は、新型コロナウイルス対策に関しては、しっかりとした仕事をしていると思われる7人の知事をピックアップ。その仕事ぶりから、まだ打つ手があるということを学びたいと思います。


■ 岐阜県:古田肇知事

保守分裂となった1月の岐阜県知事選では「コロナはただの風邪」のバカ候補を破って知事の椅子を守った。人の往来の激しい愛知県と連携し、愛知県と共同で緊急事態宣言を発令するなど、どこが感染源になっているのかをよく理解している。独自に非常事態宣言を発令したり、飲食店の自粛を呼び掛けたり、自分で考えて手を打っている。第1波の大流行前に厚生労働省とPCR検査キット獲得を目指して交渉を開始するなど、高い危機意識を持って動いており、予算を組みかえて新型コロナウイルス対策に充てるなど、柔軟に対応している。国の指示を待つことなく、率先して感染防止に動いているため、知事としては「仕事をしている」と評価できる。こうした動きは、かつて蔓延した豚コレラの教訓も生かされているという。


■ 福井県:杉本達治知事

全国初となる軽症・無症状感染者向けの一時政策施設を作ったり、発熱外来を設置してPCR検査を実施したり、第1波のマスク不足の時にはマスク購入権を配布したり、手当のない労災非適用の小規模事業者に一律10万円の給付をつけたり、知事の給与をカットしてコロナ財源に充てたり、県独自の政策を次々と打ち出し、医師が選ぶコロナ対策を評価できる知事ランキングで堂々の1位を獲得。SNSでも「福井県は封じ込めよう」とポジティブなメッセージを発信し、県民の士気を高め、さまざまなアプローチでコロナ対策に取り組んでいる。隣の石川県とは雲泥の差である。


■ 和歌山県:仁坂吉伸知事

全国で初めて病院でクラスターが発生した際も、即座に対応して制圧に成功している。積極的にPCR検査を実施する「和歌山モデル」を確立。疑わしきはPCR検査という素晴らしいモデルで、夏から秋にかけて地元経済の持ち直しは全国随一。変異株についても調査をすると発表。国の方針には従わず、軽症者でも入院できるように努めたほか、退院後の後遺症対策にも乗り出している。経済を守るためにも早期発見と早期隔離が大切であることをメッセージとして発信しており、全国で最も新型コロナウイルスに対して意識の高い知事である。最悪の大阪に近いという土地柄、大阪からの流入によって感染者は発生してしまうが、それでもしっかり対応している。


■ 鳥取県:平井伸治知事

感染者が少ないうちに病床数を増加させ、院内感染を防ぐドライブスルー式のPCR検査を一早く導入。演劇などの文化を守るために無観客開催には助成金を出し、やむを得ない事情で他県から鳥取県に流入した人には外出自粛を要請。甲子園が中止になった時には、高校生のために県独自の大会を用意した。和歌山県と同様、「疑わしきは検査」を徹底し、感染者の早期発見と隔離によって、全国トップクラスの感染対策を実現。全国的に新型コロナウイルスが蔓延する中にあっても、鳥取県は感染者0人の日が続く。どこよりも早く県庁にコロナ対策のチームを立ち上げて組織してきたため、日本で最も感染リスクの低い県の一つとなっている。


■ 島根県:丸山達也知事

東京五輪の聖火リレーに対して苦言を呈したことで一躍有名になったが、現在までに2月23日を最後に3月14日まで感染者が確認されず、0人の日を更新していた。銀行や教習所などでクラスターが発生するも、限定的に封じ込めることに成功。47都道府県で唯一、死者を出していない都道府県となっている。見事に安全なバブルを作り出すことに成功しており、聖火リレーに苦言を呈す理由はよく分かる。県民の命と健康、そして経済を守るためには新型コロナウイルスを蔓延させないことが何より大切であることを十分に理解しているからこそであり、結果を残していることからも素晴らしい知事であると言える。


■ 愛媛県:中村時広知事

高齢者施設などを対象とするスクリーニング検査を大阪府より早く実施すると発表しており、検査には積極的である。本州と離れており、首都圏との往来がそれほど多いわけではないため、四国では全体的に新規感染者が少ない傾向にはある。9月入学が議論された時には、真っ向からド正論の反対意見を述べて一躍有名に。国に対して苦言を呈すことも多い。医療従事者に応援手当金の支給を盛り込むなど、他にはない独自の政策もあった。コロナ対策で給与を返上したこともある。飛沫防止などに補助金を出すなど、丁寧な対応をしている。


■ 熊本県:蒲島郁夫知事

第4波に備えて病床数を大幅に増やすなど、先手の対応をしている。年末年始は帰省の自粛を呼びかけ。宿泊療養施設も3棟目を建設。感染源である繁華街をピンポイントで指定して時短営業を要請するなど、エピセンターをしっかり抑える対応で乗り切ることに成功。年始は大変だったが、現在は封じ込めつつある。国にはとにかく休業補償を求めていて、国に相手にされなくても独自に緊急事態宣言を発令。地震、豪雨、コロナの三重苦に苦しめられる過酷な環境にありながらも、どうにか最善を尽くしている。


