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【選挙ウォッチャー】 千葉県知事選2021・国民主権党を検証する(#2)。

 千葉県浦安市では3月7日に、2か月遅れの成人式が行われ、たくさんの新成人が東京ディズニーランドで思い出の時間を過ごしたのだが、その日の夕方に「国民主権党」の平塚正幸がやってきて、同級生たちとの夢のような時間を一瞬にして現実に引き戻す「コロナはただの風邪」という珍説を展開していた。
 幸いなことに、新成人たちのリアクションは冷ややかで、ほとんど耳を傾ける人はいなかったのだが、それでも「ネットde真実」の人たちは少なからず存在し、チラシを配るスタッフは増えていた。


■ 平塚正幸の選挙ビラはツッコミどころ満載

 今回の千葉県知事選で、平塚正幸陣営が配っている選挙ビラを入手することに成功した。そこに書かれていることは、どれもこれもツッコミどころ満載で、どれも検証すればデタラメだと分かるものばかり。うっかりビラを信じてしまう人が出てしまう前に、ワクチンのように、皆さんに知識の抗体を手に入れていただきたい。

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 ワクチンにより、たくさんの死者が出ているという話は前回お届けしたので、今回は「健康な人を病人にするPCR検査を受けてはいけません」について検証していく。このチラシでは、このような説明になっている。

「PCR陽性者の9割が無症状です。無症状とは健康な状態です。無症状者から他者にウイルスを感染させ、症状を起こさせる研究結果は地球上に存在しません。日々報じられている感染者数とは何ら我々の健康安全への脅威を示しているものではありません」

 なぜ、世界中で新型コロナウイルスが広がってしまったのか。その最大の理由が「無症状」の感染者がいるからである。なぜ症状が出る人と、症状が出ない人がいるのか。この謎については、いまだ解明されていない。もし解明されることがあれば、発症を抑えることができるようになるため、発見した研究者はノーベル賞を取るだろう。
 ただ、平塚正幸が主張する「9割が無症状」というのは、現実のデータとは大きな乖離がある。
 東京都内で2020年11月1日から2021年1月15日までに感染した5万1848人の新型コロナウイルス感染者のうち、PCR検査で陽性が判明した時に「症状あり」と答えた人は4万1533人。無症状の人は1万0315人に過ぎず、割合にして19.9%。日本でPCR検査をした人の5人に4人は何らかの症状がある。つまり、「健康な状態」とは言えないことがわかっている。
 無症状の人にも感染力があることはWHOも認めているが、症状のある人と症状のない人(無症状)の感染力の強さについての研究も、当然のように行われている。
 この研究は複数存在していて、共通しているのは「症状のある人の方が無症状の人より感染力が強い」ということであるが、どれくらいの差があるのかということについては、3倍というものもあれば、25倍というものもあって、今後、時間をかけて精査されていくものになっている。スーパースプレッダーのように、1人でたくさんの人に感染させてしまう力を持つような人もいるので、他人に感染させる力については「個人差」もあると考えられる。
 いずれにしても、無症状の人にも他人を感染させる可能性はあって、その人が無症状で済んでも、次に感染させられた人が無症状であるとは限らないため、その人が高齢だったり、基礎疾患を持っていた場合には、重篤な症状になったり、死亡する可能性もある。平塚正幸の言説を信じてしまうと、人が死にかねないのである。


■ ワクチンで病院が儲かることはない

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 今回、平塚正幸が掲げているテーマは、「ワクチンは危険」である。これまでの「コロナはただの風邪」から進化し、新型コロナウイルスのワクチンの危険性について訴えるようになっている。
 これは新型コロナウイルスに限った話ではないが、ワクチンには必ず副反応が存在する。かなり低い確率であっても、ワクチンの副反応に苦しめられる人がまったくいないわけではない。ただ、平塚正幸がワクチンを危険だとする理由は、そういった一般常識とは少し違う。

