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【選挙ウォッチャー】 コロナ陰謀論を看板に掲げるヤバい政党が勢力を拡大している件。

 実は今、新型コロナウイルスにまつわる「デマ」「陰謀論」を看板にして支持者を獲得するヤバい政党が勢力を拡大しつつある。
 東京や大阪といった都市圏では6月20日まで「緊急事態宣言」が延長され、まだまだ自粛が続けられることになってしまったが、いまだ休業補償が支払われないケースが相次ぎ、反発する店が出始めているほか、静かに倒産する店も出ている。人々は新型コロナウイルスによって日本経済が確実に悪化している様を肌で体感している状態にある。
 しかし、こうした状況が続くと、「経済を元に戻すべきだ」という意見が力を持つようになり、PCR検査の拡充やワクチン接種などで感染を抑えて経済を戻そうとする人たちと、「コロナはただの風邪」とか「若い人たちは自粛をしなくてもいい」という話で、今まで通りの生活を求める人たちが現れる。

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 前者のように、「感染を抑えて経済を元に戻すべきだ」と論じる場合、経済を元通りにするためには、まずは感染を抑えなければならない。もし東京五輪を強行開催するようなことになれば、感染が爆発し、病床が埋まり、死者が激増するかもしれないので、経済を優先するとは言いながら、「東京五輪は中止すべきだ」という結論に至る。
 しかし、後者のように「コロナはただの風邪」と解釈した場合、一定の割合で亡くなる方々や長期間の後遺症に苦しむ人たちのことは無視をして、東京五輪は予定通りに開幕でき、居酒屋で飲むことも、密になってパーティーをすることもできることになるため、ありとあらゆる面倒臭い問題から解放される。だから、この話をとても魅力的に感じる人たちがいるのだ。


■ 「国民主権党」は武器をどんどん手に入れている

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 先日も、渋谷のハチ公前では「コロナはただの風邪」を謳う国民主権党が陣取り、相変わらず「クラスターフェス」を開催していた。通行人のほとんどは相手にしていないが、それでも一定の割合で感化されてしまう人はいるので、実は、着実にコアな支持者を広げ、高い集金力を持つようになっている。
 今年3月に行われた千葉県知事選では、党首の平塚正幸氏が立候補することになり、600万円以上のお金が集まった。4月には党員である前橋由李氏が茂原市議選に立候補したが、マイナーな党員が立候補することになっても選挙資金は十分に集まる状態にある。さらに、自前の選挙カーを手に入れることにも成功し、今はその選挙カーを使って、東京都が走らせている外出自粛を呼びかけるアドトラックを追い回し、「自粛する必要なんかない」と喚き散らしている。

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 現在、国民主権党は着実に支持者を増やし、今までよりボランティアの数が多くなっていて、彼らはもちろん、マスクをしていない。最近は平塚正幸氏がかつて所属していた「NHKから国民を守る党」に倣い、「コールセンター」なるものを立ち上げ、全国の小学校に電話をかけては、「子供たちのマスクを外してください」と呼び掛ける活動まで始めている。最近は「有志の集まり」とは言えないぐらいに組織だって活動するようになっている。

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 昨年の東京都知事選に立候補したメンバーで言えば、電波や電磁波を使ったテクノロジー犯罪や集団ストーカー事件が起こっていると訴える「電波将軍」こと押越清悦氏が八王子市、マック赤坂の弟子で「スマイル党」の込山洋氏が世田谷区、元祖おふざけ政見放送の後藤輝樹氏が葛飾区で立候補することを表明している。さらに、千葉県知事選に立候補した顔面白塗りピエロ男の河合悠祐氏も葛飾区から立候補することを表明している。
 今のところ、平塚正幸氏や党員たちに目立った動きはなく、東京都議選に挑戦するかどうかはわかっていないが、彼らにとって選挙は「注目されるチャンス」であるため、杉並区から候補者を擁立するのではないかと見られている。


