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【選挙ウォッチャー】 福岡市長選2018・分析レポート。

安倍晋三総理や麻生太郎副総理に近いとされる現職の高島宗一郎さん。この市長もまた「日本会議」に所属しているネトウヨカルトのオジサンということになりますが、大阪市の吉村洋文さんや千葉市の熊谷俊人さんのようにTwitterでガンガンに発信していくタイプの目立ちたがり屋ではないため、あまり話題になることはないのですが、さすがは「日本会議」の市長だけあって、博多駅と博多港を結ぶロープウェイ構想をぶち上げるなど、独断でどんどん進めていくタイプのため、一時は地元の自民党市議団からも嫌われました。市民の不満も意外と多く、来年には北九州市長選、福岡県知事選も控えており、麻生太郎副総理の影響力も大きいとあって、福岡市長選そのものは選挙をやる前から決まっているような選挙ではあるものの、しっかり見守る価値がある選挙となっています。

高嶋 宗一郎 44 現 自民(安倍麻生グループ)
神谷 貴行  48 新 共産推薦

高島宗一郎さんの評判は一部で非常に悪いのですが、どれだけ評判が悪くても、選挙をやる前から決まっているというような選挙になってしまいました。福岡は自民党が非常に強く、野党の候補が太刀打ちできるレベルにはなっていません。博多駅と博多港をロープウェイで結ぼうという計画がどれだけバカバカしいものであっても、だからと言って共産党の候補に投票するほどではない。なので、この選挙は「現職の市長はクソだ」と思っている人はたくさんいたけれど、それが選挙に反映されるわけではなかったということになります。「クソだ」と思っている人が全員で選挙に行けばひっくり返ったかもしれませんが、そう思いながらも選挙に行かない人がたくさんいるせいで、世の中はいつまでも変わらないのです。


■ 福岡市は日本で数少ない成長曲線の自治体である

多くの自治体では人口が減少傾向にあり、経済の疲弊が始まっているのですが、福岡市は成長曲線を描いている数少ない自治体で、人口も税収も増えている状態です。環境的に恵まれていることもありますが、経済を順調に成長させている自治体は珍しく、高島宗一郎さんが市長じゃなくても同じような結果は出たのかもしれませんが、それでもこの時代に成長曲線を描けているのですから「高島宗一郎の実績」ということになります。人口が増えているため、小学校の教室が足らなかったり、保育園の待機児童が深刻だったり、課題はそれなりにあるのですが、新自由主義経済を掲げる人たちにとっては「嬉しい悲鳴」と取ることもできるため、こうした問題を深刻に考える人はあまりいないようです。地理的に韓国や中国にも近いことから、飛行機で日本に来るにしても、福岡に行くのと東京に行くのでは飛行機代が変わってきます。成田空港から台湾に行くのと、福岡空港から台湾に行くのとでは値段が全然違うのと同じです。いまや韓国や中国の方が経済的に順調なので、日本から韓国や中国に行く人よりも、韓国や中国から日本に来る人の方が多い始末です。

そんな中で、福岡は「近くの日本」なので、観光経済も順調です。ただし、今年に入ってから福岡港に寄港するクルーズ船の数は前年比16%減になってしまいました。その原因は中国発着のクルーズ船が価格競争に陥り、福岡港に寄港しないパターンを選ぶようになってしまったからです。高島宗一郎さんは「中国人観光客が福岡で落とすお金は1人あたり約8万円」だと話しており、この収入をさらに確保するために福岡港の整備を進めていくとしており、ロープウェイを作ろうというのも「クルーズ船の寄港競争」に勝つための戦略の一環とも言えるのです。これからますますクルーズ船を巡る寄港勧誘競争が始まることを考えると、ロープウェイのようなキャッチな風景を作り、福岡にお金を落としてもらおうというのは、もしかすると悪い作戦ではないのかもしれません。福岡市の成長曲線がどこまで続くのかという点もあるのですが、福岡市でも人口減少に転じるようなことになれば間違いなくロープウェイなんて作っている場合ではなく、高島宗一郎さんは「そうなる前に、今しかできないことを全力で進めたい」と話していました。


■ 高島宗一郎さんの横暴ぶりに反発する自民党県連の乱

高島宗一郎さんは、かなりトップダウン型で政治を進めるタイプなので、地元市議からの反発も大きい人物でした。前回と前々回は地元の自民党市議団が高島宗一郎さんを推していたのですが、今回の選挙では高島宗一郎さんが「推していただかなくてもいい」と言い放つほど自民党市議団と高島宗一郎さんの関係が悪化していました。読売新聞によると、関係が悪くなってしまった理由は福岡空港の運営会社への出資をめぐり、高島宗一郎さんと自民党市議団の間で意見が対立。市議団が提出した条例案が否決され、その責任を取って当時の市議団会長が辞めることになったのですが、次の会長が高島宗一郎さんと連携を深めようという動きを取ったため、内部の批判を招いて辞任に追い込まれるなど、自民党内がゴタゴタしたのです。自民党市議団は今回の市長選に別の候補を擁立しようと動き出したのですが、高島宗一郎さんを可愛がっている麻生太郎さんがやってきて、上から押さえつけるように高島宗一郎さんしかいないと言い出したため、他を画策する動きは鈍るようになり、結局、別の人を擁立する動きはなくなり、自民党は高島宗一郎さんに一本化されたという裏事情があるそうです。

麻生太郎副総理の影響が大きいことを示すように、高島総一郎さんの選挙事務所の入り口正面のド真ん中に麻生太郎副総理の為書きが貼られているほどでした。なんだかんだで選挙の直前には、いつまでも自民党内で対立してばかりも良くないということで、高島宗一郎さんはもともと宿泊税を取ることに慎重でしたが、市議団が提出してきたことを受けて宿泊税を導入する方針を決定。危険なブロック塀の撤去についても、もともと市長から提案する予定だったものを、市議団に花を持たせるように市議団の要望を待ってから提案。市長の方からも歩み寄る形になり、かつては一部の市議が公然と「敵」と発言するほどに悪化していた関係は和解ムードが漂い始めているといいます。高島宗一郎さんは安倍晋三総理や麻生太郎副総理とも仲が良く、今年8月12日の山口県下関市で開かれた講演会でも約800人の支持者の中で最前列の中央に座るほどの関係性であるといい、このエリアで麻生太郎の傘に守られていることも強みとなっています。


■ ロープウェイ計画を市民のほとんどが知らない

まだ実現すると決まったわけではありませんが、共産党の神谷貴行さんがあれだけ「今回の争点はロープウェイ計画である」と訴えているので、本来であれば多くの人が認識していなければならないのですが、地元のタクシー運転手さんですらロープウェイ計画があることを知りませんでした。ロープウェイができたらタクシーにも影響があるはずですが、商売に影響する人でさえ知らないのですから、よほど知名度がないのだと思います。福岡市は「博多」を擁するエリアなので、九州でイベントをしようということになれば、まずは博多だということになるので、福岡国際センターも大盛況です。博多駅と博多港をロープウェイで結ぶことになれば、こうしたお客さんの動線も変わってくるわけですが、地元の人に話してみると「そんなのがあるの?」という感じでした。地元の政治に対して多くの人が無関心であるからこそ、高島宗一郎さんの市政を監視する人がおらず、情報を共有できていないのです。


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