「これまでにコロナワクチンによるたくさんの死者や副反応の事例が海外で報告されています。それら報告された事例は、ワクチンとの因果関係が分かり易い症状だけで、ワクチン接種後、なんだ体調が悪い、だるい、意欲がない、力が入らない、時より痛みが出る等の誰の目にも明らかではないワクチン反応は無数にあることでしょう。というよりも、それがコロナワクチンの『主反応』であり、コロナワクチンの効果なのです。つまり、コロナワクチンは病気を生み出すために我々に打たれようとしているのです」

 平塚正幸の主張は、ワクチンは新型コロナウイルスを予防するためのものではなく、「人々を病気にすること」を主たる目的として打たれるものだという話である。
 一体、誰がどんな目的でそんなことをするのか。これは病院や製薬会社が儲けるために、わざと人々を病気にするというのである。自分で患者を作り出し、その患者から治療代を取るマッチポンプだというのだ。
 しかし、現実は平塚正幸の話と真逆のことが起こっている。実は、多くの病院で、新型コロナウイルスをキッカケに利益を増やすどころか、まったく儲からなくなって大赤字になっている。その結果、感染防止のための仕事量が増え、看護師さんの労働環境が悪くなり、大きなストレスがかかっているにもかかわらず、頑張ってくれている看護師さんのボーナスが削られるという、いびつなことが起こっている。
 こうなってしまった最大の原因は、人々が「病院に行かなくなった」ことにある。昔だったら、少し膝が痛くなった程度のことで病院に通い、薬をもらってきたところだ。あるいは、高血圧だとか糖尿病だとかで、たびたび病院で見てもらい、病気が悪化していないかをチェックしてもらっていたのだが、高血圧や糖尿病の人たちは新型コロナウイルスに感染すると、死亡リスクが非常に高いとあって、なるべく病院に行く回数を減らし、薬だけもらうようになっている。
 病院というのは、基本的に自由な価格をつけることができない。美容整形のような自由診療となっているものは100万円でも200万円でも客が納得する金額を請求すれば良いが、一般的な病気の治療というのは価格が決まっているため、勝手に大きな利益を乗せることができない。だから、なるべく多くの患者を診ることで収益を確保するしかない。しかし、患者が激減してしまうと、病院というのは一気に赤字に陥ってしまうのだ。ましてや、新型コロナウイルス対策のため、アルコール消毒液や防護服など、必要な備品は増えている。これではますます病院の経営は苦しくなるばかりだ。
  つまり、病院にとっては、新型コロナウイルスがない世界の方が幸せなのである。だから、病院を儲けさせるために病気にするためのワクチンを打つことはない。こんなことでもなければ、多くの病院は黒字経営が成り立っているはずだからである。