■ 第2の国民主権党となる「つばさの党」

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 実は今、「国民主権党」に続き、「コロナ自粛は見直すべきだ」と訴える新たな団体が生まれている。それが6月5日に立花孝志氏率いる「古い政党から国民を守る党(旧・NHKから国民を守る党)」の諸派党構想に参加することを正式に表明した「つばさの党(旧・オリーブの木)」である。
 「つばさの党」からは、ナスの被り物をした「ナンパ師」を職業にしている中星一番氏が葛飾区から立候補する計画を立てており、既に亀有駅を中心に政治活動を始めているが、黒川敦彦氏と中星一番氏は、「武漢ウイルス研究所の研究員とつながり、独自に得た情報を共有する」と言い出し、従来の副反応とは異なる深刻な現象が起こるという独特の主張を展開。人々にワクチンを打たないように呼び掛けている。
 現在、日本政府が1日100万回の接種を目標としていた「mRNAワクチン」は、これまでになかった新しい技術のため、理論上は特に大きな影響はないだろうと考えられているものの、実際にやったことがないので、中長期的にどのような影響が出るのかは不明である。また、割合としては少ないものの、副反応がないわけではなく、実際にワクチンを打った人が発熱や倦怠感を訴えるケールもある。それでも高い予防効果と重症化を防ぐ効果が期待されることから、持病を持つ人やエッセンシャルワーカーを中心に「打ちたい」と考える人は多い。
 もっとも、ワクチンのリスクとベネフィットは、その人の置かれた環境などによっても大きく異なる。例えば、医療や介護の分野で働いている人は感染リスクが高く、患者さんたちに感染させないようにプライベートでの行動も大きく制限されていることから、多少の副反応があってもワクチンを打った方が安心感が全然違うかもしれない。一方、家の外に出ることがほとんどなく、ポツンと一軒家で自給自足の生活をしているタイプの人は、そこまで一生懸命ワクチンを打たなくてもいいかもしれない。つまり、ワクチンを打つか打たないかは、それぞれが環境などを総合的に考えた上で判断されるべきものであるが、その判断の材料となるデータや情報は正しいものでなければならない。
 一体、どのような副反応がどれくらいの割合で起こるのかという科学的なデータがきちんと公開され、そのデータをもとに打つか打たないかを判断するべきだと主張するなら真っ当なことだが、「武漢ウイルス研究所の研究員と直接やり取りをして、こっそり入手したヤバい情報を、支持者だけに特別に教えます」という怪しい情報をもとに考えると、判断を誤ってしまう恐れがある。

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 それでも、6月5日に新宿西口で行われた「つばさの党」「古い政党から国民を守る党」の共同街宣には、主催者発表で300人(筆者の目視では100人前後)が集まり、そのうちの2割ぐらいはマスクをせずに参加をしていた。
 質問のために登壇した若い男性は、黒川敦彦氏に「マスクを外すように呼び掛けてほしい」と訴え、「古い政党から国民を守る党」の副党首・大橋昌信氏は「営業時間を短くしろとか、テレワークをしろと言われても、わけがわからない」と壇上から訴え、拍手を浴びていた。世の中にいる「コロナ自粛反対派」の声を、票やお金に換えようという政治団体が精力的に活動を続けているのである。


■ なぜコロナ陰謀論に警戒が必要なのか

 今度の東京都議選で、「国民主権党」「つばさの党」、あるいは「古い政党から国民を守る党」が議席を獲得できるかと聞かれたら、その可能性は限りなく低い。ほとんど心配しなくていいレベルなので、それなら放置してもいいのではないかと思うかもしれないが、注意が必要なのは、選挙を利用して陰謀論を振りまくと、賛同する人たちが「選挙資金」という名目でお金を出すようになり、新たなビジネスが生まれ、今まで以上に組織だった活動をするようになってしまうことにある。
 既に始まっている「国民主権党」のコールセンターは、全国の小学校に片っ端から電話をかけては「マスクを外しましょう」と呼び掛けている。小学校も無駄な電話対応をしなければならない上、SNSでは反社会的な呼びかけも始まっている。

