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【選挙ウォッチャー】 NHKから国民を守る党・動向チェック(#266)。

 これまで反社会的な迷惑活動をしてきた「NHKから国民を守る党」、現在の党名で「NHK受信料を支払わない方法を教える党」が、着実に滅亡のカウントダウンを歩んでいる。
 先日、共同通信から質問状が来たと、立花孝志がYouTubeで配信していたが、その質問の内容は「昨年7月の参院選の際、N国党から立候補してくれた人には立花孝志が300万円の供託金を貸し付け、もし没収されてしまった時にはそのまま贈与する形を取り、贈与税19万円も立花孝志が支払うことにしていたことは公職選挙法違反にあたるのではないか」という指摘だった。共同通信は関係者への取材をほとんど終え、「あとは立花孝志に質問するだけ」という状態で質問状を送っており、この質問に立花孝志は「公選法違反にあたるなら自首をする」と答えるのが精一杯だった。あとから「法律というのは、条文に書かれている文章の通りに運用されるものではない」と信者向けの言い訳をしていたが、司法試験に合格したわけでもなければ、法学部を卒業したことさえないくせに「法律のプロ」を自称していた立花孝志は、これまでも不正競争防止法違反、威力業務妨害、脅迫罪という3つの刑事事件で既に起訴されていて、これに「公職選挙法違反」という新しい罪が加わるかもしれない。立花孝志は「選挙のプロ」も自称していたが、今日まで「26連敗中」という記録に加え、法律にまで違反していたとなると、一体、何のプロだったのかという話になってくる。これまで立花孝志の能力を神のように崇めてきたN教党の信者たちが心配である。


■ 立花孝志は逮捕されることも覚悟していた!?

 今回の公職選挙法違反容疑は、極めて深刻である。
 通常、候補者が供託金を支払うのが難しい場合、「公認料」という形で政党から政治団体にお金を渡すことがある。
 ところが、立花孝志はこうした面倒臭い手続きを一切省き、立花孝志が個人にお金を貸し付けるという形を取った。「貸付」となった場合、当然、返済の義務が発生するため、300万円の供託金が没収されてしまうと「お金を返してくれ」と言われても返すお金はない。だから、純粋な貸付では全国に候補者を立てることができなくなってしまう。そこで「供託金を没収された時には贈与する」と約束をすることで、N国党から候補者してくれる人を確保した。しかし、これでは「NHKから国民を守る党から立候補してくれたら300万円あげる」と約束しているに等しいため、300万円で立候補予定者を買収しているような形となり、専門家たちも「公選法違反の疑いがある」としている。
 立花孝志やN教党の信者たちは、「政治団体から公認料という形で寄付していれば問題なかったのに、手続きを間違えてしまったから公選法違反になっただけで、大した話ではない」と思っているかもしれない。だが、彼らが思っている以上に、この罪は重い。
 そもそも「公認料」と「立花孝志による貸付&条件付き贈与」では、お金の流れがまったく異なる。
 公認料は、公認された人の政治団体に支払うお金であり、このお金は当然のことながら「政治資金収支報告書」に記載されなければならないお金である。また、このお金は公認された人のお金(正確には公認された人の政治団体のお金)になる。
 一方、今回の立花孝志による貸付では、政治資金収支報告書に記載された様子が確認できず、供託金が返還された場合には立花孝志のお金として戻ることになるわけで、「このお金は誰のお金なのか」と問われた時には、「立花孝志のお金だ」ということになってしまう。
 そして、この事件における一番の問題点は、「手続き論」ではなく、「NHKから国民を守る党」が、こうした公選法違反によって参議院の議席を獲得してしまったことにある。立花孝志は、最初から「立候補してくれる人には300万円の供託金を政党(立花孝志)が負担し、もし没収された時には贈与する」という条件で候補者を集めており、これで全国の都道府県選挙区に擁立し、この作戦によって比例区での1議席を獲得している。もし、こうした違法な手段で全国の都道府県選挙区に候補者を擁立していなければ、きっと「NHKから国民を守る党」が国政政党になることはなかっただろう。
 現在は削除されているが、立花孝志は2月27日に「先日の公職選挙法違反の件ですが、月曜日に出頭命令が出てきたので出頭してきます。任意ではなく強制なので、そのまま立件、逮捕もありえると思います。直前に動画投稿をしたいと思います。会見は立件後、しばらく経ってからになると思います」とツイートしている。本人いわく「Twitterを乗っ取られた」と弁明した上で、これらは事実無根だとしているが、本当にTwitterを乗っ取られるようなことがあるのだろうか。なぜこのようなツイートをしたのかが気になる。


