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【選挙ウォッチャー】 北九州市長選2019・この国で女性議員が受けている仕打ち。

世界経済フォーラムが発表している「世界ジェンダー・ギャップ報告書2018」で、日本は世界149カ国中110位となりました。これは、男女が平等であるかどうかを見た時に、日本は世界の中でもまったく男女が平等ではない国だということです。これでも2017年は114位だったので、女性たちが立ち上がった「me too」の運動などもあって、少しだけランキングは上がりました。男性たちは、これでも最近は女性の地位が向上しているような気になっているかもしれませんが、実際はまったく向上していません。およそ先進国とは呼べないくらいに男女が平等ではないのです。


■ 日本はどれくらい男女が平等ではないのか

男女が平等ではない国と言われて、パッと思いつくのは中東の国々ではないでしょうか。女性は肌を露出してはいけなかったり、不倫をした女性が死刑になったり、およそ日本人の感覚では理解不能なほどに女性の行動が制限されています。それに比べれば日本はだいぶマシなので、日本はそんなに悪い国ではないはずだと思うかもしれません。日本のお隣の国である韓国も「男尊女卑」が激しい国として有名です。そう、これらの国々に比べれば、日本はまだまだ男女が平等な方だろうと思うことでしょう。ところが、日本のランキングは110位、激しい男尊女卑で有名な韓国のランキングが115位なので、僕たちは韓国のことをまったく笑えません。もうちょっとで中東と並びます。


■ 女性の地位が低いことを示す「NGT48」騒動

先日、日本のアイドルグループ「NGT48」のメンバー・山口真帆さんが男性から襲われ、ステージの上で謝罪をするという事件がありました。山口真帆さんは被害者であり、彼女に落ち度はありません。にもかかわらず、ネット上には山口真帆さんの自己責任論が並び、一歩間違えれば殺されていたかもしれないし、あるいは性的な被害に遭っていてもおかしくないにもかかわらず、謝るのは運営責任者ではなく、被害者である山口真帆さんだったのです。海外のメディアは、日本の狂った様子をセンセーショナルに報道し、「なぜ彼女が謝らなければならないのか理解に苦しむ」という反応をしていますが、山口真帆さんを暴行した男性は不起訴処分となり、どうやらNGT48の支配人というポジションの人が異動しただけで、この事件は終わろうとしています。さらに、テレビのワイドショー番組では、お笑い芸人として確固たる地位を築いているダウンタウンの松本人志さんが、この問題の難しさを説明した指原莉乃さんに「お得意の体を使えばいい」と発言。芸能界に大きな影響力を持つ御意見番的な立場にありながら、この問題を枕営業を連想させるセクハラ的な笑いにして消化させてしまったのです。そう、これが「今の日本で起こっていること」なのです。


■ 日本の女性議員が置かれている立場

国会議員として活躍する女性の数という点で見ると、日本は世界149カ国中130位となります。日本ほど女性が議員になっていない国は世界でもかなり珍しく、女性たちの気持ちがちっとも反映されない国になっています。待機児童の問題がちっとも解消されない自治体はたくさんあるし、大々的に報道されるまで当たり前のようにつけられていた「妊婦加算」なる制度も、もう少し女性の議員が多ければ、「それはおかしいじゃないか」と指摘されていたはずです。道路やトンネルを作ることばかりに一生懸命で、人々の暮らしに根ざした女性の意見が採用されない。こうして日本は暮らしにくい国になりつつあるのです。

1月27日には北九州市長選が行われますが、立候補しているのはオジサン3名。この選挙の争点は、人口流出が激しく、高齢化が進み、経済的にも疲弊している街をどのように再生するのか。もともと民進党だった現職の市長は、地元に幅を利かせる麻生太郎副総理からイヤミを言われながら、自民党の推薦を受けているので「道路を作る」と言っていて、無所属のバナナカラーの会社社長の候補も道路には賛成。これに対して共産党のオジサンが「2000億円の道路は無駄」だと言っていて、最後には市長選なのに「安倍政権にノーと言いましょう」と言っているのです。オジサンたちはどいつもこいつも空気が読めません。