■ 「マスクで病気になる」というデタラメ

 平塚正幸が、なぜ「マスクを外そう」と主張しているのかと言うと、それはマスクをつけていると、血中酸素濃度が下がり、二酸化炭素濃度が増して臓器にダメージを与え、さらには発がん性があるからだということになっている。
 確かに、極度に太っている人はマスクをつけるだけで息苦しくなると言われているし、マスクをつけた状態でスポーツをすると酸欠になるという報告もある。一時期は「マスク頭痛」なんていう言葉も生まれ、普段、ほとんどマスクをしたことがない人が、いきなりマスクをつけるようになり、頭が痛くなってしまうということもあったようだ。
 しかし、多くの人はマスクとの付き合い方を習得している。自分にフィットする呼吸のしやすいマスクを見つけたり、人のいない所でマスクを外したり、ウレタンマスクと不織布マスクを使い分けるような人もいる。鼻の部分の金具の折り方を工夫してメガネが曇らないようにしていたり、マスクによるストレスを軽減するための努力は、さまざま編み出されている。
 まず大前提として、一人でいる時にマスクをつける必要はない。オフィスなど、他の人と共有する空間では一人でいる時にもマスクをつけた方が良いこともあるが、家の中でマスクをつける必要はない。人と触れ合う機会の多い若者が高齢者と同居しているような場合には、マスクをつけた方が良いこともある。マスクをつけたくないのであれば、こまめにPCR検査をして安全を確認するしかない。
 平塚正幸の主張によれば、「マスクの網目は非常に大きなもので、それでウイルスを防ぐことはできない」という。しかし、新型コロナウイルスそのものは小さいにしても、ウイルスは飛沫に含まれている。飛沫の大きさはマスクの網目より余裕で大きいので、マスクをつければ感染を防げるというのは、そういう理屈である。また、マスクに感染防止の効果があることは「富岳」のシミュレーションでもわかるように、科学的に証明されている話である。
 平塚正幸は「飛沫を浴びる機会はありましたか?」と書いているが、これはおそらく「日常生活の中で、唾をかけられるようなタイミングなんてないだろう」ということだろう。しかし、私たちは想像以上に飛沫を飛ばしている。大きな声を出すわけでもなく、普通に会話をするだけで、実は目に見えない飛沫がたくさん飛んでいる。それどころか、普通に呼吸をしているだけでも飛沫を飛ばしながら生きているのだ。これは寒い所で息をするだけで証明できる。普段は目に見えないけれど、あんな感じで息をするだけでもウイルスは放出されているのだ。


■ 「コロナ対策」を呼び掛ける医師の野望

 今回の千葉県知事選は地獄である。
 これまで「コロナはただの風邪」と主張してきた平塚正幸に続き、政見放送で毎度やらかす後藤輝樹が「コロナはただの茶番」と言い出し、ちゃんとした新型コロナウイルス対策をしてくれる候補はいないのかと思った矢先、医師の加藤健一郎が「医師の視点でコロナ対策」というキャッチフレーズを採用していた。

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 医師という専門家の視点で新型コロナウイルス対策をしてくれれば、もしかしたら千葉県の感染者を減らせるかもしれない。ところが、加藤健一郎は政見放送でとんでもない野望を口にする。
 「夢は当選して、小池百合子氏と結婚する」。
 そう、加藤健一郎の野望は、千葉県知事になり、1都3県の知事会合の場で、小池百合子にこっそりプロポーズする「プロポーズ大作戦」なのだ。政見放送では、知事になれない情けない男に小池百合子が振り向いてくれるはずがないので、ぜひとも千葉県民の皆さんに恋を応援してほしいと訴えていた。新型コロナウイルス対策を呼び掛けている候補まで、本当は新型コロナウイルスそっちのけで、ただ小池百合子と結婚したいだけなのである。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

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 多くの人が「そんなバカな!」と思うような珍説を展開している国民主権党の平塚正幸だが、この選挙で着実に勢力を拡大している。それは、どこからどう見ても怪しい宗教だったり、どこからどう見ても怪しいマルチ商法に騙される人が一定数いるように、うっかり平塚正幸のような珍説を聞いてしまい、「そうかもしれない」と思ってしまう人はいるのである。
 ただ、どの理論も冷静になって考えてみれば、そんなはずはないと思えるものだったりする。ワクチンについても、確かに「副反応」は報告されていて、それを心配する人がいるのは当然だ。ましてや、日本では変異株が主流になりつつあり、ワクチンが効きにくい上に感染力が高いという厄介なものに進化しつつある。「ワクチンが効かない」となると、当然、ワクチンを打ちたくないと考える人は多くなるはずだが、平塚正幸のような非科学的な根拠で「打たない」ということを言う人がいると、もっと科学的な根拠に基づいて「打たない」と選択している人が、あたかも平塚正幸と同じような理屈で打たないことを決めているように勘違いされてしまう。
 つまり、平塚正幸はリスクとベネフィットを比べた末にワクチンを打たない決断をするような「ワクチン慎重派」の人たちにとっても迷惑な存在であり、平塚正幸が語る珍説については、今後も検証されていく必要があると考えている。

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