■ 本当に衆参補選に立候補できるのか

 今のところ、NHKから国民を守る党、改め、NHK受信料を支払わない方法を教える党は、4月25日に行われる衆参補欠選挙の全選挙区に候補者を擁立する計画を立てている。
 河井案里が抜ける参議院の広島県選挙区の再選挙には、N国コールセンターのメンバーで、運送会社の元社員・山本貴平(46)。羽田雄一郎氏の急逝に伴う参議院の長野県選挙区の補欠選挙には、同じくN国コールセンターのメンバーで、元タクシー運転手の神谷幸太郎(44)。そして、吉川貴盛元農水相の議員辞職に伴う北海道2区の衆院補選には、元NHK集金人で立花孝志に内部告発の協力をしている動画配信者の斉藤忠行(29)が立候補する計画になっている。
 衆参補選に立候補するための供託金は各300万円なので、3人分となれば合計で900万円。政見放送では、NHK集金人の恐ろしさを伝えるドラマ仕立てにする計画だというので、トータルで1000万円以上のお金がかかることだろう。先日、森友学園の籠池ファミリーに寄付していた8400万円を強引に取り戻し、党の資金は少しだけ回復したものの、次の政党交付金の約4000万円は4月まで入らないので、今のペースでお金を使ってしまうと、また視聴者から10%以上の年利でお金を借りなければならなくなりそうだ。
 NHKから国民を守る党の政治資金は、これまた「数字のプロ」を自称する立花孝志がすべてを握り、党首と会計責任者を兼ねているため、もし逮捕されて身柄を拘束されるようなことがあると、党のお金は停止する。私のような、ほとんど儲かってもいない、社員が自分一人しかいない弱小零細企業でさえ、経費をエクセルで管理するのに限界を感じ、会計ソフトを導入しているぐらいなのに、億単位のお金をやり取りしている「NHKから国民を守る党」の会計は、「エクセルの達人」である立花孝志がすべてエクセルで管理しているという。誰もが「んなアホな!」と思うことだろうが、立花孝志はドラマ「ガリレオ」の福山雅治よろしく、選挙の当選確率さえ一瞬にして数式を組み立て、それをエクセルに落とし込んで、次々に候補者を当選に導いた(なお、現在は26連敗中)という輝かしい実績の持ち主なので、たった1年で5億円の借金がほぼゼロになるぐらいにお金を使い込んでいたとしても、ここまでのところはすべて計算通りなのだという。実に面白い。
 ただ、この質問状を受けてのことなのか、立花孝志は3月21日の千葉県知事選の立候補に消極的な姿勢を見せ始めた。それまでは「自分は出たくないが、他に候補者がいなかったら出るしかない」などと言って、立候補する気マンマンだったのに、急にトーンが下がったのだ。3月4日の告示まで1週間を切った段階でこんなことを言っているのだから、千葉県知事選にN教党の党員や立花孝志が出てくるのかどうかで、N教党の財政状況がわかる。
 信濃毎日新聞は、参院補選にN教党が候補者を擁立することを1面トップで知らせるぐらいに警戒していたが、もしかすると、そこまで心配は要らないのかもしれない。というのも、立花孝志が逮捕されるかもしれないとなれば、N教党に300万円やら500万円やらをお金を貸し、年利10%を期待した人たちが回収に走る可能性があり、党の資金が一気に枯渇する可能性が出てくる。N教党は今、かつてないほどの大ピンチを迎えているのだ。


