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【選挙ウォッチャー】 大阪都構想について思うこと。

皆さんもご存知の通り、僕は「NHKから国民を守る党」からの度重なる妨害行為を受け、今年一番の収入を見込めるレポートとなるはずだった「大阪都構想」の取材ができなくなってしまいました。日本の歴史的なイベントを見届けるためにも、是が非でも大阪に行きたいところでしたし、今となっては多くの方が僕のレポートに期待してくださっていたのではないかと思います。まさか国政政党に妨害されて行けなくなるとは思いませんでしたが、この責任は必ず果たしてもらおうと思っています。さて、今日は大阪都構想の投票日です。大阪の運命、もっと言えば、日本の運命を決めるかもしれない大事な大事な一日です。この「大阪都構想」について、僕の意見を発信しておくことは非常に重要だろうと思いますので、今日は皆さんにわかりやすくご紹介させていただきます。


■ 維新の嘘①:二重行政は存在しない

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大阪府知事の吉村洋文さんや大阪市長の松井一郎さんは、「大阪都構想が実現したら大阪が一つになるので二重行政は解消される」と言っています。しかし、本当にそうでしょうか。これまで吉村洋文さんと松井一郎さんは二人三脚で大阪の政治を前に進めてきたと強調し、二人でタッグを組んできたことで「二重行政を解消した」と自慢してきました。大阪都構想を再びテーブルに乗せるまでは「二重行政を解消した」と言ってきたのに、急に「二重行政を変えなければならない」って、「二重行政は解消したのか解消してないのか、どっちなのさ!」という話です。皆さんもよく考えていただきたいのですが、どこの自治体も「都道府県」「市町村」の二重行政になっています。僕が住んでいる千葉県柏市も、政令市と中核市の違いこそあれど、維新風に言うならば「千葉県」「柏市」の二重行政だと言えるでしょう。これは東京23区を除いて、ほぼすべての自治体でそのようになっています。同じ政令市の札幌市、横浜市、名古屋市、広島市、福岡市などは、どこも「二重行政で困っている」なんて言っていません。大阪市だけが「二重行政で困っている」と言っているのです。これは橋下徹マジックの名残でしょう。

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よく考えていただきたいのですが、「大阪は一つになる」と言いながら、実際には4つの区に分けるという話をしています。東京の「渋谷区」「新宿区」のような特別区を作ろうとしているのですが、東京の特別区にもそれぞれに「区長」は存在します。その区長さんが大阪維新の会の公認であるとは限りません。もしかしたら自民党の区長が誕生することでしょう。そうなった時に、大阪府知事は何を言うでしょうか。結局、これも「二重行政」だということになってしまうのではないでしょうか。もっとも、大阪府の許可がなければ何もできないので、区長にはほとんど権限がなく、地方自治の原則からはどんどん離れていくことになりますが、どこも同じ構造なのに「二重行政」だと言っているのは大阪維新の会だけなのです。


■ 維新の嘘②:行政サービスが減らないはずがない

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大阪維新の会は、大阪都構想をしたことで行政サービスが減ることはないとしています。しかし、大阪市財政局の試算では、大阪市を4つに分けた場合に発生する年間のコスト増は218億円に及ぶことを明らかにしました。この計算そのものは正しいと思いますが、こんなにイメージダウンになることを言われては困ると、松井一郎市長が慌てて圧力をかけ、たった2日間でこのシミュレーションは「捏造」だということになってしまいました。どうしてこのようなことが起こるのかと言えば、前回の住民投票から5年近くが経つにもかかわらず、大阪都構想が実現した場合の試算というものを大阪維新の会すら出していないからです。強引に「捏造」とされてしまった218億円という数字は、確かに増えるコストです。しかし、コストが増えないと言うためには、この増えるコストの代わりに「合理化」することで、かかる費用を抑制することが必要になります。つまり、今の住民サービスは減らさなければならないということです。既に区内にある温水プールや福祉施設の数を減らす計画が発表されていますが、これも合理化によってコスト増を抑える政策です。「合理化」と言えば聞こえはいいですが、実際は、今より行政サービスを減らすということ。つまり、これまで市に税金を払っていたことによって運営されていた公共施設の数が減らされ、同じ税金を払っていても還元される割合は減らされてしまうということになります。その代わり、大阪維新の会が実現したい「カジノ誘致」「大阪万博」には湯水のごとくお金が使われるため、税金の使われ方はよりアンバランスな状態になると考えていいと思います。


■ 維新の嘘③:過去に戻るはずがない

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非常にえげつないキャッチフレーズが使われていますが、大阪維新の会が掲げているのは「過去に戻すか、前に進めるか。」です。これは大阪維新の会に限った話ではありませんが、もし違う人が市長になったり知事になったりしたら、「昔のような悪い政治に戻る」ということはありません。それは時代というものは常に変わっていて、そもそも過去に戻る性質のものではないからです。例えば、僕たちは既にパソコンやスマホのない生活というのはできなくなりつつあります。もちろん、人生の過ごし方として、電波の届かない森の奥のポツンと一軒家で暮らし、パソコンやスマホに支配されない自給自足の生活をするということはできるかもしれませんが、社会全体がパソコンやスマホのない生活に戻るということはありません。人口が減少し、少子高齢化が進んでいる環境も変えることはできないため、そもそも昔のままのサービスでは対応しきれません。これは大阪維新の会の知事だろうと、自民党の知事だろうと変わらないことです。つまり、誰が知事や市長になったとしても「過去に戻る」ということはないし、再び悪しき政治が行われてしまうかもしれないと言いたいのだとすると、そもそも大阪維新の会に素晴らしい政治ができているのかどうかを検証する必要があります。大阪維新の会はどれだけ借金を減らすことができたかを盛んにアピールしていますが、それは納めた税金が我々にサービスとして還元されていない証でもあります。しかも、これから福祉にお金が使われず、大阪万博やカジノ誘致にお金が使われるのだとすると、そんな使い方で良いのかどうかを考え直す必要が出てくることでしょう。大阪メディアの洗脳によって、まるで大阪維新の会が良い暮らしを実現しているかのような演出が起こっていますが、ぜひとも自分の肌感覚でいい政治ができているのかどうかを検証していただきたいと思います。大阪維新の会になって良かったことを具体的に言えるでしょうか。


