落書きをする。

自宅保育中の息子が退屈そうだったので、手の甲にゾウとネコの絵を描いてあげた。

すると、息子はわたしの右手の甲を指さし「ぞうさん」と告げる。仕方なくゾウの絵を描くと、今度は左手の甲に「にゃんにゃん」と指示を出す。

わたしが終わると妻も呼ばれ、ゾウとネコの絵をふたたび描かされた。最後は三人の両手を前に出して合わせるように急かされる。まるで円陣でも組むように。

いったい、なんの儀式なのだろうか。家族でいっしょに力を合わせてこの危機を乗りこえよう。まさか2歳児がそんなことを考えるわけはないと思うけれど、なんだかすこし前向きな気持ちになった。ありがとう。

そんなお礼を心のなかで伝えつつ、自宅の仕事部屋へ。ここ数週間かけて練りあげた重要なプレゼンのために遠隔で身振り手振り熱弁していると、なにやら画面の向こうにいるクライアントの目線が行ったり来たり落ちつかない。なんと視線の先には「ぞうさん」と「にゃんにゃん」が舞っているじゃないか。

慌てふためく意識のなかにさきほど三人で組んだ謎の円陣が心強く浮かぶ。大丈夫。この危機も乗りこえられる。きっと。いや、絶対に。

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