【選挙ウォッチャー】 秦野市長選2018・分析レポート。
神奈川県の中西部にある秦野市は、人口約16万5000人の街。実は、早くも人口は減少傾向にあり、これから市の歳入は減っていく運命にある自治体です。厚木市や平塚市などと隣接しており、読み方は「はだの」です。4期目を目指す現職の古谷義幸さんと、新人で元秦野市福祉部長の高橋昌和さんの一騎打ちとなりましたが、やや面白みに欠ける選挙になってしまったため、投票率の低下が懸念されていたのですが、不思議なことに投票率は上がりました。
1月14日には長野県高森町長選、喬木村長選が行われる予定でしたが、ともに現職が無投票当選を果たしてしまいましたので、2018年最初の選挙となりました。同日に沖縄県南城市長選なども行われたのですが、今年最初の選挙レポートを皆様にお届けいたします。
■ 古谷 義幸 70 現 市長
■ 高橋 昌和 60 新 元市役所職員
現職の古谷義幸さんは、これまで秦野市議を4期、神奈川県議を2期務め、秦野市長は3期務めています。政治家としては大ベテランであり、これまで3期12年の実績をアピールしています。一方、新人の高橋昌和さんは政治家としての経験はなく、選挙をするのは初めてで、議員としてのノウハウがあるわけでもないので、かなり苦戦することは避けられないと考えられていました。
■ 学校給食の実現に向けてママさんたちが奮闘している
神奈川県秦野市は、中学校完全給食が実現しておらず、牛乳だけが支給される「ミルク給食」になっており、弁当を持参するか、業者の弁当を注文するかを選べるようになっています。そのため、地元のママさんたちが陳情を行い、中学校完全給食の実現に向けて活動しています。それなりに人口がたくさんいるのに、学校給食がないというのは「今まで何してきたんだよ!」とツッコまずにはいられませんが、今回の選挙では現職の古谷義幸さんも、新人の高橋昌和さんも「中学校完全給食」を公約に掲げているため、どちらが当選しても約束を守ってくれれば「中学校完全給食は実現する」ということになります。ただ、現職の古谷義幸さんにはこれまで何度も陳情したのに実行してくれなかったという負の実績があるため、当選したら本当に学校給食を実現してくれるのかという点には疑問が残ります。それなら新人の高橋昌和さんに期待した方がよっぽど実現してくれるのではないかというムードになったことは間違いありません。
なお、神奈川県では平塚市や伊勢原市などで学校給食がなく、大磯町では異物混入が頻繁に起こり、給食がめちゃくちゃマズいと話題になりました。業者によるデリバリー式の学校給食を選択し、低価格を優先して選んでしまったばっかりに、子供たちのほとんどが給食を残すという現象が起きたのです。「飽食の時代に給食を残すなんて贅沢だ!」という正論を言いたがりのネトウヨが大量発生したものの、その中身がマジで食えたものではないことがわかった時には業者が批判されるようになりました。ただ、ほとんど利益が出ないような低価格で給食を提供することを約束してしまったため、コストをかけた給食を出せなくなってしまったというのも事実なので、政治の責任もゼロではなかったのです。
さて、学校給食に限らず、「子育て世代にどんな政策をできるのか」というのが最近のトレンドです。それぞれの候補は子育て世代にどんな約束をしているのか。まず古谷義幸さんは、小児医療費の助成を中学3年生まで拡大し、待機児童ゼロを実現し、安心して妊娠・出産できる環境作りを掲げています。ただし、秦野赤十字病院については触れていません。
一方、高橋昌和さんは、秦野赤十字病院における分娩業務の早期再開、秦野赤十字病院で小児医療やがん治療などの専門医療を充実・強化する。妊娠から出産・育児までを支援する「子育て世代包括支援窓口」の創設、小児医療費の助成を拡大し、中学3年生までの医療費無料化を推進していくとしています。
このように候補者を見比べてみると、学校給食のみならず、中学3年生までの医療費無料化を実現するという政策も一致していますので、あとは「約束を守ってくれるかどうか」という部分になってくると思います。これまで住民の願いを聞いてこなかった実績のある古谷義幸さんが、ほとんど同じ公約を掲げる新人と並んだ時に輝いて見えるかと聞かれたら、どうにも新人の方が輝いて見えることになるのではないでしょうか。
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