そんな北九州市で、数少ない女性議員として活躍しているのが村上さとこ議員です。今、村上さとこさんは見知らぬ人からの嫌がらせに悩んでいます。事の発端は、北九州市で前文部科学事務次官の前川喜平さんの講演会が行われた時に、村上さとこさんが司会をしたのです。イベントをスムーズに進行するのには司会の腕が問われます。この手のイベントでよくあるのが、そこらへんの素人のオジサンやオバサンが司会をしてしまったばっかりに、進行がグダグダになり、時に誰も聞いていない己の持論を語り出し、手作り感満載の自己満足イベントになってしまうこと。そうならないためには、ちゃんと空気を読んで司会進行ができる人を立てなければならないわけですが、そこで白羽の矢が立ったのが北九州市議として活躍している村上さとこ議員だったというわけです。ところが、当時は前川喜平さんに対してネトウヨが大バッシングしていた時期。司会をしていたというだけで選挙事務所に電話がかかってきて、大真面目に「司会をした責任を取って辞めろ!」と説教する人たちが続出したのです。これも「余命三年」のブログを信じた人たちによる懲戒請求事件のようなもので、それまで無名の地方議員に過ぎなかった村上さとこさんが、ネトウヨの攻撃対象になった瞬間でした。

前川喜平さんの講演会を機に、ネトウヨから目をつけられるようになった村上さとこさん。事務所の周辺をうろつく人間が現れ、ブラジャーが届くようになりました。さらには化粧品や健康ドリンクなどの商品が代引きで届くようになり、これまで10件近くの代引き商品が届いており、今も続いています。女性であることもあって、商品を勝手に送りつける嫌がらせに加え、性的な嫌がらせまで受けているのです。村上さとこさんは「年齢的に、もうセクハラを受けることは無いかと思っていたけど、女性はいくつになってもセクハラを受けるんだと知った」と話していました。セクハラは若い女性だけが受けるものではなく、女性であればほぼ一生、被害を受けることになる。社民党の福島みずほ議員のところにも、かつて大量のコンドームが送られてきたことがあったそうです。つまり、この国では女性が国会議員や地方議員になると、性的な嫌がらせをたくさん受けるようになるということです。

もう一つ興味深いことがあります。それは、同じような送りつけの被害に遭っているのが村上さとこさんだけでないということです。熊本市議の緒方夕佳さん、元東京都議の塩村文夏さん、さらには政治家の枠を飛び出し、「許すな!憲法改悪市民連絡会」の菱山南帆子さん、太田啓子弁護士、南川麻由子弁護士、上瀧浩子弁護士、アジア女性資料センターの濱田すみれさん、作家の北原みのりさんなども同様の被害に遭っていました。共通するのは、世の中にモノを申している女性たち。女性が世の中にモノを申すと、どこかの男性から嫌がらせを受けるようになるということです。住所や名前を調べられ、商品を送りつけられたら、多くの女性は怖いと思うことでしょう。恐怖心を与えれば心が折れると思って、言論を封殺できると思っている節があるのです。だけど、そんなことに屈してしまったら女性は意見を言えなくなってしまいます。ただでも女性の意見が無視されて、医師になりたいと思って大学を受験すれば、女性であるというだけで減点されてしまうような世の中なのです。オジサンの政治家たちが子育ての大変さに寄り添おうとしないばっかりに、緒方夕佳議員が議会に子供を連れてきただけで大激怒し、のど飴を舐めていただけで大騒動になる始末。一事が万事こんな調子なので、日本のジェンダーギャップはいつまでも埋まらず、オジサンによる一部の企業だけが得をする政治が続けられているのです。