■ NHK会長宅に凸をするパフォーマンスも不発

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 選挙では26連敗、NHKとの受信料裁判でも負けて裁判長を逆恨み、NHKから1100万円を求める民事裁判を起こされ、刑事では不正競争防止法違反、威力業務妨害、脅迫罪という3つの罪で実刑を喰らうかもしれない中で、新たに発覚した公選法違反。
 残念ながら、この状況で立花孝志を期待する人はほとんどいない。それまで立花孝志を大絶賛していたN教党の信者たちも、今となっては蜘蛛の子を散らすようにいなくなりつつある。それはまるで、高須克弥院長を大絶賛しながら「反日パヨクの大村知事を辞めさせろ!」と叫んでいたネトウヨの皆さんが、お通夜のように下を向いて黙っているのと同じだ。高須院長は言い訳会見で「こんな貧乏ったらしいやり方はしない」と豪語していたが、追い詰められた人というのは、だいたい行動が似てしまう。
 立花孝志はYouTubeのタイトルで「これからNHK前田会長の自宅に突撃します」と予告した上で、裁判中のNHK会長宅を再び訪れ、N国党が「集金人」と呼ぶ、NHKの外務委託業者が不正をしている証拠とやらを、ポストに投函する動画をアップした。
 これこそ立花孝志の真骨頂であり、迷惑系YouTuberの立花孝志が人気になってしまった要因だ。憎きNHKのトップの人間に嫌がらせをして、日頃からNHKに不満を持つ人たちの溜飲を下げ、人気を獲得する手法だ。
 ところが、このパフォーマンスもSNSで話題になることはなかった。一昔前なら、SNSに立花孝志を絶賛するコメントが溢れ、動画が拡散されているところだが、今ではYouTubeの動画コメント欄以外に、立花孝志を絶賛するようなコメントが並ぶことはない。今ではN国信者たちも、外に向けて立花孝志を絶賛するのは恥ずかしくなってきているのだ。こうしたことからしても、「NHKから国民を守る党」はオワコンである。


■ 尊師のポジションを争う内紛勃発か

 N教党は、民主主義国家には珍しく「立花孝志の独裁政党」なので、すべての決定権と決裁権を立花孝志が握っている。副党首は2名いるが、北方領土の中心で「おっぱい」と叫ぶ丸山穂高は、名ばかり副党首で、党の運営にはほとんどカラんでいない。たまに「アジャース」と言いながら、国会議員がいかに特権だらけなのかを自慢しながらツイートするぐらいだ。もう一人の副党首・大橋昌信は、古くから立花孝志を支えてきた古参メンバーであるが、「コロナに効く」と言いながら、亜塩素酸ナトリウム水溶液にクエン酸を混ぜて飲むぐらいに「致死レベルのアレ」で、偉そうに「5W1H」をホワイトボードで解説し、「What」を「ウォント」、「How」を「フー」と読むぐらいにアレである。
 つまり、立花孝志に万が一のことがあった時にN教党を運営できるような人間はおらず、最有力は上杉隆幹事長だったが、2月28日発売の「フラッシュ」で、金や女にまつわる酷いスキャンダルが報じられ、党を引っ張るだけの力はなさそうだ。そうなると、浜田聡が引き継ぐことになりそうなのだが、年間1億6000万円もの税金が入ってくる政党は、魑魅魍魎だらけのN教党の関係者にとっては、非常においしいものだ。もし立花孝志の身に万が一のことがあれば、しばらくは尊師の帰りを待つとしても、内紛は避けられないことだろう。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

 もし立花孝志が公選法違反でアウトとなれば、これまでのお金の動きはすべて検証されることになるだろう。ただ、立花孝志が3月1日に逮捕されるようなことはなかった。
 立花孝志は、NHKの職員やNHKの外部委託業者が起こした事件を、いかにも大問題であるかのように語り、大きな声で断罪していたが、そもそも自分がやってきたことに問題がなかったのかを検証される段階に突入しつつある。泥棒が他の泥棒に文句を言うようなことになっていないのか。これまでN教党のことを苦々しくウォッチングしてきた人たちにとっては、いよいよ大きな打ち上げ花火が上がろうとしているので、フィナーレの景色がいかなるものかを見届けたいところである。

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