■ 維新の嘘④:反対するのは利権のためではない

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大阪維新の会の吉村洋文知事は、大阪都構想に反対しているのは、市議会議員であり、「議員の仕事がなくなってしまうから反対している」「これは利権のためだ」というロジックを使っていますが、実情は違います。市議会議員がなくなっても「区議会議員」という仕事が新たにできることに加え、大阪市が廃止され、市議会議員でなくなるのは2025年です。市議会議員の任期は4年なので、この間に必ずあと1回は選挙が行われることになるのです。そもそも市議会議員なんていう仕事は、3年後に必ず当選できるかどうかはわからないのです。そして、市議会議員が廃止されても、その代わりに区議選に立候補すればいいだけなのですから、こんな小さなことを理由に反対する人はそう滅多にいるものではありません。そもそも大阪市が廃止されてしまうと、大阪市にとって明るい未来が待っているとは思えないから反対しているのです。こういうところを誤魔化す人間は信用できません。


■ 維新の嘘⑤:「大阪都」になることはない

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「大阪都構想」という名前こそついていますが、「大阪府」「大阪都」になることはありません。大阪府は大阪府のまま、大阪市が廃止され、その代わりに渋谷区や新宿区のような特別区が4つできるという話になっているのです。しかし、これで東京と肩を並べることができるのかと言ったら、そういうわけではありません。大阪府は4区、東京は23区。規模においても東京には勝てません。経済規模で言っても東京には勝てず、それどころか、大阪市がこれまで持っていた政令市のメリットが受けられなくなり、大阪府の直轄となってしまうため、大阪市が独自に予算を組んで何かをするにしても制限が多すぎて、常に大阪府のご機嫌を取らなければならなくなります。大阪市の独立性は失われ、自分たちでは何もできない自治体になってしまうリスクがあるのです。


■ 一度決めたら元に戻すことはできない

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もしかすると、「ダメだったら元に戻せばいいじゃん」と思っている人がいるかもしれませんが、残念ながら、それはできません。一度決めたら元に戻れないという条件で、今回の「大阪都構想」の住民投票は行われることになっているからです。よく調べてみればデメリットだらけなのに、雰囲気で賛成してしまう人が多いばっかりに、あとでダメだったと気づいた時には元に戻せない。こんな地獄があったでしょうか。せめて、やってみてダメだった時に戻せるようにしておかないと、この選択が大阪を滅ぼしてしまうかもしれないのです。おそらく20年後ぐらいに大阪だけが高い税金の割に、ちっとも行政サービスを提供してもらえない町になっていても、そういう町として緩やかに人口が減っていくのだと思います。


■ 賛成派が多数を占めてしまうネットの地獄

これまでの大阪市の情勢調査では「賛成」が多数を占めてきました。これは大阪メディアの洗脳もありますが、やはりネトウヨによる工作活動の影響が非常に大きいと思います。多くの人が政策の中身を検証することなく、ネット上の空気に流され、賛成か反対を決めているからです。アメリカでトランプ大統領を支持している人たちも、日本でNHKから国民を守る党を支持している人たちも、さまざまな意見の中から情報を精査できず、完全なネット上のバブル(フォローしている人が偏っている)の中で暮らしていて、物の善悪の判断すらつかない状況にあります。これまで大阪維新の会が言ってきたことがデタラメであることに気づかない人たちは、これからもずっと騙され続けるし、自分たちの生活が苦しいのを政治のせいにするのは、自分たちの努力不足を棚に上げて政治のせいにする悪い人だと考えるのでしょう。しかし、非正規労働を増やす政策をしているのは政治だし、富の再分配に失敗しているのは政治だし、金持ちほど税金が優遇される仕組みを作っているのは政治です。こうした政治の失敗により、僕たちの生活は少しずつ苦しい環境に追い込まれているのに、「自分の努力や能力が足らないせい」ということにすることで、政治家の責任を問わないのです。僕たちが努力次第でお金を稼げる世の中にしなければならないのに、努力をしてもお金を稼げない仕組みを作っていることが問題であり、どうしてこうなっているのかを検証することなく、政治家の口車に乗せられ、自分たちの生活がより苦しくなる方を選択していることほど滑稽なことはありません。皆さんにはよく考えていただきたいのです。大阪都構想が実現したら、大阪の財源がピンチになることが目に見えているのに、こんなのを軽々と認めるなんて、こんなに愚かなことはありません。もし実現した場合、僕の言っていることが検証されるのは2025年以降になりますが、その頃の日本の経済が安定しているとは限りません。新型コロナウイルスの影響で、経済の回復がいつになるのかを見通すこともできない中で、まともな議論も説明もないままに、大阪都構想の住民投票を行政側が仕掛けていることが問題です。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

この歴史的な瞬間に立ち会えていないことは、とても遺憾です。二度と見ることのできない大切な住民投票が僕のアーカイブから失われた責任は、必ず取ってもらおうと思っています。来週には選挙ウォッチャーとしての活動を再開したいと思っておりますが、今のところ、再開の見通しは立っておりません。国民の生活を守るつもりがちっとも感じられない政党が台頭し始めているのに、国民がその事実に気づいていないというのは、非常に大きな問題だと感じています。[文・ちだい/写真・仁尾淳史]

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