息子に避けられる。

うすうす気づいていたけれど、どうやら息子に避けられているようだ。

なぜか新型コロナウイルスの影響で自宅保育をはじめたときから徐々に究極のママっ子へと不本意な進化を遂げてしまったらしい。「パパ、あっち!」と仕事部屋へいることを厳しく命じられ、一歩でも外へ出ようとすれば「パパ、ないない!」と激しく存在を否定される始末である。

まさかの家庭内別居状態を回避すべく、リビングにて妻と二人きりで楽しそうにいちゃついている息子へ「パパもいっしょ!」と遠くから叫ぶ。こんなときだからこそ、家族で一致団結しようじゃないか。

すると、息子はすぐに「パパ、いっしょじゃない!」と鬼気迫る表情で駆けよってくる。「パパ、えんえん!」と中年の矜持をかなぐり捨てて泣くふりをしてみると、息子は手に持っていた鼻くそをわたしに渡して走り去った。

結局、お昼寝のときも寝室へ入ることすら許されず、息子は妻と二人きりで眠りについてしまう。

わたしは今がチャンスと軟禁されていた仕事部屋をそっと抜けだして寝室へ。すやすやと寝息を立てる息子のとなりに忍びこむと、息子は妻と勘違いしたのかわたしにすりよってくる。ようし。既成事実さえつくってしまえばこっちのものである。あとは息子が起きるのを待つだけだ。

そんなことを考えているうちにわたしも眠ってしまったらしい。目がさめるととなりには呆然とこちらを見下ろす息子の姿が。ここぞとばかりに「どう責任とってくれるのよ」としわがれた寝ぼけ眼を向けると、息子は「仕方ないな」と諦めたようにゴロリと横になる。そして、しばらく二人きりでだっこさせてくれる。

ハニートラップ、大成功である。

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