■ 女性議員の少なさは地方議会の方が深刻である

これは1月20日に投票日を迎えた茨城県のかすみがうら市議選の掲示板です。ご覧いただいても分かるように、女性は71歳の現職が立候補しているだけで、18人の候補者のうち、女性は1人だけです。東京から電車で1本で行けるような自治体でも、地方に行けば女性が政治に参加するのは極めてレア。いわゆる「保守王国」と言われるような場所では、まだまだ女性が政治に参加していないのです。

昨年7月に行われた常陸太田市議選常陸大宮市議選でも、女性の候補者はそれぞれ1人だけ。地方では議員の高齢化も進み、若い人が議員をやってくれないので、議会が全員ジジィという現象も生まれ始めています。日本のサイバーセキュリティ担当大臣がパソコンを使えないジジィであることが象徴しているように、日本の地方議会はジジィがジジィの感性で仕事をしています。どの街も深刻な少子高齢化が進んでいるのに、未来の話を想像できないどころか、現在進行形の問題にも取り組めないのです。そして、たまに女性の議員が活躍すると下着が送られてくるセクハラ地獄。僕はべつにフェミニストなわけではないし、女性のバッグをいちいち男性が持ってあげるべきだとも思いませんが、今の日本が女性議員を生み出しにくい構造になっていることは確かです。人口の約半分は女性なのですから、議員の半分が女性であるべきとまでは言いませんが、少なくとも女性の意見が政治に取り入れられない環境は不健全です。いくらネトウヨとはいえ、コワモテの男性に白ブリーフを送りつけることはしないでしょう。どうして女性に下着を送りつけるかって、こういう生理的に気持ち悪い嫌がらせをすれば、女性が萎縮して活動を縮小すると思っているからです。しかし、こんなことに屈するほど女性は弱くない。いまに犯人が突き止められて、全国に顔と氏名を晒すことになることでしょう。


■ 選挙ウォッチャーの考察&分析

村上さとこ議員をはじめ、いろんな人に商品を送りつけている犯人は、山口県内に住んでいると思われます。それはどのハガキも消印が「山口」になっているからなのですが、被害に遭っている女性たちは連携し、このような送りつけがあるごとに警察に相談し、一つずつに被害を届け出ています。ネットで嫌がらせをすると、すぐにプロバイダなどを辿って犯人がわかってしまうため、わざわざアナログな方法で商品の送りつけをしているのですが、実は、この方法にも犯人の特定に至るヒントが隠されています。というのは、これらの商品は通販会社を経由しているのですが、今はビッグデータの時代です。どのエリアにどのようなチラシを入れると有効であるかを常に測定しているのです。そのため、このハガキにも、いつどのエリアに入れた広告で送られたハガキなのかがわかるようになっていて、会社にもよりますが、比較的狭いメッシュで特定できることもあるのです。つまり、このような嫌がらせを繰り返せば繰り返すほどエリアは狭まっていき、犯人は絞られていくことになります。一見、犯人が特定しづらいだろうと思えるものでも、比較的狭いメッシュの中で、特定の新聞を取っている人の中から犯人を絞り出すことになれば、意外と特定されたりするものです。しかも、この嫌がらせの不幸なところは、最も被害に受けているのは商品を送りつけられた女性たちではなく、通販会社であるということです。これらの商品は「嫌がらせのために送られた」ということになるため、送料や手数料を通販会社が負担することになります。被害に遭っている女性たちにとっては返品する作業が面倒臭いぐらいなもので、実害を被っているのは通販会社なのです。つまり、犯人は女性に嫌がらせをするために商品を送りつけているのですが、一番嫌がらせを受けているのは通販会社であり、金銭的な負担を強いられているのも通販会社であるということです。封を開けていなければ商品は使い回せるとしても、段ボールや往復の送料は会社の負担になります。どんだけ他人に迷惑をかけるつもりでしょうか。女性たちにこんなことをしているクソみたいな大人が存在し、これが現代のニッポンの姿だったりするのです。最近、この国の民度が心配になる出来事がたくさん起こっていますが、ダメな大人をスルーするのではなく、ダメな大人に怒ることも必要なのかもしれません。[了]

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