■ 仕事をしている知事に学ぶべし

 しっかり仕事をして、感染の広がりを抑えることに成功している自治体の知事たちには、いくつかの共通点があります。
 まずは、積極的にPCR検査を実施し、「早期発見・早期隔離」を大切にしていること。「疑わしきはPCR検査」が常識になっています。無症状者や軽症者でも入院させたり、あるいは専用の隔離施設を確保したり、なるべく無症状者や軽症者にも手厚いサポートが行き渡る体制を整えようと努力をしています。
 次に、どこが感染源になっているのかを理解し、人の流れを把握し、エピセンターを止める努力をしていること。感染源になっている所には移動しないように呼び掛けをしています。秋田県のように「東京に行くな」の一言で感染を防止できているような自治体もあります。感染の流れを追えているので、「会食の時間は2時間まで」とか「マスク会食をすればいい」などという、科学的根拠ゼロに等しい話や奇天烈な作戦を語る人はいません。
 最後に、限られた予算の中で可能な限り、いろんな補償を出そうと努力をしていることもあります。どこも苦しく、多くの都道府県には潤沢に予算がありませんので、十分な補償ということにはなっていないかもしれないのですが、それでも何かしらの補償を出そうと努力をしています。
 今回、各知事の仕事ぶりをAランクからFランクまでで評価をしてみた時に、Aランクをつけられたのは7名、Bランクが6名、Cランクが7名、Dランクが9名、Eランクが14名、Fランクが4名でした。かなり甘めに評価をしたつもりですが、半分より上の知事が20人、半分より下の知事が27人。新型コロナウイルス対策に関しては、あんまり仕事をしていない知事が大半です。それでも仕事をしている知事はいるのですから、そういう知事のやり方を少しでも参考にしていけば、もっともっと新型コロナウイルス対策を強化でき、感染者を減らし、死者を減らすことができると思います。


■ このタイミングで緊急事態宣言を解除すること

 よりによって、3月21日という年度末の最も警戒しなければならないタイミングで「緊急事態宣言」を解除したことは、愚策中の愚策であると断言したいと思います。
 なぜ第3波が非常に大きな山になってしまったのか。それはクリスマスや忘年会などで、みんながひっそり飲みに行ったり、遊びに行ったりしてしまったからに他なりません。実際、全国各地で市長や知事、議員たちがこぞって「おつかれ会」を開催して問題になり、市民から監視されているはずの議員ですら、こっそり飲食しているということは、民間の人たちはもっと飲食をしています。その結果が、1日に8000人近い新規感染者が出るという地獄を作り出しました。年明けの地獄っぷりと言ったら、それはそれは凄まじいもので、どこも病院がパンク寸前。ほぼ医療崩壊状態に陥っていると言っても過言ではありませんでした。本来は入院して管理されるべき患者たちが病院に入れてもらえないようなことまで起こっていたのです。
 あの時は、年末年始に緊急事態宣言が発令されていたにもかかわらず、あれだけの地獄が広がったのです。最近は総務省の官僚を中心に、永田町や霞が関界隈の人たちの記憶が次々になくなるという不可解な現象が起こっていますが、こちらはつい3ヶ月前の話です。今度は暖かくなるとはいえ、みんながお花見に出かけ、会社の決算も多い年度末、卒業シーズン、歓送迎会シーズンに緊急事態宣言を解除し、口では「気を付けてくださいね」と言いながら、政府が自由に出歩くことを「OK」と言っているに等しいわけですから、これから地獄が広がらないと考えている方がおかしいのです。
 ましてや、今、日本に広がりつつあるのは、感染力の高い変異株です。感染力が高いので、いくら青空の下、桜の木の下とはいえ、マスクなしで飲食をすれば感染してしまうリスクは上がります。民間のPCR検査センターが増えて、都会なら2500円ほどの価格帯でPCR検査が受けられるようになってきたとはいえ、PCR検査をしてから飲みに行く人なんて、ほとんどいません。けっして検査体制が十分とは言えない中で、なぜその先の未来を見通すことができないのでしょうか。
 菅義偉総理大臣をAランクからFランクで評価するなら、それは紛れもなく「Fランク」ということになってしまうのではないでしょうか。仕事のできる知事に変わってもらった方がマシなレベルです。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

 みんながワクチンを打てば、集団抗体ができて、感染者は激減すると考えている人もいるかもしれませんが、既にワクチンが効きにくい変異株が広がりつつある上に、ワクチンを打っても抗体を得るまでには約2ヶ月ほどかかります。仮に、今すぐ国民全員がワクチンを打ったとしても、ゴールデンウィーク明けまでは集団抗体は得られないし、5月に打てば7月、6月に打てば8月まで抗体が得られないので、それまでは我慢するしかありません。
 国民に十分なワクチンが行き渡る戦略すら示せていない中で、最も感染が広がりかねないタイミングで「緊急事態宣言」を解除する。5月に解散総選挙をするために作られたシナリオなのかもしれませんが、こんなことでは解散総選挙もできないまま、日本に地獄を広げることになりかねません。もう少し仕事をしている知事を見習ってもらいたいものです。

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