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【選挙ウォッチャー】 新宿区議選2019・分析レポート。

新年明けて2発目のレポートは「新宿区議選」です。新宿はかなりドラマのある選挙が展開されており、とても面白いです。昨日は杉並区議選のカオスぶりにドン引きましたが、カオスぶりで言えば新宿区も同じです。頭の悪いヘイト野郎から居住実態が問われているNHKから国民を守る党の女性候補まで、魑魅魍魎もたくさんいます。新春から心が晴れるようなレポートではありませんが、このヤバさは皆さんに伝えるべきだと思います。

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2019年4月の統一地方選で行われた新宿区議選は、定数38に対して53人が立候補したため、それなりに激戦になりました。さすがは新宿区なのですが、今回はトランスジェンダーの候補者が2名立候補しており、医療大麻の解禁を求めるような候補者もいました。


■ 性転換した女性区議が2人も誕生する

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誰もが知る日本屈指のLGBTの街である「新宿二丁目」は、性別の枠を超えたいろいろな人たちが集まり、アルコールやエンターテイメントを提供しています。しかし、意外なことに「新宿区」という自治体単位で見ると、LGBTに対する理解や条例が遅れている街になっていました。さらには、他の自治体では既に誕生している性転換した女性議員などは新宿区に存在しませんでした。最近では議員がゲイやレズビアンであることをカミングアウトすることが珍しくなくなりましたが、新宿区にはLGBTの議員は存在しなかった、もしくは、存在したかもしれないけれどカミングアウトしなかったので分からなかったのです。

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今となっては「元男性」と表現することもふさわしくないと思うのですが、どの言葉が適切なのかがよくわかりませんので、旧来のわかりやすい言葉で言うならば、今年の新宿区議選には2人の「元男性」の女性議員が立候補しました。一人は無所属の依田花蓮さん。もう一人は共産党から立候補した高月真名さんです。

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LGBTの問題は、けっこう切実です。やはりトランスジェンダーのような方々は、なかなか普通に就職することができません。理解が進まないこともありますが、社内に偏見のある人がいれば、お互いに居心地の悪い環境になってしまうため、不要なトラブルを避けようとして雇用を避けるパターンもあると思うのです。そのため、総じて貧困に陥りがちで、低収入に苦しむLGBTの方々も少なくなりません。本来は、そういった方々にこそ行政が手を差し伸べるべきですが、行政サービスはそこまで追いついていません。

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高月真名さんが取り組んでいるのは、低所得者向けの都営住宅に「同性同士のカップル(事実婚状態)も入れてほしい」です。他の自治体では少しずつ同性パートナーに結婚と同等の認定をするパートナーシップ条例が制定されていて、隣の渋谷区長は同性カップルの権利を主張したことで風が吹きました。現在、都営住宅の基準では男女の夫婦は対象となりますが、同性のカップルは対象にはならず、審査の段階で門前払いをされてしまいます。本当はただの友達なのに、同性の夫婦を装って入られては困るからということなのでしょうが、同性のカップルにも結婚と同等の認定が与えられるようになれば、もう審査で落とす必要はないのではないでしょうか。

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ただ、新宿区議会のレポートを読んでいると、都営住宅に同性のカップルでも住めるようにしてほしいという高月真名さんの提案は「その必要はない」の一言であっさりと却下されています。都営住宅の審査と同様、まさに門前払いというわけです。新宿区には約33万7600人が暮らしていますが、外国人比率が非常に高く、LGBTも多いことが推測される「多様性の街」になっています。東京都庁を中心としたオフィス街がある一方、歌舞伎町や新宿二丁目、創価学会のお膝元である信濃町、東京五輪の中心地となる新国立競技場も新宿区です。本来であれば、時代の最先端を行っていなければならないはずの新宿区が、意外と「昔ながらの価値観」から抜け出せていないということがよくわかります。

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共産党はエリアで票を分けていますが、高月真名さんの地盤は「新宿2丁目を中心としたエリア」に設定されていました。依田花蓮さんも新宿2丁目を中心に活動していたので、狭い地域で2人のLGBTの候補者がいたことになりますが、結果から言うとトランスジェンダーの2人の候補は2人とも当選を果たしています。ご覧の通り、共産党を支持している人は高齢者が多いのですが、支持者たちは高月真名さんに対して温かい声をかけており、ここでも時代が変わってきていることを実感しました。任期は4年間あります。さまざまな偏見に晒されながらも逞しく生きてきたLGBTの方々なので、どれだけ議会で否決されようと、必ず権利を勝ち取ってくれるはずです。そこらへんのホゲホゲした爺さんより、LGBTの方々の方がよっぽど期待できます。活動を見守りましょう。


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