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 例えば、ファイザー社の「mRNAワクチン」は、ディープブリーザーと呼ばれる超低温冷凍庫で保管されることになっているが、冷凍庫のコンセントを抜こうと呼びかけ、「#プラグを抜こう」というハッシュタグまで出来上がっている。
 この呼びかけの悪質なところは、「プラグを抜くことが人々の命を守ることにつながる正義だ」と主張していることにある。頭のネジの緩い人がそのまま信じ、正義感にかられ、実行に移すようなことが起こり得る。今はまだ実行に移すような人間はいなくても、選挙を使った広報活動により、支持者が増えてしまうと、本当にプラグを抜くような人間が出てきてもおかしくない。つまり、こうした政治団体を厳しく冷ややかな目で監視することが必要なのだ。


■ 極端な主張は議席を取るための戦略である

 世の中のほとんどの人は「コロナはただの風邪」だと思っていないし、ワクチンについても「5Gの電波によって人間の行動がコントロールされてしまう」と恐れていたりはしない。なので、こんな主張をしたところで、多くの有権者は無視してしまう。
 しかし、こういう話を信じてくれる人が全国に2%でもいれば、議席を獲得でき、国政政党になれば億単位の政党交付金が入るようになる。そのお金を「貸付金」という形で個人に回し、「あとで返済する」と言えば、ナンボでも自由に使うことができる。定数40を超える都市部の市議会議員になれば、年収1000万円超えも夢ではない。
 普通のことを言っても、わざわざ1票入れてくれるほど熱烈に支持してくれる人が増えるわけではないので、あえて過激な発言を繰り返し、時に炎上を巻き起こすことで、たくさんの人に嫌われながら、それでも熱烈に応援してくれる人を作り出す。これが立花孝志氏が編み出した手法であり、それをお手本としている「国民主権党」「つばさの党」がやり方だ。勝てる見込みもないのに知事選に立候補したり、今度の東京都議選に目立つ格好で立候補したりするのは、その先にある区議選や参院選で、ひとまず「2%」を取るための「仕込み」なのである。
 しかし、この戦略には大きな「落とし穴」がある。それは、こうした極端な主張に飛びつく人たちというのは、ことごとく「情弱」であり、世知辛い現代社会に馴染めない人たちである。けっして社会的に活躍している人たちではないので、支持者の中から候補者を擁立しようとすると、ただの「珍獣博覧会」になってしまうのである。
 6月5日、新宿西口で行われた「つばさの党」「古い政党から国民を守る党」の共同街宣で壇上に上がった人たちを見ると、売れないビジュアル系バンドの落ち武者ヘアの男、コカイン常習者だったと自称する全身タトゥーの男、ナスの着ぐるみをかぶった元AV男優のナンパ師の男など。こうしたメンバーを見て、N国信者たちは「スーパーヒーローが大集結するアベンジャーズのようだ」と大絶賛するのである。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

 とうとう最も恐れていたことが起こってしまった。これまで「コロナはただの風邪」と主張してきた立花孝志氏が、新型コロナウイルスに感染していたことがわかったのだ。10日前から咳や発熱などの症状があったにもかかわらず、記者会見をしたり、イベントに出たり、通常と変わらない生活をしていた。しかも、イベントではノーマスクで、消毒もせずにマイクを使い回していたのである。
 実際にはかなり多くの人が濃厚接触者となっている可能性があるが、立花孝志氏のコロナ感染を報じたスポーツ紙は、党の見解をそのまま報じ、「濃厚接触者はいない」と書いてしまっている。しかし、6月5日のイベントを見る限り、立花孝志氏がノーマスクであった以上、濃厚接触者がいなかったとするのは無理がある。自覚症状がありながらイベントに出演していた立花孝志氏にも問題があるし、濃厚接触が疑われる黒川敦彦氏には「今すぐPCR検査をするべきだ」という声が寄せられたが、黒川敦彦氏は「PCR検査陽性と感染は違う」などと言い出し、「マスクの裏にワサビを塗れば殺菌できる」などと真顔で説明し始めている。お望み通り、ワサビチューブを鼻にぶち込んでやろうかという気持ちになるが、こうした甘い考えの人間が政治を食い物にして、同じくらい頭の弱い人たちを仲間に引き込んでいる。彼らはこれからも感染を広げる迷惑行為を繰り返していくとみられ、まだまだ監視が必要である。

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